斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
124 / 180
勇者編

黒竜翁、現る

しおりを挟む

 124-①

「ば、馬鹿な……この俺が……っ!!」

 火竜将・侵掠のリュウズは追い詰められていた。

「認めん……認めんぞぉぉぉぉぉっっっ!!」

 リュウズは後方に跳び退いてリヴァルから大きく距離を取り、超竜身化によって、竜そのものへと変化した頭部から連続して火炎弾を吐き出したが、リュウズの火炎弾をリヴァルは獅子王鋼牙で左右に斬り払いながら悠然と歩を進める。

「くそっ……!? 俺は……俺は竜人四天王最強なんだぞっ!!」

 叫んだリュウズに対し、リヴァルは獅子王鋼牙の切っ先を向けた。

「ああ、確かにお前は強い、間違いなく強い!! だが、平和を願う人々の想いが……お前達の竜身化よりも、遥かに大きく、強い力を私に与えてくれるのだ!!」
「……ほざくなぁぁぁっっっ!!」

 リュウズは青龍刀を振りかぶってリヴァルに斬りかかった。
 それは、例え敵が鋼鉄の鎧を身に纏っていようと容易たやすく両断するだけの重さと速さを兼ね備えた斬撃であったが、リヴァルはその斬撃を素早くかいくぐってリュウズの懐に飛び込むと、リュウズの袈裟斬りを右手の獅子王鋼牙で防ぎつつ、左の掌底をボディに叩き込み、零距離で光術・退魔光弾をぶっ放した。

「ぐはぁっ!?」

 大きく吹き飛ばされ、背後の壁に勢い良く叩きつけられたリュウズは、前のめりに倒れそうになったが、青龍刀を杖代りに、なんとか踏ん張った。

「はぁっ……はぁっ……竜人四天王の誇りにかけて……俺は……絶対に膝を地に着かん!!」

 リュウズは気力を振り絞って、火炎弾を吐き出そうとしたが、口から吐き出されたのは、おびただしい量の血の塊だった。しかし、その目に宿る闘志はいささかも衰えてはいない。
 その姿を見たリヴァルはゆっくりと息を吐きながら、獅子王鋼牙を正眼に構え直した。

「火竜将・侵掠のリュウズ……その闘志、敵ながら見事!! お前と剣を交えた事、我が誇りとするぞ!!」
「……決着をつけようぞ……来い……リヴァル=シューエンッッッ!!」
「行くぞっっ!! 光術……斬魔輝刃ざんまきじんっ!!」

 リヴァルの光術・斬魔輝刃によって獅子王鋼牙の刀身が、眩い光をまとった。
 リュウズは最後の力を振り絞って青龍刀を構えようとしたが、思わず動きを止めた。
 リヴァルの後方……軍議の間の扉の前に、いつの間にか一人の老人が立っていた。黒っぽい色をした中国の道士服に似た衣を身にまとい、白く長いひげと髪を蓄え、そして右側頭部に三日月型の角が生えた老竜人である。
 ニコニコと柔和な笑みを浮かべているその老竜人の顔を見て、リュウズは思わず声を上げた。

「あ、貴方様はまさか……な、何故なにゆえ……何故、貴方様が此処におられるのです!?」


 その男は、遥か昔……この地に生きる人間達を恐怖と絶望のどん底に叩き落とした古の魔王……シンと共に、古の勇者と数々の死闘を繰り広げた男。

 その男は、絶対的な力を持っていた魔王シンが、その強さを認め、対等に口をく事を許した唯一の男。

 その男は、『敵に回した者に超弩級の災厄をもたらす存在』として、竜人達……いや、全ての魔族に、三百年の時を超え語り継がれる伝説の男。


「こ、《黒竜翁こくりゅうおう》様!!」

 ゼンリュウが あらわれた!

 124-②

 黒竜翁こくりゅうおうゼンリュウ……

 リュウズも幼き頃にたった一度だけ遠目とおめに見た事があるだけで、竜人族の重鎮じゅうちん達ですら、ゼンリュウが普段どこで何をしているのか知る者はいない。
 その、生ける伝説……幻の竜人が転移の術を使い、突如として水竜塞に出現したのである。
 リュウズほどの歴戦の猛者もさが、今が闘いの最中であるという事を一瞬忘れかけた。強敵と相対している今、例えほんの一瞬だろうと、油断は即、死を招く。
 リュウズは慌てて剣を構え直そうとしたが、リヴァルの攻撃は来なかった。ゼンリュウの存在に気付いたリヴァルは、大きく跳び退き、ゼンリュウと距離を取っていた。その額には玉のような汗が浮かんでいる。
 ゼンリュウは穏やかな微笑をたたえたまま、ゆっくりとリュウズに歩み寄って行くが、まるで無防備に見えるゼンリュウに対し、リヴァルは金縛りにあったかのように動けずにいた。
 そしてとうとう、ゼンリュウはリュウズの前までやってきた。

「こ、黒竜翁様……何故、貴方様がこちらに……?」

 リュウズの問いに対し、ゼンリュウがゆっくりと口を開いた。


「……婆さんや、メシはまだかのう?」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...