斬られ役、異世界を征く！！

用心棒編

斬られ役と姫、画策する

　３１－①

「あのクズ共……全員叩っ斬ったる！！」
「私も行きます！！　王国の民を守るのは私達の責務せきむですから！！」
「待って下さい！！」

　立ち上がった武光とミトをナジミが止めた。

「全員叩っ斬るって……相手は心を持たない魔物ではありません、人間なんですよ！？」
「平気で子供を刺すような奴らは人間やない！！」
「では……微塵みじんも迷いは無いと？」
「おう！！」

　即答した武光に対して、ナジミは悲しそうな顔をした。

「……この街の人々を救うには仕方のない事なのかもしれません。子供を平気で傷付けるような非道に怒いかる気持ちも分かります。ですが、例えどんな悪人であっても……平気で人を斬るような武光様は武光様じゃありません。武光様のその優しさと義憤ぎふんが、修羅道しゅらどうに堕おちない事を祈ります」
「ナジミ……」

　ナジミは、ジャイナの方に向き直った。

「ジャイナさん、私はこの子の治療と看病で、ここを離れる訳にはいきません。武光様の事、よろしく頼みます。もしも武光様が修羅道に堕ちそうになった時は……武光様をぶっ飛ばしてでも止めて下さい。ジャイナさんにならそれが出来るはずです」
「分かりました……安心して下さい、こまめにぶっ飛ばします！！」
「待てや！？　こまめにぶっ飛ばすって何やねん！？」

　武光のツッコミを無視して、ミトは大きく頷うなずいた。

「……では早速さっそく連中の本拠地に斬り込みましょう！！」
「待て待て待て！！　イノシシかお前は！？　ええか、俺に考えがあるから。タスマさん、そんなに広くなくてもええんですけど、近くに人目につかない空き地みたいな場所ありません？」
「あ、ああ……それなら店の裏が７ｍ四方くらいの小さな空き地になっとるが」
「よし、じゃあちょっと借ります。ジャイナ、作戦会議や。ついて来てくれ」
「ええ」

　そう言って武光とミトは店の裏にある空き地に行き、およそ３時間後、再び店に戻って来た。二人ともぜぇぜぇと肩で息をしている。

「よ、よっしゃ……今のを忘れんなよ？」
「だ、誰に向かって言ってるのよ、それはこちらの台詞せりふです！！」

　ミトの強気な言葉に、武光はニヤリと笑みを浮かべると、タスマに向き直った。

「タスマさん、連中の根城ねじろはどこにあるんです？」
「あ、ああ……タイラーファミリーはこの街の北西の外れにある《ラウダノン伯爵邸》、幻璽党は南東の外れにある《カラマク寺院》に陣取っとるが……あんた達本当に行く気か！？」

　武光とミトは顔を見合わせた後、力強く頷うなずいた。

「まずは連中の内部に入り込んで内側から切り崩します」
「私達が悪事に加担かたんしているように見えても、それは奴らを欺あざむく為のお芝居ですから安心して下さい」

　武光とミトは、一緒にいるのを見られないよう、時間差で店を出た。タイラーファミリーと幻璽党……この街の人々を苦しめる二大勢力を壊滅させる為に。