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王都編
強引だけど受け取って
「フリードリヒ殿下! レイジス様! 何かございましたか?!」
「ソルゾか。どうした。そんなに慌てて」
フリードリヒの膝の上に座ったままうさうさバッグの中にあった魔石で属性魔石を作っていた時だった。
肩を上下に揺らして顔色が悪いソルゾ先生と、その後ろにいる三人の魔導士さん達が警戒をするように周りを見ている。ん? どうしたの?
全員がきょとんとしながらソルゾ先生を見れば、誰も怪我をしていないことを確認している。え? え? なになに?
「高魔力を感じたので来てみたんですが…」
そう言ってからソルゾ先生が僕の手にある魔石を見て、ほっと息を吐いた。
「レイジス様が魔石をお作りなられていたんですね」
「あ、もしかしてこれが原因ですか?」
今作っていたのはフリードリヒとノア用の土魔法の魔石。やっぱり王都内で属性武器を作るのはまずいよね、と思い至り魔石でサポートをすることにしたんだ。
…というか高魔力ってなに?
首を傾げながらソルゾ先生を見れば「高魔力ってなんですかってお顔ですね」と苦笑いを浮かべる。あわ。先生まで僕の言いたいこと分っちゃうんですか?!なんて驚いていたら「レイジス様がお顔に出やすいんですよ」とノアが笑う。あ、もしかしてリーシャも僕の顔見て「こんな感じじゃないのかな?」って予測してるのか!
「高魔力とはそのまま、魔力が高まっている状態ですね。ここは王族専用ですから少しでも高い魔力が感知された場合、警備の者が来ることになっています」
「ふむふむ」
「今回は殿下とレイジス様がいらっしゃったので、警備の者が守りを強くし魔力の感知をあげていました。そこでレイジス様の魔石作りの魔力が反応したようですね」
「うん? 僕だけ? リーシャの水と火魔法は?」
「リーシャ君も使ったんですか?」
「うん。ちょっと動転して、レイジス様と殿下をずぶ濡れにしました」
あっけらかんとそう言うリーシャに驚いているのは魔導士の三人。まぁ、普通王子に気が動転していたとはいえずぶ濡れにするなんて考えられないからね。処罰位当然だろうし。
それに加え、王族の膝の上に乗って魔石を作ってる僕にも驚いてた。うん。ごめん。お腹に手が回ってて逃げられないんだ。
「でも魔石作りだけで高魔力を感知できるものなんですか?」
「先程も言いましたが、守りを強くしたのも原因です。ですがレイジス様の魔力は人よりもお強いんですよ」
「そう言えばハーミット先生が、僕の魔石はそのままでも属性が漏れ出すみたいなこと言ってましたよね?」
「はい。ですからレイジス様のお作りになられる魔石は、魔導士が軽く魔法を使っているのと同じなんです」
「はえー」
そうなんだ。だったらなんか悪いことをしちゃったなー…。ちらっと警戒してた魔導士さんを見れば、さっと視線を逸らされた。おふ。ちょっと悲しい。
「ところでなぜ魔石を?」
「えっとですね! もぐっ」
僕が話そうとした口をフリードリヒの手が塞ぐ。また?! もぐぐー!と口をもごもごさせるけどにっこりと笑うだけで説明もないからちょっと怖い。
「レイジスが面白いことを発見したようだからな。明日の朝にでも宮廷魔導士三人を集めておくように言っておく。ソルゾ、お前もだ」
僕に笑うよりもちょっとだけ悪い感じでニヤリと笑うフリードリヒの言葉に、ソルゾ先生の眉が寄った。
「三人…と言うことは第一魔導士団長、副団長。それに第二魔導士団長と言うことですか?」
「ああ。第二魔導士団副団長はお前だから伝えるには十分だろう?」
ほあ?! ソルゾ先生って第二魔導士団副団長さんだったの?!
ふぐっ?!という僕の声ににっこりと笑いながら「そうだぞ」と告げるフリードリヒ。ちょっと! そう言うことは早く言ってよー!
「…分かりました。ですが殿下たちはどうなされるのですか?」
「昼が済んだからこれからレイジスの頼んだものを取りに店に戻る」
「ふりーほりひれんふぁー」
おっと。戻るならほぼほぼ食べつくしちゃったけどおやつをソルゾ先生に渡したい! ご飯も一緒に食べてないから!
「ん? どうした?」
「ぷはっ! おやつをソルゾ先生に渡してもいいですか? 残り物になっちゃってますけど」
「ああ、なるほど。そこにナプキンがあるだろう? それに包んで…」
「それなら私が」
そう言ってくしゃっと丸めて置いてあった包みの中から、アルシュが布ナプキンを三枚取り出すと浄化魔法で綺麗にしてからクッキー、ブラウニー、ドーナツとそれぞれ分けて包んでいく。寮に戻ったらまた一緒にご飯とおやつ食べようね!
