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第2章 司のあわただしい二週間
第63話 夢の嵐
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黒いボンデージの必要な場所だけを開き、欲望が突き入れられた。慣らしもしていないのに中は愛液で濡れていて、ぐちゅんと音を立ててアルフリートの硬く大きな肉を受け入れる。ああ、なんて都合の良い夢だとうわ言の様に呟き、足を割り、組み敷いて穴を使う。
悲鳴に近い喘ぎも欲望に急き立てられた頭にはただのアクセントに過ぎない。
「夢の中でも気遣っちゃって。奥まで、それ全部ぶちこんじゃいなよ。僕が良いって言ってるんだから・・・ね」
アルフリートの背中に豹がのしかかり唆す。耳を食み、舐り、甘く紡がれる言葉は正しく悪魔の囁きだった。言われるがまま薄い腰を掴み、引き寄せて奥を抉る。最後まで埋まった熱に理性は千切れて、欲望の為だけにがつがつと腰を使う。腰にまとわりつく短いスカートが邪魔で力づくで破る。大きく抜き差しすると獲物は抵抗を見せ、煩わしくなったアルフリートは舌打ちをし、膝裏を掴みベッドに縫い付ける。
「ひぎぃっ! あっ、ああ、ふっふか、や、やだ、やだぁ・・・っ!」
「っう、はぁ、はっ! ほんとうにっ、都合の良い夢だ」
これだけ勝手な動きしかしていないのに司は射精していた。白濁が真黒なコルセットに散り、今もぴゅくと先から精液を零し、不規則に締め付ける。普段の血色の無い肌は薄く赤に染まり、喘ぎながら涙を流す。卑猥な光景に否応なしに煽られ、手加減無しに腰を打ち下ろしアルフリートは快楽を貪る。愛液と先走りでぬかるんだ場所に己の欲を早く解き放ちたかった。境目も無くなるほどお互いに熱に浮かされる。
「あああっ、いやぁっ! あぐぅっ!」
「奥まで濡らしておいて何が嫌だっ!」
「嫌がってみせてるのも都合の良い夢だからだよ~。嫌がってるのを無理やりに組み敷いて中に出すのって興奮するでしょう? 夢だから孕まないのが残念だねぇ」
「くそっ!」
夢の中では互いに魂核が無かった。仮に在ったとしても肉体も無い幻想の世界、孕むはずも無い。
ぐちゅぐちゅ結合部から混ざってどちらの物かも分からない粘液が、浮きあがった腰から司の勃起した性器を濡らして腹につぅっと流れる。射精する為だけの激しい動き。揺さぶられいやいやと形だけの拒絶と母音を垂れ流す司の頭の方に寝そべった豹が楽し気に歌う。にやにやと笑い、二人を言葉で嬲る。
「本当を教えてあげる。アルフリートさんは僕の世界を壊すために招かれた。だからこれはアルフリートさんの望みでもあり司の望みでもある。その出口のない欲望を司にぶつける事を求められている。責任は司にある。責任、取ってもらおうよ」
「あ、あああぁぁーーッ!!」
ぐるぅっ! と歯ぎしりと腹からのうなり声、アルフリートは喉笛に狼の歯を突き立てかぶりつく。喉仏のない、なだらかな顎の下の薄い皮膚。ぷつりとそこを破る感触と血の香りにくらくらと酔う。舌を這わせ、目の前の体を味わう。どこまでも甘い血と汗、湿った悲鳴と嗚咽、喘ぎと誰にも晒したことの無いであろう、自分だけが知る熱い内側。幻想ならば自制する必要も無い。
(そうだ、この熱も欲もこれが煽って巻き起こしたものだ。私はこれに欲望をぶつけて良い。)
アルフリートはびくびく痙攣する体を押さえつけ、恨むように睨みながら司の中に欲望を吐き出した。
一回吐き出しただけで収まるような熱では無かった。勃ち上がった男根はまだ足りないと、暴れさせろと強硬にとずきずきと不満を吐く。夢の中で今まで抑えに抑えていた欲望が顔を出す。ひっ、ひっと短く息をする司の姿にもっと酷くしたいという思いと、優しくしたいという思いがせめぎ合う。
