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第3章 メビウス王国&コルステ王国

15話 姉妹

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 「久しぶりね。シェリー」

 「っ!!」







...え?お姉ちゃん!?ってことはつまりあんたら、姉妹だったのか!?



「お姉ちゃん!今までどこ行ってたのよ!私凄く心配したんだからね!?」

「ごめんね。シェリー」



泣く受け付けお姉さんこと、シェリーを撫でるクレアお姉ちゃん...。



「ってお姉ちゃん、死んじゃったの!?なんで!?」



そう言えば...聞いてなかったな。
なんであそこで死んでたんだ?



「実は、私ね...」















「痩せたいが為に、あそこで修行してたら...その、飢餓状態で死んでしまって...」



...。



「...お姉ちゃん、馬鹿なの?」

「ごめんなさい、返す言葉が無いわ...」



私は言う言葉が見つからないわ...。
そこまでして痩せたかったのか?
だから、今の姿はガリガリなのか...。



「もういいよ。またお姉ちゃんに会えたから、それで十分だよ」




うわぁ、姉妹の絆って奴ですか。
クレアとシェリーが抱き合おうとするが...クレアはゴーストなので、すり抜ける。



「我が主」

「何?」

「...先程はありがとうございます」

「何のこと?」

「無自覚なのですか?」



いや、マジで何のこと?
私なんかした?記憶にないぞ?



「あ!ブリザード!私がいない間、ご主人様に何もしていませんよね...?」

「えぇ。何もしていませんよ」

「...ホントですか?ご主人様」

「...多分」

「...ブリザード?」

「本当に何もしていませんよ。何かあったと言うならば、我が主が私を庇って下さったぐらいですよ」

「なんですって!?ご主人様!」

「...な、何?」

「私はこの国の店の位置や道を把握をしてきたので、何かご褒美が欲しいですっ!」



子供かっ!お前は!...はぁ、でも何かと世話になってるし、褒美って言っても何が欲しいんだこいつ?



「...何が欲しい?」

「では!...あ、頭撫でてくれませんか?」



...本当にプライドというものが無いのだろうか...。まぁ、別にいいけどと思いつつ、クレアの頭を撫でる。

クレアは私が使役する死霊ということになってるので一応触ることは出来る。逆に他の人が触ろうと思って触ってみても、触れないようになっている。でも、私と同じ死霊魔術師の職業を持っている人なら、触ることは可能。もちろん、相手がクレアを使役する所有権を奪うことも出来るって事。出来る限り、させないけど万が一そうなった場合は...覚悟しておこう。








あと...ブリザードがこちらを見つめるのだが、何故だ?



「何だ?」

「いえ、何も」



嘘つけ、顔に出てるよ。
不満と嫉妬混じりの顔がね。
宿に着いたら、こいつも撫でてやるか...。
こいつら、一応私よりも年上のくせに心は私よりも子供かっ!!



「さてと、ではこれにて冒険者登録は終了です」



ん?私はこれでいいのか?



「ザベルちゃんのは、どうすることも出来ないのですが、ランクと名前があるのでそれで大丈夫だと思います。あとは、そのランクの説明と冒険者についての説明をするだけです」



ギルドカードは自分の身分証みたいなもんだけど...大丈夫なんかな?まっいっか。



「では、ランクについてご説明しますね。この冒険者ギルドではそれぞれのランクに分けられます。ランクはそれぞれ、Z、S、A、B、C、D、Eとなります。1番下がEで、1番上がSになります。今ザベルちゃんは1番下のEに、ブリザードさんはBとなります」

「申し訳ありません。何故、我が主は1番下のEランクなのですか?」

「ブリザード、これはご主人様の為でもあるのです」

「では、どういう事なのですか?クレア」

「今のご主人様は、他の人から見たらただの子供としか見えないのです。そんな子供が突然Bランクになると、不満になる輩が多いのです。それはご主人様にとって面倒事になります。故に、ご主人様には1番下のEランクになってもらうしかないのです」



私は別にランクとか興味はないな...。
じゃあなんで冒険者登録しに来たんだって言われると、安定した収入が欲しかったんだよなぁ...今あるお金は全部クレアのだし...。



「なるほど。理解した」

「では、説明の続きに入りますね。これらのランクはそれに見合った依頼に値します。ブリザードさんの場合、今はBランクですので、ひとつ上のCランクまで受けれます。ザベルちゃんならば、Dランクまでの依頼を受けれます」



ほうほう。なるほど。
自分のランクより1つ上なら受けられるって事か。じゃあ、Zランクってなんだ?



