霧の向こう ~ 水の低きに就くが如し ~

隅枝 輝羽

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異世界生活編

115.ぐるぐる……?

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 3人に俺のやる気スイッチが美味しいものだって完全に思われたらしく、食べられるけどそこまで美味しくない動物はみんながスルーするようになった……。

「なんで」
「いや、食材も今かなりあるしねぇ」
「イクミは無駄に生命は奪いたくないと言っていただろ」
「それはそう……なんだけど」

 でも、俺の狩りの練習だったと思うんだよね。まあ、いいか。狩りだけじゃなくて歩いたり野営したりも練習のうちだもんな。
 ていうか、俺からすると完全に「防壁なにそれ」くらい見えないしこんなに歩いてて大丈夫なのって思うんだけど。

「離れすぎてない? 村長に怒られない?」
「いや、離れてないぞ?」
「え……でも」
「んっとね、本当は似たようなところをぐるぐるしてるんだよ。イクミには不思議だろうけど歪められてるの」

 あ、そういえば前にルイがそんなこと言ってたかも。
 村の人はそれがわかるんだって。不思議すぎる。

「さすがにさっきの魔物が落ちた上の折れた枝とかしっかり覚えてたらアレ? って思うかもよ。大人の背丈くらいまでの認識がかなり変化するんだけど、あれって上の方折れてたでしょ」
「あ、そっか。俺、みんなに着いていくからって下ばっか見てたしなぁ」

 あと村の方の魔力とかも歪んで位置がわからなくなってるっていうんだから謎すぎる。

 あっちで言ったら磁場がおかしいみたいな感じなのかなぁ。コンパスを頼りにしても無駄、みたいな。でも目に入る景色まで歪めるってのはないよな。目の錯覚を利用したみたいなミステリースポットは観光地としてあるのは知ってるけど、それともちょっと違う気がする。

「じゃあ本当に離れてないんだ……」
「そりゃ、イクミ君に何かあったら村長にどやされんだろ」
「オレは他にも怒る人がいると思うよー」
「そうなの? もしかしてサディさん?」

 確かにサディさんは村長もルイも少し怖がってたもんな。俺を息子とか孫みたいに可愛がってくれてるし怪我したら怒ることもあるかもしれない。でも、正直言って、サディさんの薬を飲めばたいていのことはなんとかなるとは思ってるんだけどさ。

「あー……いや、はは……」

 ヴァンが変な笑いしてるけど、もしかしてヴァンもサディさんが怖いのか? 俺は優しいところしか知らないからなぁ。双剣持ったらすごいってことか……ドキドキしちゃうじゃん。

 俺が腕を組んでむむぅと唸っていると、ヴァンが「ま、それも間違っちゃいないか……もね」と言う。ちょっとさ、何なのこの子みたいな呆れた顔すんのなんでなんだよ……。意味わかんない。

 でも村からそこまで離れてないって聞いて安心した。ルイが防壁が豆粒ほどでも見える範囲ならみたいなことを言ってたからすごく近いわけでもないんだろうけどさ。

 きっとこの『見える』も村のみんなにとって『感知できる』ってことなんだろうなぁとやっと理解。
 通訳の魔導具が俺に解るように変換しちゃってるんだよね。このへんが俺の受け取ったイメージのまんまじゃないことがあるってこと。まあ反対に俺の伝えたいことも全部が全部正しく伝わってはいないのかもってことなんだけどさ。

 それでもルイは結構頻繁に俺に質問してくるからなにか違和感はあるんだろうなぁと。それだけ気にかけてくれてるみたいで嬉しいよな。

 そうそう、通訳の魔導具といえば、最近よほど俺を認識しないで話してる人たち以外の会話が解るんだよね。前にルイが目の前でガルフさんと話してるの理解できないときあったのに、そういうのがほとんどないんだ。

「あ、それは村のみんなが意識してるからだよ」
「へ?」
「イクミの姿が視界に入るときは問題ないならなるべく意識してあげてくれって村長が言ったからね。疎外感を持たせたくないってさ」

 村長……。だからってその通りにしてくれてるとかマジでみんないい人すぎんだろ。

「そういうのにちゃんと気がついて感謝できるイクミだからだぞ」
「そそ。村の人みんなイクミのこと好きだからね」
「えっえっ」

 やばい、照れる。俺はたいしたことしてないのに……。

 ひとしきり照れまくってアワアワしたあとはまた雪の中を歩く。同じあたりを歩いてるって聞いたあとは変な気分だ。でも俺からしたら全然同じに見えないんだよな。
 こういうので変な輩が村に来られないようになってるのかぁなんて感心もするけどさ。

 さすがに夜になって門がちゃんと目で見える範囲まで来ちゃえば篝火の灯りなんかがバレバレだそうだけど、そこまで来られたなら見えてもしょうがないって感じらしい。
 俺もあのとき明るいの見えたもんな……って懐かしくなる。アレで気が抜けそうになったんだ。結局村に踏み入れる前に倒れたけど……。

 うあー! なんかこうして村の外を歩くだけで、最初のいろんなことを思い出しちゃう!

「イクミ君が百面相してるな」
「面白いねぇ」
「っ! 見せ物じゃありませんっ!!」

 俺らより少し先を歩いていたルイが振り返って首を傾げた。

 ああ、好き! ……って違う。
 でもでもでも! 今の顔めっちゃ良かった……。なにあれ、カッコイイと可愛いのいいとこ取りしてた。

 ふわぁ……ってなってたら俺の真横にスススっと寄ってきたヴァンが耳元で囁く。

 ──そんなバレバレの顔してたらだめなんじゃない?

「っ!」

 ビックリしてヴァンを見ると、普通の顔して前を見ていた。わかってるよみたいな匂わせる言葉は何回も言われてたしからかわれてたけど、こんなに直接的なことを言われたのは初めてだと思う。

 ──隠しとおすならちゃんと気をつけなよ。
「だって……」

 ううん、ヴァンの言うとおりだ。

「まあ、オレはどっちでも楽しいからいいけどねぇ。それにアイツはこういうのには鈍いし。他にも鈍いのばっかだけど」
「楽しいって……」
「さっきから鈍感だのなんだのってまた自分の話か?」

 斜め後ろからドマノンさんが話に割り込んできた。別に怒ってるふうでもなくて、納得がいかないみたいな顔してる。俺としても今まで隠してたつもりだからドマノンさんが鈍いとか思わないけどな。

「オレは誰とか言ってないしぃ」
「大体、ヴァンを基準にして鈍いとか言わないでくれよ。お前が察し良すぎるだけなんだからさー」

 確かにドマノンさんの言葉は一理ある。ヴァンがすぐ気づくだけだよね。サディさんも言ってたし。

 でもルイのことで抱えきれなくなって困ったらヴァンに話を聞いてもらってもいいかな……。本当は誰にも言わないほうがいいのわかってるんだけど、どうしてものときだけ避難所にさせてね、ヴァン。
 
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