異世界に転生したと思ったら勇者じゃなくて魔王で魔王軍育成計画始まりました。

織田っち

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救いの手

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ロルフに乗せられてやってきたゴブリンの集落は思ったよりもこじんまりとしていた。

「ここに50ものゴブリンが生活していると言うのか?」

「はっ。どうやら何かから身を潜めるように生活しているようでして。」

「何かこいつらの外敵となる存在がいると言うことか。」

リュウガはロルフから降りてゴブリンの集落へと足を踏み入れた。

「おい、そこのゴブリンよ。」

リュウガがそう声をかけたゴブリンは小さく、ガリガリの体をしており、リュウガのほうを視認すると集落にある小さな家へと逃げてしまった。

「ちっ、これでは話もできないじゃないか。」

リュウガがそう言いながら集落の中へと進んで行くとさっきのゴブリンが入った家から複数のゴブリンが槍を持って現れた。

「あのものら、明らかな敵対行動ですね。魔王様、いかがいたしましょうか。消しますか?」

ロルフがガルゥゥツと唸り声をあげながら今にでもゴブリンに襲いかかろうとしているのをリュウガはロルフの鼻に手を当てて抑えた。

「まだ攻撃されたわけじゃないから抑えろ。」

リュウガはゆっくりとゴブリンの元に寄り、

「この集落の長は誰だ。」

リュウガがそう声をかけると槍を持っているゴブリンに囲まれていた杖をついたゴブリンが前に出てきた。

「私はこの集落の相談役をしております。ゴブリンシャーマンでございます。強きお方。我らは抵抗などは致しませぬ。どうか命だけはお助け願えませんでしょうか。」

「ゴブリンシャーマンよ、それはここのゴブリンの総意か?」

「左様にございます。」

「そうか。私に従うのあればこの集落のものに繁栄を約束しよう。」

「ありがとうございます。強きお方。」

「このお方は魔王リュウガ様だ。ゴブリンどもよその名を心に刻め。」

ロルフがそう言うとゴブリン達は皆平伏した。

「ロルフ、ちょっと大人しくしててくれ。話が進まないから。」

リュウガがロルフの体をさすりながらそう言うとロルフは伏せの状態で待機した。

「おおっ、あのフェンリルをも飼い慣らしておられるとは。さすがは魔王様。どうぞ我らゴブリンに繁栄を。」

「あぁ、約束しよう。それでお前が相談役であるならば長はどこにいる。」

「長は今大きな怪我を負いあの中におります。」

ゴブリンシャーマンはそう言うと先ほど出てきた家を指差した。

「こちらにございます。」

リュウガが家の中にいると横になり今にも死に絶えそうなゴブリンがいた。

「この者がこの集落の長にございます。」

「今にも死にそうだな。この胸の傷はどうした。」

「近頃この集落にトロールが迷い込んできまして、そのトロールを追い返す時に受けた傷にございます。」

「そうか。」

リュウガがそのゴブリンに触れ、

「長よ、この集落は俺の支配下となった。異存はあるか?」

「ごっ・・・・ございま・・・・・せん・・・・。ど・・・う・・・か。おた・・・・すけ・・・・を・。」

「わかった。もうしゃべるな。」

リュウガはそう言うと自分の血をまた一滴ゴブリンの口に垂らした。

すると、みるみるうちに死にそうだったガブリンの怪我が治り、体の大きさが数倍の大きさとなったのである。

「うっ・・・・。」

「「「「長っ!!」」」」

その様子を近くで見ていたゴブリン達が長に駆け寄った。

「おっ、お前たち。」

「おぉ。奇跡じゃ。わしは今奇跡を目の当たりにしておる。」

ゴブリンシャーマンがあまりの出来事に涙を流していた。

「ゴブリンの長よ。お前に私の血を与えた。これでもう死ぬことはなくなったはずだ。」

リュウガがそう言うと長は起き上がり平伏した。

「お強きお方。なんとお礼を申し上げたら良いことか。」

「俺の支配下にある者には繁栄を約束した。お前が異論を唱えずに受け入れ、俺の支配下となったから救っただけのことだ。」

「もったいない。」

「長よ、元気になったところで早速仕事をしてもらいたい。」

「なんなりとお申し付けください。」

「この集落以外にもいくつかのゴブリンの集落があると配下の者から聞いている。その集落の長どもをここへ集めよ。」

「はっ。すぐに。」

リュウガが長に指示を出してから数時間後、各集落の代表たちが一堂に会した。

「俺がこの集落を支配下に治めた者だ。各集落の長に問う。俺の支配下に入り繁栄を手に入れるか。それとも争いか。選ぶが良い。」

リュウガがそう言うと一人の長が発言を求めた。

「お尋ねしたきことがございます。」

「なんだ。」

「我らの集落はほかの集落よりも貧しく、強きお方にお出し出来るような供物がございません。」
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