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本拠地突入編・1
パン屋(?)、現る
しおりを挟む100-①
「ひぎゃあああああああああーーーーーーーーーっ!?」
武光は恐怖の叫びを上げていた。
……話は数十分前に遡る。
天驚魔刃団が双竜塞を出たのと同じ頃、天照武刃団は《ホン・ソウザン》の街に到着していた。
暗黒教団を抜けた『元・聖道化師』月之前京三からの情報により、遂に暗黒教団の本拠地が判明したのである。
ホン・ソウザンはアナザワルド王国中央にそびえ立つ超巨大火山、《タンセード・マンナ火山》の南の麓に築かれた都市であり、アナザワルド王国の現国王ジョージ=アナザワルド3世の叔父にあたるヴアン=アナザワルド大公の治める都市でもある。
京三からの情報によれば、このヴアン大公こそがこの国を大混乱に陥れた暗黒教団の首魁である、《教皇》なのだという事なのだが、もしそうだとしても国王の伯父である……時代劇のように直接城に乗り込んで成敗するというわけにもいかない。
兎にも角にも……まずは、ヴアン大公が暗黒教団の首魁であるという動かぬ証拠を掴まねばならない。
一応、自分達が『ミト=アナザワルドから任命された暗黒教団特別調査隊である』という身分証もあって、それを提示すればどこの街でも入れるという事にはなっているのだが……ホン・ソウザンが敵の本拠地である可能性を考えれば、下手に身分を明かすと危険である。
天照武刃団はネヴェスの里の時のように自分達の身分を隠し、旅芸人の一座、《天笑歌劇団》を名乗ってホン・ソウザンに潜り込んだ。
その後、武光達はネヴェスの里の時と同様に、旅芸人の一座として芝居などの公演をしながら、情報を収集していたのだが、ホン=ソウザン潜入から1ヵ月半が経とうとしていたある日の公演の最中、突如として武光の挙動がおかしくなり始めた。
フリード達がアドリブで誤魔化して笑いに変えて、何とか成功のうちに公演は終了したものの、公演が終わるまで武光はずっと様子がおかしいままだった。
公演を終えた武光達は舞台袖代わりに張った幕の裏側に引っ込んだ。
頭を抱えて座り込み、小刻みに震えている武光に、イットー・リョーダンとフリード、クレナが心配そうに話しかけた。
〔大丈夫か武光!?〕
「アニキ、一体どうしちゃったんだよ!? 途中から台詞噛みまくってたし、動きもド忘れしちゃうし……」
「隊長、もしかしてどこか身体の具合でも悪いんですか?」
「──ゅうや」
今にも消え入りそうな声で武光が呟いた。
「え?」
「撤収やーーーーー!! い、今すぐ撤収やーーーーー!!」
「隊長殿!?」
「た、武光隊長……い、一体どうしたって言うんです!?」
「武光様、しっかりして下さい!!」
ナジミが、しきりに『奴が……奴が来る……』と怯える武光の肩を優しく抱いたその時だった。
「すまない……」
舞台袖代わりの幕を捲り上げて、一人の人物が入って来た。
「あっ、ごめんなさいお客さん、今はちょっと──」
フリードは舞台袖に入って来た人物に対応したのだが──
「ひぎゃあああああああああーーーーーーーーーっ!?」
入って来た人物を見るなり、武光は叫びを上げた。
「ヒィィッ!? で、出たあああああっ!?」
「アニキ!? ア、アンタ一体……?」
「フフフ……私か? 私はただの……パン屋だッッッ!!」
パン屋(?)が 現れた!!
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