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第二回・殴り込み編
魔王剣、挑発する
しおりを挟む152-①
差し出された魔王シンの剣……《ネキリ・ナ・デギリ》に指先が触れた瞬間、影光の全身を凄まじい悪寒が走り抜けた。
「これが……古の魔王の剣……!!」
影魔獣の心臓部である核を握り締められたような感覚に影光は思わず身震いした。
そして、そんな影光に対し、マナが声をかけた。
「影光さん、貴方にお伝えしておくべき事があります。私は、今の私に出来る最大限の感謝と親愛のしるしとして、父が愛用していた剣を貴方に贈らせて頂きます。ですが……その剣を決して鞘から抜いてはなりません」
マナの意味深な言葉に影光は首を傾げた。
「はぁ……!? 鞘から抜くなって……一体どういう事だ?」
〔それは……我自ら教えてやろう〕
「うおっ!? 喋ったっ!?」
影光の疑問に対し、ネキリ・ナ・デギリが声を発した。威厳を感じさせる重厚な男性の声だ。
〔我には、《審判の呪い》が施されている……〕
「審判の……呪い?」
〔ククク……左様、その名の通り……我を手にした者が、我を振るうに相応しいかどうかを選別する為の呪いぞ〕
「それは一体……?」
〔我を鞘から抜こうとした瞬間、我に封じ込められた強大な力が、我を持つ者に流れ込む。その力に耐え、我を鞘から抜く事が出来れば、その者は強大な力を手に入れる事が出来る。だが、流れ込む力に耐える事が出来ぬ弱き者は……体の内側から木っ端微塵だ〕
「なっ……!?」
〔近頃魔王を名乗っていたあの凶鰐族の男……確かキョウユウとか言ったか。あの男にも、魔王を名乗るのであれば、我を鞘から抜いてみろと言ったのだが……奴め、怖気付きおって、結局審判の呪いに挑む事はしなかった。全く……つまらぬ男であった〕
そう言って、ネキリ・ナ・デギリは小さく含み笑いをした。
〔……で、貴様はどうする? よもや、貴様も審判から逃げるなどと、つまらぬ事は言うまいな?〕
「お、俺は……」
〔今まで我を鞘から抜く事が出来たのはたった一人……我が主、魔王シンだけだ。つまり、我を抜く事が出来れば……お前は魔王を名乗るに相応しい力を持っていると言う事だ!!〕
「……っ!!」
「いけません影光さん!! 挑発に乗っては!!」
「マナちゃんの言う通りやって、危ないって影光っちゃん!!」
「よせ影光、馬鹿な真似をするな!!」
「グォォゴ……ヤメロ……カゲミツ……!!」
「そうです!! そんな危険な賭けをわざわざする意味などありません!!」
「やめときなさい、魔王の剣なんて。私ならともかく、アンタみたいなバカには手に負えないわよ!!」
「危ないよ、団長!!」
「「「おやめください、影光氏!!」」」
マナに続いて、オサナや天驚魔刃団の面々、それに各種族の将兵たちも『そうだそうだ!!』『鞘から抜くな!!』と影光を止めようとした……普段の影光であれば素直に周りの忠告を聞いただろう。しかし、拗ねに拗ね、捻くれに捻くれ、不貞腐れに不貞腐れ倒している今の影光にとっては完全に逆効果だった。
「どいつもこいつもナメやがって……俺には無理だってのか……!! ふざけんなバカヤローコノヤロー!! やってやるって!!」
逆上し、完全に頭に血が上っていた影光は越○詩郎みたいな事を言い出した。
〔ククク……良いぞ、お前の力を奴らに見せつけてやるがいい!! 言っておくが、一度抜き始めてしまったら最後、我を完全に鞘から抜き放つか……貴様が死ぬまで手を離す事は出来ぬ〕
「上等だコノヤロー!! 天下を奪る男の力を……ナメんじゃねぇ!!」
影光は制止を振り切り、左手で鞘を掴み、右手で柄を握り締めた!!
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