俺、人型兵器転生。なぜかゴブリンとかエルフがいる未来の崩壊世界を近代兵器で無双する。

ねくろん@アルファ

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白鮪

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 新型エンジンを搭載した重マグロ駆逐艦は、舳先をまるで剣のようにして黒い海原を切り裂いて進んでいた。

 この船にはポルシュ肝いりのハイブリッド機関が搭載されている。
 要はキングチハの船バージョンだ。

 船舶も後進の際にエンジンとギアを複雑な操作をしてやらないといけない。
 それをエンジンとモーターを組み合わせてハイブリッド化してしまえば、駆逐艦のエンジンスペースにかなりの余裕が出る。ポルシュはそこに追加のモーターとエンジンをぶち込んで、機関室を大幅に拡張したそうだ。

 要はエンジンを大きくしただけだが、それを成し遂げるアイデアが大事なんだな。

「ガハハハ!こんな速さで進む重マグロ駆逐艦は初めてじゃわい!!!!」

 嬉しそうに大笑いしているのは、この重マグロ駆逐艦の艦長の「エイハブ」翁だ。

 彼は生まれたのも、育ったのも重マグロ駆逐艦の上だ。

 普通の子供が積み木で遊ぶところを、重機関銃のカラ薬莢で遊んでいたらしい。
 どんなエリート教育だよ。

「……風が強い、吹き飛ばされるなよ、ご老体」

「ガハハ!!!!なんのなんの!!!!」

 船の進む速度が40ノット以上となると、甲板の上を吹き付ける風の力は、容易に人間を吹き飛ばすものに変わる。

 もし吹き飛ばされてしまえば、この海のど真ん中だ。
 通りかかる船はこの重マグロ駆逐艦以外に存在しないだろう。
 つまり、落ちればもう助からない。

 マジで気を付けてね?フリじゃないよ?おじいちゃん。

「このフネがあの時にあれば、きっとアイツ、『白マグロ』を仕留められたな」

「……白マグロ?それは一体なんだ?」

「海の怪物さ、重マグロの中でもとびっきりの怪物だ。全長は人間を100人並べてもまだ足らん。体当たりを食らえば、並の駆逐艦なら真っ二つだ」

 ……はい? フネをブチ折るって、何そのマグロ?

 あ!重マグロ駆逐艦って、そういう意味かよ!!!!
「重」って形容、駆逐艦じゃなくて、マグロの方にかかってたのかよ!!!!!

「目本は昔から重マグロと戦い続けてきた国だ。それでもあんな重マグロは他には居ない、『白マグロ』は悪魔さ。何人もの海兵を葬ってきた悪魔だ」

「……その白マグロとやらに、エイハブ翁は何か因縁がありそうだな?」

「ああ、『白マグロ』奴はワシの生まれた船を沈めた奴さ。ワシの両親と一緒にな。あの悪魔を仕留めないうちには、ワシは丘の上で死ぬ気にはなれんね」

「今でも思い出す。海に放りだされた時にあいつと目が合ったんだ、わしはあいつの目を見た。まるで死んだ魚のような目だった」

 そりゃ魚だからそういう目だろうね?

「わしは今でも『白マグロ』に復讐を誓い続けておるのだ!」

「……気持ちはわかるが、今我々はラメリカに向かっている。白マグロが出たとしても、追いかけるわけにはいかぬぞ」

「アイアイ、サー。ですが、そうもいかねえみたいですぜ」

「……何?」

 その時だった!黒い海原を割って、白い流星、いや白いマグロが飛び出した!

 マグロはすさまじい勢いでこちらに迫って来る、まるで魚雷だ。
 奴は重マグロ駆逐艦の側面を狙っているのか!

「警報だ!!!!第三種戦闘配置!おもぉーかぁーじぃー!」

 エイハブの手によって「カンカンカンカン」とやかましくフネの鐘が打ち鳴らされる。「おもーかぁーじぃー!!」というポルシュの声とともに、重マグロ駆逐艦は大きく右に曲がる。

 フネの先頭は白マグロの方へ向いた。逃げるのではなく立ち向かうのか。

 そうか!通り過ぎる形になって、相対速度がつけばつくほど、奴が再度こちらに攻撃をしかけるまでの時間が稼げる。

 さすが海の男エイハブ、なんと冷静で的確な判断だ。

 ここで俺のできることは特にない。

 さすがの俺も、100メートルを超える巨大な白マグロに対抗できるような兵装は持っていないからだ。

 怖気もせず、真っ直ぐ重マグロ駆逐艦『ヴィルベルヴィント』に近づいてくる巨大な白マグロを見る。まるで巨大な氷山がこちらに進んできているようだ。

 ならばヴィルベルヴィントは、さしずめタイタニックか?
 あのフネと同じ運命は辿りたくないな。

「うちぃーかたーはじめ!!!!」

 こちらへ真っ直ぐに進んでくる白マグロを、艦の前部に据えられている2門の120㎜速射砲の照準が捉えた。

 いや、マグロに何で大砲がいるんだよ?!
 そこは網とかでもいいんじゃねえの?!!!