「ありがとうございます。アルシュ君、レイジス様」
「ううん。残り物でごめんね」
「いえいえ。侍女さん達のおやつは美味しいですからね」
そう言ってふふーと笑い合えば、魔導士さん達の瞳が丸くなってる。え? そんな驚くこと?
「では我々は先に門へ戻りますね」
「ああ」
では、とフリードリヒと僕に向かって頭を下げると、魔導士さん達も頭を下げて戻っていく。おやつを包んだナプキンを大切そうに持って。
その背中にバイバイをすると「さて」とフリードリヒが僕を見た。ん?どうかしました?
「お弁当箱と魔石を片付けて店に戻ろうか」
「あ、はーい!」
そっか。ソルゾ先生たちが先に戻ったのはうさうさバッグの事があるからか。と言うことはソルゾ先生もうさうさバッグについては何かしら知ってるのかー。
そういえば僕、フリードリヒの膝の上に乗ったままだった。あ、ちょっと恥ずかしいー!
見知らぬ人たちに子供みたいに座ってるところ見られてたんだよね?! ふおおおお…! 今になって恥ずかしさが襲ってくるー!
うぐぐと一通り恥ずかしくなってから気持ちを切り替える。フリードリヒに降ろしてもらってお弁当箱をうさうさバッグに吸い込ませようとしたら、皆が興味津々で覗き込んでくる。あ、分かるー! 絶対に入らない大きさだもんね!
布で包んだお弁当箱を限界まで口を開けたうさうさバッグへと近づけると、すーっと吸い込まれていく。そして半分まで吸い込んだところで「しゅぽん!」と勢いよく吸い込まれていった。それに「うわ! こわ!」と告げたのがリーシャ。「なかなか興味深いですね」とうさうさバッグの口を開いたり閉じたりしてるのがノア。「そうやって入っていたのか…」「不思議ですね」とのんびりしてるのがフリードリヒとアルシュ。
それぞれの反応を楽しんでから、敷物も浄化魔法で綺麗にしてうさうさバッグへと入れる。こっちは普通にはあるんだよね。お弁当箱は影も形もないけど。ホント、不思議なカバンだ。
ぽんぽんとうさうさバッグの頭を撫でてから、フリードリヒと手を繋ぐ。門を出たらノアにバトンタッチ。そういう約束だからね。
門を出るまでのんびりとフリードリヒと手を繋いで歩く。ゆっくり、手を離すのが惜しいからのんびり、と。
「おう! 頼まれてたもの、できてるぞ!」
「ホントですか?!」
わー!早ーい!「アレクトスが飯も食わず作ってたからな」と、がははと笑いながらドロンガさんがカウンターに頼んでおいたものを並べてくれた。
そこにはガラスでできた六角柱が10本と万華鏡が3本。
「わー! アレクトス君すごい!」
「今、飯を食わせに行ってるんでいないけどな」
「そっか…。手にしてみても?」
「ああ」
ちゃり、とチェーンが付けられた透明なガラスでできたそれを手にすると「あれ?」とその違和感に気付いた。
ん? んんー? んん?
首を傾げながら六角柱のガラスをくるくると回しながら感触を確かめる。
「なんか注文と違ったか?」
「いえ…なんていうかこれガラスって言うよりも…クリスタルに近い感じが…?」
「クリスタル? 本当か?」
「はい」
「見ても?」
「? はい。どうぞ?」
ドロンガさんがちょっと焦りながら「では失礼して」と浄化魔法で手を綺麗にして布でそれを手にし、僕と同じようにくるくると回して確かめてる。
「本当だ…。これはガラスよりもクリスタルに近いな」
「あれ? ドロンガさんは気付かなかったんですか?」
「アレクトスに「レジィのものだから触るな」と言われちまって触らせてくれなかったんだ」
「ああ…これは。ほほう?」
顎に手を乗せてにまにまとしてるリーシャに首を傾げてからドロンガさんに「どうしましょう?」と相談してみる。
「どうと言われてもな…。こんなのは初めてなわけだし…」
「レジィ。これは天然の物と遜色ないのか?」
「はい。素人目ですがこれはクリスタルでほぼ間違いないかと」
「店主は?」
「間違いねぇな。これはクリスタルだ。俺が保証してやる」
と、いうことはアレクトス君は土魔法で本物の鉱石を作りだしたのか。すごいなー!
けどこれで魔法から宝石が作り出せることが証明されちゃった訳で。
「ふむ。ならばこれはここだけの話にしてもらいたい」
「? ああ。構わんが…。あんたは?」
「む。失礼した。ノアの友人のセイランと言う」
にっこりと笑ってそう言うフリードリヒにアルシュとノアがちょっと苦笑いしてる。
まぁお忍び、だからね。
「じゃあこのことは王宮に話を付けとくよ。まさか魔法で宝石と変わらない物ができちゃったわけだし」
「ああ。頼んだぜ、リーシャ。報告したらあいつ…アレクトスに監視とかつかないよな?」
「平気じゃない? 何かしら制限はかかると思うけど、レジィ以外は頼んでも作ってくれそうもなさそうだし大丈夫だって。ねぇ? セイラン?」
「レジィ以外、というのが引っかかるが平気だろう」
「そうか…。ならよかった。あいつは腕を磨いて将来装飾店を開いて、教会にいる孤児たちに美味いもんを腹一杯食わせるって言うのが夢なんだよ」
ほわぁ…。アレクトス君ってほんっといい子だなぁ…。よし! 陛下に言って僕の氷の魔石の売り上げの半分を国内の教会へと寄付しよう。そのうち氷の魔石の価値がなくなるから今のうちにたくさん寄付するぞ!
