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決戦編
真聖剣、弾劾する
しおりを挟む166-①
「ゆ……勇者の剣ぃぃぃぃぃっ!?」
〔ま……マジモンだぁぁぁぁぁっ!?〕
《ショウシン・ショウメイ》……失われし古の言葉で『勇者の聖剣』を意味する言葉である。
魔王の正体を聞いた武光とイットー・リョーダンは素っ頓狂な叫びを上げた。まさか魔王の正体が古の勇者の聖剣だったとは……
「それでか……それであの時……!!」
武光はカライ・ミツナで魔王と戦った時の事を思い出していた。
あの時、武光は邪悪なる力を使うと、力を行使した者に苦痛が襲いかかる清心樹の結界を利用し、魔王を自滅させようと目論んだが、魔王がフルパワーを出そうとしても清心樹の結界の効果は全く発揮されなかった。
あれは魔王……いや、真聖剣ショウシン・ショウメイが放とうとしていたのが、魔王の『邪悪なる力』ではなく、聖剣の『聖なる力』だったからだ。
「魔王の正体が勇者の聖剣とか嘘やろ……」
「皆……惑わされてはダメよ!! この者の言葉は全て偽りに決まってるわ!!」
ショウシン・ショウメイの言葉をミトが否定した。
〔ほう?〕
「人々を魔王から救った古の勇者……初代国王アルト=アナザワルドの剣が、魔王の名を騙り、人々を苦しめたりするはずないわ!!」
〔我がアルト=アナザワルドの剣だと…………ふざけるなぁぁぁッッッ!!〕
怒りを通り越し、殺意すら込もった一喝に、ミトはビクリと身震いした。
〔我が主は、あのような卑劣極まりない屑ではない!! 我が主の名は……アルト……《アルト=シューエン》だッッッ!!〕
「アルト……シューエン……だと!? ……まさか!!」
困惑するリヴァルに魔王は告げた。
〔そう、光の勇者リヴァル=シューエンよ……お前の祖先こそが我が主にして、真の勇者だ!!〕
「そ、そんな馬鹿な……古の勇者は初代国王、アルト=アナザワルドのはずよ!!」
魔王の言葉をミトは否定したが、魔王はそれを一笑に付した。
〔かつて魔王と戦った勇者の一団には一人の男がいた。その男の名はアルト……アルト=アナザワルド……卑劣極まりない見下げ果てた下衆だ……〕
「しょ、初代国王陛下に対し何て無礼な……!!」
自らの祖先にして、敬愛する初代国王を侮辱されたミトは怒りに肩を震わせたが、ショウシン・ショウメイはそれを鼻で笑った。
〔フン、何が無礼なものか……勇者アルトと仲間達が死に物狂いで魔王の力を分散し、命懸けでその身に封じた後……貴様の祖先は何をしたと思う? 貴様の祖先は……アルト=アナザワルドは……たまたま我が主と同じ名前だったという事を利用し、魔王を倒した『勇者アルト』とは自分の事だと騙って人々を扇動し、偽りの魔王討伐の功を以って大衆の支持を得、遂には当時の国王から王位を簒奪したのだ!!〕
ショウシン・ショウメイによって語られた、あまりに衝撃的な内容にミトは思わずよろめいた。
「う、嘘よ……もし仮にそれが本当の事だったとしても、アルト=シューエンの仲間達が黙っているはずが……」
〔国王となったアルト=アナザワルドは真実を知る者を次々と闇に葬った。まぁ、流石にせっかく封じた魔王の力が解放されてしまう事を恐れて、アルトとその仲間達を殺す事は出来なかったようだが……ある者は家族を人質に取られ、ある者は廃人同然になるまで拷問されて……結局口を噤むしかなくなった。ラゴウも奴に騙され地下深くに封印されてしまったしな〕
「ラゴウ……あっ、まめ太の事か!?」
武光はクラフ・コーナン城塞の地下から出現した蒼い巨竜を思い浮かべた。
〔……クラフ・コーナン城塞、確かあれは貴様の曾祖父あたりが建てたものであろう?〕
「そうよ、魔物達の跳梁を抑える為の西方の要として……」
〔ククク……違うな、あれはおよそ百年ほど前のタンセード・マンナ火山の噴火によって、弱まってしまったラゴウの封印をより強固にする為に、ラゴウが封印されている場所の真上に築いたものだ〕
「そ、そんな……」
信じられない、信じたくない。ミトは頭の中でショウシン・ショウメイの言葉を否定しようとしたが、そんなミトの思いを容易くねじ伏せてしまうほどに、真聖剣の言葉はあまりにも真に迫り過ぎていた。
〔不覚にも、我自身もアルト=アナザワルドの奸計によって封印されてしまったが、我は封印されながらもずっと、アナザワルドの一族に復讐する事を考え続けていた。そう……気が狂いそうになる程の長きに渡って、ずっと……ずっと……そして遂にその時は来た!!〕
ガシャン……ガシャン……と音を立てながら、ショウシン・ショウメイが操る空っぽの魔王の鎧が、リヴァルの前までやってきた。
〔さぁ……我が主の血を継ぐ者……リヴァル=シューエンよ、我を手に取れ!! そしてアナザワルドという悪を滅ぼし、真の正義を示すのだッッッ!!〕
ショウシン・ショウメイは魔王の鎧を操り、リヴァルの前に自身を差し出させた。
リヴァルは差し出された真聖剣、ショウシン・ショウメイをジッと見つめた。そして、長い長い沈黙の後、リヴァルは口を開いた。
「私は…………」
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