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ギュメル大陸編
リディア、悶絶する
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「リディア、明日は私が行きますから休んでいてください!」
パルがすくっと立ち上がると意欲に燃えていた。
立場がどうとか考えられなくなっていたあたしは彼女にお仕事を託す。
翌朝、パルが鼻息荒く「行ってきますね!!」と意気込んで出かけていくのをあたしと朝帰りのリュオが見送った。
ラレスは再び行方不明のペット「トカゲのマーシャルちゃん」こと“陸上ドラゴン”探しに出かけていく。
間違っても陸上ドラゴンとトカゲは別物だけど、ツッコむ気力が沸かない。
体高50セロス(cm)くらい、全長310セロス(cm)くらいで丸太のような手足が生えている4足歩行の飛べないドラゴン。それが陸上ドラゴンだ。
見たことないけど。
その日は空を流れる雲をひたすら眺めているうちに夕方になり、夜が訪れる。
夜のとばりがおりる頃、右頬にひっかき傷が生々しいラレスが帰ってきて、直後にパルが続く。
「いやー、ペットでもドラゴンだな。パンチされたよ」
既に止血済みの傷を見せて爽やかに笑っていた。
せっかくのイケメンが、生傷の絶えない熱血ヒーローみたいな感じに!
一方、パルは静かだった。
疲れ果てたとかでは無く、死んだ魚のような目をしていた。
「盗賊退治に・・・・・・行きましょう・・・・・・アレは、ダメです・・・・・・」
虚無のあまり悟りが開けてしまったっぽい。
秘石が埋め込まれた魔導書を荷物から取り出すとふらふら表に出ていこうとするのを阻止する。
「身ぐるみはがされて国外に売られちゃうわよ!!」
昨日聞いたセリフを丸っとお返し。
「身ぐるみ・・・・・・こんな貧乏人から剥ぐものなんて無いですよ・・・・・・」
うふふふふ、と怪しい笑いを浮かべるパル。
まって! 悟りを開き損ねて壊れちゃったわ!
とりあえず、意味も無くパルの頭を撫でまくる。
「うふふふふ・・・・・・」
半笑いのままパルがしなだれかかってきて
そして、すぴーと寝息を立てながら眠り出した。
「疲れてたんだよ。俺が連れていこう」
悲しい目をしたラレスがパルをお姫様抱っこすると彼女の寝泊まりする部屋に送り届けに行った。
ええーーーーッ!! いいなぁ!! あたしも倒れてお姫様抱っこされたい!!!
しおしおと脱力したところにリュオ姐さんが出現。
「あらん? リディアちゃんぎっくり腰? ダメよぉ、ぎっくりになるとクセになるわよ~」
スススっと滑るように近付いてきてお姫様抱っこされるあたし。
んんん???
そのままベッドまで運ばれると布団を掛けられ燭台のロウソクを吹き消す。
ご丁寧にブーツのような靴も脱がされベッド脇に安置。
「お大事にねぇ」
ドアが静かに閉まり、静寂が支配する。
あああああああーーーーーーーーッ!!!!???
何か違う!! そうじゃないのよ!!! いやでも有りか?! 無いわよ!!!!
掛け布団の中で丸まり左右にゴロゴロ激しく身悶え。
いや、お姫様抱っこだよ?! 女装してるとは言え男の人だよ!!
違うって何が違うのかって違うのよ!!
「あああああーーーーーーーッ!!!」
ゴロゴロしすぎたせいでベッドから床に向け転げ落ちる。
ふわりと羽が舞うような錯覚に陥り、
ドドン!!