「ですが、これらとは違うランクを特殊ランクまたは、Zランクと呼びます。このランクは、どのランクの依頼も受けられるようになります。ですからザベルちゃん。このランクになるためにひとつ依頼を受けませんか?」



へー。そのランクいいね。
でそのランクになるための依頼?
やってやろうじゃないか!



「どんなの?」

「簡単です。Sランクの依頼を受けるのです。それが出来たら、はれてZランクになれますよ!」



ん?でもそれってダメなんじゃ?



「大丈夫ですよ。私が承認しますから!お姉ちゃんを助けてくれた恩返しだと思って!」



...それは、どういたしまして。



「では、この中から1つ選んでください」



ドサッと音がした...。
依頼書が本みたいになってる...。







...あ、全く読めん。







クレアにお願いして翻訳してもらった...。
依頼の内容はモンスター討伐がほとんどだな。
ドラゴン退治に、魔女狩り、貴族からの治療求めなんてのもある。って魔女狩り?こんなのもあるのか。世の中知らないことばかりだわ。



...多すぎてどれにしようか迷う...。



ん?これなんかどうだろ。

と思って手に取ったのは、治癒関係の依頼なんだが...依頼主が領主だった。



「これは、ここの領主様からのご依頼ですね」

「...どんな人?」

「温厚な方だと聞いております。民衆が飢餓で苦しんでいた時は、食べ物を寄付したりしていたそうです」



へー良い奴なんだ。
領主...ねぇ。行ってみますか。



「コレ...受ける」

「分かりました。ではお気を付けて」



そう言われて、私達は去って行った。



「...おい」

「あ、ガルフォードさん。すみません、忘れてました」

「みぃーんなして俺の事無視かよ」

「ごめんなさい。てへっ」

「全く...で、嬢ちゃんが受けた依頼はなんだ?」

「えっと確か、領主様からのご依頼ですよ。内容は...ご子息の治癒依頼...ですね」

「なんだそりゃ?あの領主の子がなんかの病気にかかってるのか?」

「恐らく、そうだと思うのが自然でしょうね」

「...どうにもきな臭いな...。その領主には、子供なんて?」

「ですが、領主様からの依頼をお断りするなんて私には出来ません!それこそ言うなら、ギルド長に言ってくださいよ」

「そりゃ勘弁だ。あのギルマスはこぇーからな」

「無事に終わるといいのですが...」
















クレアに道を把握してもらったので、すんなりと領主の家に到着。扉をノックすると執事が出迎えてくれた。



「本日はどのようなご用件でしょう?」



依頼書とシェリーから貰った承認証を出す。ブリザードのランクはB、対してこの依頼はSだからちゃんとした受け付けお姉さんの承認が必要になる。



「...ふむ。分かりました。どうぞ中へご案内します」











中に入ってみると...凄い贅沢な暮らしをしてるなと思った...。花瓶に肖像画...とにかくキラキラしてるようなものでいっぱいだ。確か、依頼内容はご子息の治癒依頼だったな。なんかの病気にかかってるのか?



「こちらでお待ちになってください。領主様をお呼びに行って参ります」



コクリと頷く。
にしても、この部屋もキラキラしてるな...。
逆に目がやられそう...。
長椅子は、おぉー。
結構いいね!ふかふかしてる!



〔ご主人様〕

〔...何?〕

〔この屋敷...何か変です〕



ヘン?...一体何が?



〔ご子息の方が気になり、少しこの屋敷の中を調べたのですが...が御座いまして...〕



...違和感?
...なんだろう、凄く嫌な予感がするんだけど...。
とりあえず、"気配察知"!



屋敷の見取り図が頭の中で出される。
屋敷の構造は三階までに分けられ、1階はエントランスホール、2階は領主の仕事部屋?かあるいは領主の自室など様々、3階は執事やメイド達の部屋という感じで分けられていると思う...。




そして、さっきの執事...!?