<DOM!!DOM!!>

 榴弾が黒い海原に吸い込まれて、大きな水柱を建てる。
 発射された120mm砲弾は当たらなかった。
 白マグロはその体を揺らして、巧みに2門の砲撃を避けたのだ。

「クソ!対マグロ魚雷、ついで対マグロ爆雷の投下を用意しろ!」

「アイアイ、サー!」

 マグロ漁に使う装備じゃねえよ!!いい加減にしろ!!!!

 白マグロは正面衝突を避け、ヴィルヴェルヴィントの左舷側を通り過ぎていく。
 奴が左舷を通り過ぎていくのは、ほんのわずかな時間だった。
 しかしそのわずかな時間にも、勇敢な水兵たちは機銃座について、白鮪に向かって発砲する。しかし重機関銃の弾は、奴の分厚い皮膚に阻まれてしまった。

 ……マグロだよね?

「爆雷を投下しろ!今がチャンスだ!!」

 エイハブの指示によって、駆逐艦の後部から灰色のドラム缶が次々と海に落とされていく。あれには大量の炸薬が充填されていて……もう突っ込まないぞ。

 とにかく発破して大きな水柱と波紋を広げる。
 普通のマグロならこれで、いや、マグロでなくても死ぬが、どうなった……?

 次に波間から現れた白マグロは、その体躯から赤い血を流していた。
 どうやら効果はあったようだな。

「動きが鈍っているぞ!!機関出力最大!!全速前進だ!!」

 白マグロを中心にして、ヴィルヴェリヴィントは円を描くように機動して雷撃に適したポジションを取りにいく、しかし……。

「魚雷はどうした!」
「圧が足りません!!魚雷管不調!!」
「クソッ!!むざむざ取り逃がすだと?!」

 みると3本の魚雷発射管に込められた魚雷が中途半端に突き出た状態のまま止まっている。機関を交換したことで、発射に使うシステムに不調が発生したのか。

「……仕方があるまい。エイハブ、私が行こう」

「ポトポトの……すまねえ!恩に着る!この借りは絶対返すぜ!」

「……ふん、皆に美味い刺身を振る舞ってくれたら、それでいい」

 俺は発射管から突き出た魚雷を引っこ抜くと、それを小脇に抱えたまま、飛行ユニットの翼を展開して、白マグロへ突進する。

 近づいてみると、想像以上にデカイ。

 そこらのB級サメ映画でも見ないサイズ、いや、サメ映画の場合、予算の都合でそもそもサメが出てこないサメ映画(?)というのもあったな。

 どんだけネタに困ったハリウッドでも、映画に巨大マグロは出さないだろう。

 小説、映画、アニメ、あらゆる業界で扱いにこまるこの存在には、人知れず消滅してもらわないといけない。加速したままの勢いで、俺はマグロに魚雷を投げつける。

 白マグロは魚雷をエサか何かと思ったのか、その大きな口を開き、ガチリと捉えた。まるでワニか何かが、獲物を咥えるみたいにしている。

 そして気が付く、これでは魚雷は撃発しない。
 ――ッ!それが目的か、このマグロの姿をした化け物め!!!!

 にやりと白マグロの目が笑ったように見えた。

 なるほど。

 しかしお前は重マグロ駆逐艦には詳しいが、俺の事は知らない。
 そう、俺の腕から砲弾が出て、その魚雷を爆発させられることをな!!!

 俺はオートキャノンで魚雷の先端を狙い撃つ。
 37mmの徹甲榴弾は、いともたやすく900kgの炸薬を包み込んでいる外殻を貫き、白マグロの口で大きな爆発を起こす。

<KABOOOOOOM!!!>

 あまりの爆風と水柱の大きさで俺の体は大きく揺さぶられる。
 うぉぉ!水面すれすれ!あっぶねぇ!!!

 水柱が静まった後、荒れくるう波間に、頭部を失った白マグロの巨体が浮かんでいる。俺は重マグロ駆逐艦から上がる歓声を背に、それを見つめていた。
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