「あ、イターーーッ!!!」
羽とか錯覚だわ! 木の床がたわみ、衝撃音が響く。
「うっせーーーぞ!!」
階下から野太いおっさんの声。
「ごめんなさーーーい!!」
薄暗い部屋の中、壁に向かってドゲザを放つ。
落ち着けあたし! 落ち着け。
心頭滅却すれば火もまた涼し。
ヒッヒッフーッ、ヒッヒッフーッ
父さんから教わった心を落ち着ける呼吸法を実践。
ああー、なんかモヤモヤするぅ。
たぶん一番長い夜になりそうだった。
パルがすくっと立ち上がると意欲に燃えていた。
立場がどうとか考えられなくなっていたあたしは彼女にお仕事を託す。
翌朝、パルが鼻息荒く「行ってきますね!!」と意気込んで出かけていくのをあたしと朝帰りのリュオが見送った。
ラレスは再び行方不明のペット「トカゲのマーシャルちゃん」こと“陸上ドラゴン”探しに出かけていく。
間違っても陸上ドラゴンとトカゲは別物だけど、ツッコむ気力が沸かない。
体高50セロス(cm)くらい、全長310セロス(cm)くらいで丸太のような手足が生えている4足歩行の飛べないドラゴン。それが陸上ドラゴンだ。
見たことないけど。
その日は空を流れる雲をひたすら眺めているうちに夕方になり、夜が訪れる。
夜のとばりがおりる頃、右頬にひっかき傷が生々しいラレスが帰ってきて、直後にパルが続く。
「いやー、ペットでもドラゴンだな。パンチされたよ」
既に止血済みの傷を見せて爽やかに笑っていた。
せっかくのイケメンが、生傷の絶えない熱血ヒーローみたいな感じに!
一方、パルは静かだった。
疲れ果てたとかでは無く、死んだ魚のような目をしていた。
「盗賊退治に・・・・・・行きましょう・・・・・・アレは、ダメです・・・・・・」
虚無のあまり悟りが開けてしまったっぽい。
秘石が埋め込まれた魔導書を荷物から取り出すとふらふら表に出ていこうとするのを阻止する。
「身ぐるみはがされて国外に売られちゃうわよ!!」
昨日聞いたセリフを丸っとお返し。
「身ぐるみ・・・・・・こんな貧乏人から剥ぐものなんて無いですよ・・・・・・」
うふふふふ、と怪しい笑いを浮かべるパル。
まって! 悟りを開き損ねて壊れちゃったわ!
とりあえず、意味も無くパルの頭を撫でまくる。
「うふふふふ・・・・・・」
半笑いのままパルがしなだれかかってきて
そして、すぴーと寝息を立てながら眠り出した。
「疲れてたんだよ。俺が連れていこう」
悲しい目をしたラレスがパルをお姫様抱っこすると彼女の寝泊まりする部屋に送り届けに行った。
ええーーーーッ!! いいなぁ!! あたしも倒れてお姫様抱っこされたい!!!
しおしおと脱力したところにリュオ姐さんが出現。
「あらん? リディアちゃんぎっくり腰? ダメよぉ、ぎっくりになるとクセになるわよ~」
スススっと滑るように近付いてきてお姫様抱っこされるあたし。
んんん???
そのままベッドまで運ばれると布団を掛けられ燭台のロウソクを吹き消す。
ご丁寧にブーツのような靴も脱がされベッド脇に安置。
「お大事にねぇ」
ドアが静かに閉まり、静寂が支配する。
あああああああーーーーーーーーッ!!!!???
何か違う!! そうじゃないのよ!!! いやでも有りか?! 無いわよ!!!!
掛け布団の中で丸まり左右にゴロゴロ激しく身悶え。
いや、お姫様抱っこだよ?! 女装してるとは言え男の人だよ!!
違うって何が違うのかって違うのよ!!
「あああああーーーーーーーッ!!!」
ゴロゴロしすぎたせいでベッドから床に向け転げ落ちる。
ふわりと羽が舞うような錯覚に陥り、
ドドン!!
「あ、イターーーッ!!!」
羽とか錯覚だわ! 木の床がたわみ、衝撃音が響く。
「うっせーーーぞ!!」
階下から野太いおっさんの声。
「ごめんなさーーーい!!」
薄暗い部屋の中、壁に向かってドゲザを放つ。
落ち着けあたし! 落ち着け。
心頭滅却すれば火もまた涼し。
ヒッヒッフーッ、ヒッヒッフーッ
父さんから教わった心を落ち着ける呼吸法を実践。
ああー、なんかモヤモヤするぅ。
たぶん一番長い夜になりそうだった。
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※全11話 2万字程度の話です。
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