分からない...!
さっきまでここにいたのに、そんな遠いところまで行けるはずがない...!だとすると、気配をしてるのか...?
っマズイ!ハメられた!!



咄嗟に、ホーリーとダークに"結界"をはる。



〔...我が主?如何なさいましたか?〕

〔......ハメられた〕

〔...ッ!〕











ピコン




"気配察知"の反応!
この屋敷を囲うように、複数の人間...多分盗賊か。どうするもこうするもないな...コレは。盗賊の討伐が優先だ、もしこの屋敷にあの執事がいるなら捕らえる。多分高みの見物でもしていらっしゃるでしょう...。



「どう致しますか?我が主よ」

「...盗賊を生け捕りにする」

「御意。我が主よ。では言って参りますのでこの子達をお願いしますね」



え?私は?



「貴方様はここでお待ちになってください。何、そんなに時間はかかりませんよ」

〔そうですよ。ご主人様!私たちでやってきますので、ご主人様はくつろいでいてください!〕



えー...それでいいのか私...。



「ちなみにこれを拒否する権利はありませんよ。我が主」



えぇ!?私に拒否権ないの!?



「...分かった」

「はい。では行って参ります」

〔ご主人様!大人しくしていてくださいね!〕



...本当にこれでいいのか!?
ダメなんじゃないのか!?
扉を開けて出ていくブリザードと壁をすり抜けて行くクレア。多分あいつらなら大丈夫だとは思うけど...それでも心配になる。間違って殺したりしないよな?



「「クルルっ?」」



おや?ホーリーとダークが出てきた。
そろそろ晩御飯が欲しくなってきてるのかな?宿に着いたらたくさん食べような。そう思って撫でる。



「...私が守ってやる。絶対だ」



母性本能ってやつですかね...。
こうも私より小さい奴がいると守りたくなる...。ブリザード?あいつはデカいし、可愛くない。どちらかと言うと美しいの方だな!クソゥ!あの身長クソ羨ましいわっ!!



「それ、私にも言ってくださいませんか?」



...?













...?(2度目)
へ?え?ちょ、ちょと待って。
ブリザードお前、で戻ってきた?
扉から出てきたのは、ブリザードと...執事さん!?あんたいたのね。あれ?じゃあ、盗賊はどないしたん?



「盗賊は全て生け捕りに成功しましたよ。我が主。ついでに扉付近に先程の執事がいたので気絶させ捕らえておきました。騒がれても困るので」



...仕事が早いこと...。
てか、さっきの会話聞いてたのかよ...。



「お前は強いだろ...」

「主よりは弱いですよ」

「知らん」



またクスクスと笑う。
何か解せぬ...。



「ご主人様。盗賊の生け捕りは全て完了したので行きましょう」

「...子息は?」

「それが、この屋敷にはいませんでした」

「そ」



それなら、ギルドに報告して早く済まそう。
...寝たいから。
























ギルド到着してすぐに報告をすると、調査員が領主の屋敷に入り、家宅捜査をしたところ花瓶や肖像画らは、全て偽物で作られており、地下には奴隷として売る予定のSランク冒険者クレリックの使い手が多くいたそうだ。そしてあの執事さんの正体は、盗賊のボスだった。盗賊っていっても、元は騎士に勤めていたらしい。だからか、気配察知をしても引っかからなかったのは騎士として勤めていた頃の経験があったからか...。



「ザベルちゃん!大丈夫でしたか!?」

「問題ない」

「そうでしたか...良かったです」

「嬢ちゃん!でかしたな!ハッハッハ!」



...ガルフォード。お前まだいたのかよ。



「もう!ガルフォードさん!これは笑い事じゃないんですよ!?領主様の屋敷に盗賊のボスがいたということはその領主様が危険な状態だったという事なんですよ!」

「確かに、となるとだな。その領主は今どうしてるんだ?」

「その領主様のことですが、行方が分からないのです...。もし、領主様が盗賊を雇ったのと言うならば、それは決定的な法則違反です!ですが、盗賊による脅しやなんかで仕方なくやらされていた場合は何もありません」

