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131.夏の香りを想う*
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「あ、ん……あ、あ、い、い」
先端の小さな穴からとろりと透明な体液がこぼれて、あゆたはくちゅくちゅと一番敏感なそこを掌で包み込む。
その刺激に恍惚として力を抜くと、忍び込ませた指を熟した果物のように柔らかく飲み込んでいく。
きゅぅっと食むように狭さに指を圧迫される。あゆたは息を吐いた。
「あぁ……」
こんなこと、知らない。
熱を持って腫れぼったい隘路が指をしゃぶっている。ぬるぬるしたそこにどうしたらいいのか。拙い知識を思い出しながら、指をゆっくりと動かしてみる。
「あ! あ!」
神経を直に撫でられたような強烈な何かが四肢を突っ張らせた。あゆたはそれを逃そうと必死で呼吸をする。声が自分のものだと思えない。みっともない。これが嬌声なのだと恥じ入りながら、それでも指は止められなかった。
「いい、ああ、あ……ん」
我を忘れて手の中の性器をもてあそぶ。誰にも拓かれていなかった狭間に痛みがないことに安堵して、それが少しだけあゆたを大胆にさせていった。
どこを押せばいいのか、手探りで咥えこんだ指で捜してみた。よくわからないまま、手探りで刺激を求める。唇を舐めると汗の味がした。敏感になった粘膜はどこも似ている。
「う、ん、ん」
後ろで快感を得るにはまだ早かったのか、生煮えの快さでは足りなくなる。勃起したわかりやすい性器をもみくちゃにして、頭の中が気持ちいいことで支配されている。
薄暗いクローゼットの中。もどかしい。クリーニングしたてのように清潔な匂いのするクッションへ、汗を拭うようにこめかみを擦り付けた。
背中を受け止める毛布もクッションもぐちゃぐちゃに乱れている。もどかしい。ひとりきりで耽る小さな暗闇。それしかないかのように、あゆたは必死になって絶頂を目指した。
あの人が傍にいればいいのに。
あの、夏の果物のようなうす甘いフェロモン。
記憶からくゆり立つ八月一日宮の匂い。
「あああ……!」
喉を絞るようなかすれた声を上げ、後ろが一本しかない指を物足りないと訴えるようにきゅうっと締め付ける。初めて迎えた発情期の法悦の凄まじさにあゆたは目を閉じた。
先端の小さな穴からとろりと透明な体液がこぼれて、あゆたはくちゅくちゅと一番敏感なそこを掌で包み込む。
その刺激に恍惚として力を抜くと、忍び込ませた指を熟した果物のように柔らかく飲み込んでいく。
きゅぅっと食むように狭さに指を圧迫される。あゆたは息を吐いた。
「あぁ……」
こんなこと、知らない。
熱を持って腫れぼったい隘路が指をしゃぶっている。ぬるぬるしたそこにどうしたらいいのか。拙い知識を思い出しながら、指をゆっくりと動かしてみる。
「あ! あ!」
神経を直に撫でられたような強烈な何かが四肢を突っ張らせた。あゆたはそれを逃そうと必死で呼吸をする。声が自分のものだと思えない。みっともない。これが嬌声なのだと恥じ入りながら、それでも指は止められなかった。
「いい、ああ、あ……ん」
我を忘れて手の中の性器をもてあそぶ。誰にも拓かれていなかった狭間に痛みがないことに安堵して、それが少しだけあゆたを大胆にさせていった。
どこを押せばいいのか、手探りで咥えこんだ指で捜してみた。よくわからないまま、手探りで刺激を求める。唇を舐めると汗の味がした。敏感になった粘膜はどこも似ている。
「う、ん、ん」
後ろで快感を得るにはまだ早かったのか、生煮えの快さでは足りなくなる。勃起したわかりやすい性器をもみくちゃにして、頭の中が気持ちいいことで支配されている。
薄暗いクローゼットの中。もどかしい。クリーニングしたてのように清潔な匂いのするクッションへ、汗を拭うようにこめかみを擦り付けた。
背中を受け止める毛布もクッションもぐちゃぐちゃに乱れている。もどかしい。ひとりきりで耽る小さな暗闇。それしかないかのように、あゆたは必死になって絶頂を目指した。
あの人が傍にいればいいのに。
あの、夏の果物のようなうす甘いフェロモン。
記憶からくゆり立つ八月一日宮の匂い。
「あああ……!」
喉を絞るようなかすれた声を上げ、後ろが一本しかない指を物足りないと訴えるようにきゅうっと締め付ける。初めて迎えた発情期の法悦の凄まじさにあゆたは目を閉じた。
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