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141.運命の番
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開けっ放しのドアで八月一日宮を追っていた怒鳴り声が追い付いてきた。
「おい! 勝手なことをするな!」
飛び込んできたのは信善だった。
怒りで顔を赤くして、ずかずかと部屋に入ってくる。
八月一日宮は素晴らしい反射神経でぱっと身を翻し、片腕をあゆたに回したまま信善に対峙した。
「おい、貴様! 勝手に入って来るな! 警備員を呼んだからな!」
大きな声に身が竦みそうになる。あゆたは思わず八月一日宮のブレザーの背中に身を寄せた。
喚き散らす信善にひるむことなく、八月一日宮は静かな声できっぱりと言った。
「未成年略取で警察に電話してもいいんですよ」
口を開きかけて、しかし信善は考え込むように首を傾げた。
「ん? 君、どこかで見た顔だな……」
「以前夜会でお会いしたことあります。八月一日宮の三男です」
「それで……。しかし、その八月一日宮家の人間が、何故こんな暴挙を? それは我が家が後見人を引き受けている。略取なんて成立しない」
落ち着き払った八月一日宮の態度に少しずつ気圧されたのか、信善は落ち着きなく目を泳がせた。
「同意のない性交を幇助したのは事実でしょう? あと売春もですよね」
「っ、何か、勘違いしているようだな。これは見合いだよ。合法だ。妙な言いがかりはやめてくれたまえ」
信善は切羽詰まったように声を上ずらせた。
八月一日宮はせせら笑った。
「へえ、合法なんですか? 監禁していたみたいですけど?」
「……関係ない子供が勝手に入ってくるのは不法侵入では?」
歯噛みしながら信善は言い返したが、八月一日宮は歯牙にもかけない。涼し気な笑みすら浮かべた。
「関係? ありますよ。鶯原あゆたさんは俺の運命の番です」
あゆたは思わず八月一日宮の横顔を見上げた。
(は? 何を言ってるんだ?)
運命?
混乱したままあゆたは八月一日宮のブレザーを握ったが、八月一日宮はちらりと流し目をくれるだけでまた前を向いた。
「おい! 勝手なことをするな!」
飛び込んできたのは信善だった。
怒りで顔を赤くして、ずかずかと部屋に入ってくる。
八月一日宮は素晴らしい反射神経でぱっと身を翻し、片腕をあゆたに回したまま信善に対峙した。
「おい、貴様! 勝手に入って来るな! 警備員を呼んだからな!」
大きな声に身が竦みそうになる。あゆたは思わず八月一日宮のブレザーの背中に身を寄せた。
喚き散らす信善にひるむことなく、八月一日宮は静かな声できっぱりと言った。
「未成年略取で警察に電話してもいいんですよ」
口を開きかけて、しかし信善は考え込むように首を傾げた。
「ん? 君、どこかで見た顔だな……」
「以前夜会でお会いしたことあります。八月一日宮の三男です」
「それで……。しかし、その八月一日宮家の人間が、何故こんな暴挙を? それは我が家が後見人を引き受けている。略取なんて成立しない」
落ち着き払った八月一日宮の態度に少しずつ気圧されたのか、信善は落ち着きなく目を泳がせた。
「同意のない性交を幇助したのは事実でしょう? あと売春もですよね」
「っ、何か、勘違いしているようだな。これは見合いだよ。合法だ。妙な言いがかりはやめてくれたまえ」
信善は切羽詰まったように声を上ずらせた。
八月一日宮はせせら笑った。
「へえ、合法なんですか? 監禁していたみたいですけど?」
「……関係ない子供が勝手に入ってくるのは不法侵入では?」
歯噛みしながら信善は言い返したが、八月一日宮は歯牙にもかけない。涼し気な笑みすら浮かべた。
「関係? ありますよ。鶯原あゆたさんは俺の運命の番です」
あゆたは思わず八月一日宮の横顔を見上げた。
(は? 何を言ってるんだ?)
運命?
混乱したままあゆたは八月一日宮のブレザーを握ったが、八月一日宮はちらりと流し目をくれるだけでまた前を向いた。
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