「何もねぇのか?」

「えぇ。何もありません。それは自己責任ですからね」



冒険者ギルドと同じだな。依頼に失敗しても自己責任ってところが...。



「それでも、ザベルちゃんとブリザードさんは今回の一件でZランクには昇格できますよ!」

「...なんで?」

「依頼内容はご子息の治癒でしたが、元々ご子息なんていなかったのです。ですが、地下からSランク冒険者の人達を救出した功績と盗賊の生け捕り成功の功績を称えて、昇格することをギルド長が認めましたから!」

「はぁ!?あのギルマスがか!?」

「じゃあ、聞きに行ってみるといいですよ?ガルフォードさん。それにザベルちゃんの年でこれ程の事が成し得るのにずっとEランクのままでは詐欺になっちゃいますよ!」



そうっすよねぇ。詐欺ですよねぇ。
内見も詐欺なんですよぉ。...スンマセンっ!



「俺は行きたくねぇよ。あのギルマスこぇーしな」

「では納得してください。それではこれより昇格をするのでギルドカードを渡してください」

「ん」

「どうぞ」




ギルドカードを渡し、待つこと5分後...




「出来ましたよ!ザベルちゃん、ブリザードさん。ご確認をお願いしますね」




ほう。どれどれ...






____________________


 ザベル €%°#* Zランク

職業:龍使いドラゴンテイマー格闘家ファイター大魔道士ハイメイジ大魔法使いハイウィザード高位神官ハイプリースト大魔術師ハイコンジュラー死霊魔術師ネクロマンサー、守護者、大賢者


体力:%#*#/%#*#
魔力:&*#%/&*#%

____________________













...職業増えたな...守護者?
あ、あの時か!
ホーリーとダークに"結界"をはった時!


それもプラスされるのね...。


それにしても、この種族の部分はどうしたものか...。



「あとそれから、冒険者の説明をしていなかったのだけど、しなくても大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。シェリー。いざとなったら私が教えるから」

「そうですね。お姉ちゃんがついてるなら大丈夫かな。あとこれは、盗賊の生け捕りと冒険者の救出の報酬です!」




ドサッと!音がした...。
一体いくらあるんでしょう...。




「合計金貨30枚と銀貨50枚です!」




ブフォッ!!...多すぎでしょ!!



「やるじゃねぇか!嬢ちゃん!羨ましいぜ!」

「ダメですよ?ガルフォードさん。これはザベルちゃんのですからね?」

「なぁ!一杯おごってくれよ!」

「話聞いてましたか!?ガルフォードさん!」



全く聞いてないね...。仕方ない。



「ん?...くれるのか?嬢ちゃん」

「酒でも買え...じゃあな」



金貨1枚やってやった。
サッサとトンズラしましょう。
ガルフォードといると暑苦しくてヤダ。

でも、ああいう奴は...嫌いじゃないな。



「おう!またな!嬢ちゃん!」

「お姉ちゃん!またね!」

「えぇ。またねシェリー」












宿はテイムした奴が入っても大丈夫な宿をクレアが選んでくれた。最初に店の位置とか把握してもらって良かった。今じゃもう夕暮れだし。



「いらっしゃい!何名様だい?」

「私とこの子、それから幽霊が1人と小竜2匹です」

「食事も付けるかい?」

「えぇ。お願いします」

「なら合計銀貨7枚だよ。この1階が食堂だよ。2階はあんた達の部屋さ。それから1人部屋がいいかい?それとも__」

「1人部屋で結構です」



...!?おいコラ!ブリザード!
ちゃんと2人部屋にしろ!



「そうかい?ならそうするよ。あんた達まだ食ってないんだろ?食堂に来な。時間じゃ閉まってるがサービスだよ」



おー!それは有難いです。
ホーリーとダーク未だ食ってないしね。
あとブリザードも。私?私はお腹空かないのであんま変に思わなかったな...。


食堂で飯を食い終わった後、部屋に向かったのはいいんだが...ベッドが1つしかない。どうしてくれるんだ?ブリザードよ。



「では一緒に寝ましょうか。」



何今サラッと言ってんだ!?お前!



「ブリザード...?貴方何言ってるのかお分かりですか?そしてそれを許すとでも思っているのですか?」

「それを決めるのは我が主でしょう?」

「そうでしたわね。ではご主人様!」

「......分かった。一緒に寝る」



もう疲れたから、早く寝たい...。






























でも...誰かと一緒に寝るのは久しぶりだな__。
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