61 / 180
術士編
術士、加わる
しおりを挟む61-①
激闘の末、リザードマンの群れと妖姫ヨミを撃退した数日後、リョエンの家で、リョエンとサリヤの指導の下、術の修行をしている武光達の元に、次なる指令が届いた。
指令の内容は『クラフ・コーナン城塞攻略軍の第二軍と合流し、奪還戦に参加せよ』だ。
「……いよいよ来たわね!! 私達の手で魔物共を成敗してやりましょう!!」
届いた指令を見て、毎度の如く意気込むミトだったが、武光は毎度の如くテンションがダダ下がりだった。
「またか……また危ない真似せなあかんのか……」
「……仕方ありませんよ武光様、それに火の神様である《ニーバング》様が祀られている《火神廟》は、クラフ・コーナン城塞の敷地内にあるんですから」
「うわー、マジかー。よりにもよって、何でそんな所にあるねん……」
「ニーバング様は戦いの神としても崇められていますから……これも元の世界に帰る為です、頑張りましょう!!」
「じゃあ早速クラフ・コーナン城塞に向かって出発するわよ!!」
「ひー、やめろー!!」
「皆さん、待って下さい」
嫌がる武光をズルズルと引きずって行こうとするミトをリョエンが止めた。
「私も……一緒に連れて行ってくれませんか?」
「先生……いや、そら一緒に来てくれたら心強いですけど、そんな急に決めてしもてええんですか?」
「急にではありませんよ、私なりに数日かけて熟慮しました」
リョエンは武光達一人一人の顔を見た。
「貴方達のお陰で、私は自分が術を学んでいた理由を思い出しました。私は……私の術が誰かの役に立って、喜んでもらうのが嬉しかったのです。キサンが生まれてから、いつの間にかその思いは妹への対抗心や嫉妬心にすり替わってしまっていましたが……」
そう言って、リョエンは照れ臭そうに頭をポリポリと掻いた。
「それを思い出させてくれた貴方達に……私の術を役立ててもらいたいのです。だから……私も一緒に連れて行ってくれませんか?」
「私からもお願いするわ、リョエンはこんな所で燻っていて良いような人間じゃないもの」
そう言って、リョエンとサリヤは武光達に頭を下げた。
「……分かりました!!」
「ありがとう、武光君」
「あ、そや。じゃあ先生、これから一緒に旅をするにあたって、割と大事な事を伝えておかなあかんのですけど……」
「何でしょう?」
「驚かんとって下さいね……ジャイナ」
武光に言われて、ジャイナは仮面を外した。
「「ゲェーーーッ!? みっ、ミト姫様ぁぁぁぁぁーーーっ!?」」
「……ごきげんよう」
ジャイナの正体を見たリョエンとサリヤは素っ頓狂な叫びを上げ、慌てて跪いた。
二人共驚きを隠せなかったが、知らぬ事とは言え、武光達を追い出そうと彼らに家事や雑用を押し付けまくっていたリョエンは顔面蒼白だった。
「しししし知らぬ事とは言え、ミト姫様に何というご無礼をーーーっ!!」
〔良いんですよ、姫様には良い社会勉強になりました〕
泣きそうな声で非礼を詫びるリョエンに対し、カヤ・ビラキは優しく応えたが、それでもリョエンの震えは収まらない。そんなリョエンにミトは優しく声をかけた。
「リョエンさん」
「は、ハイッッッ!!」
「これからも術の指導、よろしくお願い致します」
「コイツはホンマに我儘で、気の強い跳ねっ返りで、野生のイノシシみたいな奴なんですけど……まぁ俺の妹みたいなもんなんでよろしく頼んます」
「……はぁぁぁぁぁ!? 誰が気の強い跳ねっ返りですって!? と言うか、なんで私が貴方なんかの可愛い妹なのよ!?」
「いや……別に『可愛い』とは言うてへんけど……嫌か?」
〔武光さん、姫様は妹ではなくてですね、一人の女性として──〕
「ちょっ、ちょっとカヤ!? な、何を訳の分からない事を言って──」
「何やねん、騒がしい奴ちゃなぁ」
「う……うるさい!! 処刑するわよ!!」
「しょ……処刑!?」
処刑という物騒な言葉にビビるリョエンに武光が注釈を入れた。
「ああ先生、『処刑するわよ!!』ってのはこいつの口癖みたいなもんなんで、別に気にせんでもええですよ、『おのれデ◯ケイド!!』みたいなもんです」
「は、はぁ……(デ◯ケイドって一体何だろう…?)」
「ま、とにかくこれからよろしくお願いします、先生!!」
「ハイ!!」
リョエンが 仲間にくわわった!
かくして、新たな仲間、術士リョエン=ボウシンと機槍テンガイを加えた武刃団はクラフ・コーナン奪還戦に向けて動き出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる