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殴り込み編
斬られ役、生き返る
しおりを挟む156-①
ナジミは、絶命し動かなくなった武光を無表情でジッと見つめていた。
〔どうしてだ……どうして武光を……!!〕
イットーの言葉にナジミは何も答えない。
「さてと、あの下等な人間も始末した事ですし、行きましょう魔王様……私達の城へ」
「フフ……良かろう」
「お待ち下され、魔王様」
武光にくるりと背を向けた魔王とナジミにカンケイが声をかけた。
「あの者……本当に死んだのでしょうか?」
「何ですって?」
カンケイの言葉に対し、ナジミは露骨に不快な表情を浮かべた。
「アレを見て下さい。どう見ても死んでいるでしょう? 魔王様の花嫁であるこの私を疑うと言うのですか?」
「フン、魔王様の花嫁と言えど、つい先程までお主は奴らの仲間じゃった……そうおいそれと信用出来るものか。それに……用心に越した事はあるまい?」
「はぁ……そうですか、そこまであの男の死を確認したいと仰られるのであれば仕方ありませんね」
ナジミは溜め息を一つ吐くと、右手に先程武光の体を貫いた光の剣を出現させ、カンケイの喉元に突き付けた。
「な、何をするのじゃ!?」
「……今から貴方を地獄に送ってさしあげますので、あの男の魂が冥府にちゃんと到着しているか、存分に確かめて来て下さい」
「き、貴様……!!」
「貴様ですって……? 私は魔王様の花嫁です……口の利き方に気を付けなさい!!」
「ぐぬぬ……」
ナジミとカンケイのやり取りを見ていた魔王はフッと笑った。
「カンケイよ、お前の負けだ。城へ帰還するぞ」
「くっ……御意」
魔王、ナジミ、カンケイの三人は転移の術を発動し、カライ・ミツナから去った。
156-②
敵が捕虜収容所に現れた!!
知らせを聞いて、ミトやリョエン、エルフの戦士達は現場に駆けつけたが、到着したのは、全てが終わった後だった。
木に持たれかかって倒れている武光を見つけたミトは、大慌てで武光に駆け寄った。
「武光!! 大丈夫!? しっかり……!?」
武光の頰に手を触れた瞬間、ミトはそのまま硬直してしまった。冷たい……この異様な冷たさは何だ。ミトは武光の肩を揺さぶった。
「た……武光……ねぇ? ……ねぇってば!!」
へんじがない。 まるでしかばねのようだ。
ミトの全身を悪寒が走り抜けた。呼吸が乱れ、ドロリとした嫌な汗が噴き出す。ミトは恐る恐る武光の胸に耳を当てた。心臓の音が……聞こえない。
「う……嘘でしょ!? 起きてよ……起きなさいよ!! 起きないと……処刑するわよ……!!」
〔……ミト……カヤ……〕
「イットー・リョーダン!?」
〔イットー・リョーダン様!? 一体何があったのです!?〕
〔魔王が……現れた〕
「ま、魔王がここに!? 魔王が……魔王が武光をやったのね!?」
ミトはギリリと歯噛みした。
〔違う!! やったのは魔王じゃない……!!〕
魔穿鉄剣が落ちているのに気付いたリョエンが、魔穿鉄剣を拾い上げた。
「魔っつん!? やったのは魔王ではないとはどういう事です!?」
〔ナジミが……あいつが魔王に寝返って……ご主人様を刺したのよ!!〕
魔穿鉄剣が絞り出したその声は、怒りと憎悪に満ちたものだった。イットー・リョーダンが慌ててそれを否定する。
〔それは違うぞ魔っつん!! ナジミは悪くない、ナジミは……魔王に操られていたんだ〕
〔そんな事どうでもいい!! ミト、カヤ姉さん、先生にテンガイも力を貸して!!〕
〔何をしようと言うの……?〕
〔そんなの決まってる……鬼を殺しまくるのよ!! イットーさんはそれで直ったわ……だから!!〕
〔無理よ……人間は私達とは違います。例え鬼の角を何万本集めようと、一度失われた生命はもう……〕
「た……武光っ……うっ……うっ……うわああああああああっ!!」
〔ヤダ……そんなのヤダよぉ……ご主人様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!〕
人目も憚らず号泣するミトと魔穿鉄剣を見て、リョエンは拳を握り締め、沈痛な面持ちで俯いた。
大賢者ウィスドムは言っていた。
『救世主は邪悪なる者と闘い、退けるが……敵の凶刃の前に、命を落とす事となる』
リョエンは己の油断を悔いた。殴り込みをかけてきたヨミを倒し、捕らえた時点で、大賢者ウィスドムの『武光が命を落とす』という予言は回避出来たものと思い込んでいた。
しかし、よくよく考えれば、どうして『既に敵を退けた後に』凶刃に倒れる事が出来るというのか。
答えは簡単だ……『カライ・ミツナを襲撃する邪悪なる者』と『武光の命を奪う者』が別だという事だ。しかしながら、まさか武光の命を奪う者がナジミだったとは。
〔殺してやる……!! アイツを……ナジミを……ズタズタに斬り刻んで、ご主人様の何百倍もの苦痛を──〕
〔何度も言わせるなっっっ!!〕
再びナジミを殺すと言った魔穿鉄剣をイットー・リョーダンが一喝した。
〔だって……だって……!!〕
〔ナジミは魔王に操られていたんだ、自分の意思でやったわけじゃない……でなければ、ナジミがあんな事をするはずが……〕
「ふふふ……それは違うわね」
イットー・リョーダンの言葉を否定したのは、拘束されているヨミだった。
「あの巫女は、これっぽっちも操られてなんかいない。あの女は……自分の意思で魔王様について行ったのよ」
「…………オイ、それどういう事やーーーーー!?」
〔ゲェーッ!? た……武光---っ!?〕
武光は 生き返った!?
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