「たった一回でその欲が収まるものかい? 現実では恋人扱い、挿れさせてもくれないんだよ?」
背後から豹が耳元に熱い息と共に苦しい現実を突きつける。揺れる天秤に見えない毒を注ぐ。
「憎らしいよね。この世界の事を知らないからって誘惑ばっかり。こっちの思いも欲求も言わせておいて涼しい顔で泉に逃亡。司はどう思ってるか言わないで、状況説明。挙句にいきなりの野外全裸ポルノ上映。鋼の自制心に感服するよ。ま、司は分かってないけど。
司に悪意は無い、他意は無い、ここでは誤魔化さなくていいんだよ。司にとってアレはそうだったとか、世界が違うからとか、納得させようとしなくていい。初心者だからって手加減する必要も無い。ぶち犯して、ぶっ壊して、自分のテリトリーに囲い込んで自分しか見ないようにして凌辱していいんだよ」
世界が切り替わる。アルフリートの欲望の記憶をなぞるように。ダンジョン、川辺の森、最初に司とアルフリートが熱を交わした場所へ。
※
夕暮れの森、河のせせらぎと梢の音。似つかわしくない熱く籠った息遣い。前と違うのはそれぞれの姿。今度も夢の続きでまだ司の中にアルフリートは収まっていた。狼が後ろから司に覆いかぶさって、腰を振り立てている。
「ああっ・・・っ! あ、ふっ、やだっ、もっやだぁ・・・ぁっん!」
暴虐に抵抗する気力も失せ、腰だけを高く上げ、奥まで硬い欲を受け入れている。かき回された精液は、聞くに堪えない音を立てて司の理性を削る。
いつもどれだけ手加減してくれていたのか、本当に理解したのはその時だろう。
ずっとこうしたかった! これに思う様欲望をぶつけたかった。これは自分の物だと狼が髪を搔き分け項を舐める。
夢の中だというのにその香りは現実より一層生々しく、混ざる匂いにアルフリートは満たされる。現実に帰る前にもっと刻み付けておきたい。
「射精(だ)すぞっ!」
「ぎっ! あ、がっ、ああっ、ああぁああーーっ!!」
性器の根元近くの亀頭球が膨れ、圧迫感に見悶える体の項をきつめに噛む。豹の言った通り、口では拒絶しながら触らずとも射精し、痙攣しながら締め付ける中に押し入って欲望を吐き出し司を汚す事は、この上ない征服感と全能感を齎した。
次は神殿のトトの私室の浴室だった。水面が激しく波打ち浴槽の外へと湯が逃げていく。膝の上で司は揺さぶられていた。長い髪が青い湯の中、波打つのに合わせに舞う。
ずっと挿れられたままもう何度も注がれ、自分が穴になったみたいだとアルフリートの頭を抱えながら熱に浮かされている。
「あっ、僕の、アルフリートさんの形になっちゃうっ・・・! ひっ、あっ、あぁ・・・っ」
豹は浴槽の外でやはり二人を観察していた。的確に卑猥な言葉を投げかけ、司の心の隙に忍び込み淫猥な性を暴く。それによってよりアルフリートも煽られ、何時までもこの睦合いが終わらない。止め所も見失い、ただ吐き出して受け止める暴走した欲だけをぶつける。
「こわれる・・こわれちゃうよぉっ・・・! あッ、ああぁーっ!!」
「壊れろ! 孕めっ! 孕んでしまえ! 私の子を孕めば安心できる、恋人なんぞに何時まで甘んじていればいい!」
アルフリートはずっと我慢をしていた。立場、責任もあったが、司を尊重したかったからだ。夢でも無ければここまで好き勝手できなかっただろう。
初めて恋人の抑えていた欲望に晒され、司は無知を振りかざして振り回した分アルフリートに責め立てられる。
無自覚が無慈悲を誘い、塞き止められていた欲望の嵐が夢の世界で吹き荒れる。
豹は低い声でにゃおんと目を細めて鳴いた。
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