ふんす、と気合を入れていると「レジィの言いたいことがなんとなくわかる」とリーシャに突っ込まれる。それにうんうんと頷くアルシュとノア。良いもん! 悪いことじゃないから!
「あ、そうだ! アクセサリーの方はクリスタルの値段でお願いします」
「いやいや。こっちが勝手にそう作っちまったんだ。ガラスの値段でいいよ」
「だーめーでーすー! アレクトス君にも言いましたけど職人さんにお金を払わないのは失礼なんです!」
「…うさぎの嬢ちゃんは嬉しいこと言ってくれるねぇ。職人、か」
「はい! アレクトス君はもう立派な職人さんですから!」
むふん、と胸を張れば「そうか。なら万華鏡の方は無料で構わん。だがクリスタルの方は少々値が張るぞ」とドロンガさんがにやりと笑う。
その笑みに持ってるお小遣いで大丈夫かな?なんてちょっと不安になるけど「構いません!」と言えばお小遣いで十分に買えてほっとした。でも残ったのは半分くらい。
「あ。そうだ」
ドロンガさんが1つ1つ革の袋に丁寧に入れてくれたそれをフリードリヒ、アルシュ、ノア、リーシャにやや強引に手渡す。
「レジィ? これは?」
「街まで付き合ってもらったお礼です!」
えへっと照れ隠しにそう笑えば、全員の目が見開いた。
「お礼…」
「はい! 制服の胸の辺りに付けられるようにしてもらったのでペンダントでも胸飾りでもできるようになってます」
いつも着てる制服もそうだけど、もう一つの制服を着てる皆を見て作りたくなっちゃったんだよね。
騎士科のフリードリヒとアルシュとノアはちょっと邪魔かもしれないけど。リーシャは大丈夫だろうからちょと長めにしてある。
するとフリードリヒが近付いてきてぎゅうと抱き締められた。ほわ?!
「ありがとう。レジィ」
「は、はばばばば!」
まさか抱き締められるとは思ってみなかったからビックリよりも羞恥が勝る。だってすぐ近くにドロンガさんがいるんだもん!
「ノア…とかいったか?」
「はい」
「嬢ちゃんを取られたな」
「いいんですよ。あの二人はそういう仲ですから」
「は?!」
「それに。私はあの子の『兄』ですからね」
「そうか…。寂しくなるな」
「……………。そうですね」
僕がフリードリヒに抱き締められてはわはわしている間に、ノアが少し寂しそうにそうドロンガさんと会話していた事は気付かなかった。
夕方まで少し時間があったけど王宮に戻って部屋に行くと、父様がのんびりとお茶をしていた。
今日のお迎えはフィルノさんと、久々な第一魔導士団副団長エストラさん。王都に来る時以来ですね。
エストラさんが結構苦手な僕は、すすっとフリードリヒの影に隠れると瞳が細められた。うう…やっぱり苦手だぁ…。
たぶん僕が「面白いこと」を発見したから明日呼び出されるんだろうなー。ごめんて。
フリードリヒと一緒に馬車に乗って王宮へ戻る途中、すっとエストラさんが懐から何かを取り出した。なぁに? 緑色の石? ううん。風の…魔石?
掌に乗せられたのは風の魔石。ん? どうしたの?急に?
「…落ちた荷物を集めておりましたらこれが森の中に落ちていました」
「森の中?」
「はい」
「森…あ」
もしかしてそれ、アルシュに属性武器を作ってもらうために僕が作ってセレナの上から落とした魔石? エストラさんが拾ってくれてたの?
「たぶんそれ僕が落としたものです」
「…やはりそうでしたか。レイジス様」
「ふぁい?!」
エストラさんに名前を呼ばれてびくりと肩を震わせ、思わずフリードリヒの服を摘まむ。
「これを、私に譲っていただいてもよろしいでしょうか」
「ふえ?」
風魔法の魔石を? でもエストラさんならもっといいのが作れると思うけど。これ学園で売られてるクズ石だよ?
「クズ石がこれほどまでに力を持つことは無に等しい。ですが、これは今あるどの風の魔石よりも素晴らしいものです」
「は、はぁ…」
なんか褒められる? ちらりとフリードリヒを見れば「よかったな」と唇が動いた。あ、やっぱり褒められてたんだ。
「えと…それでよければどうぞ」
「ありがとうございます。レイジス様」
淡々と言葉を続けた後、頭を下げるエストラさん。なんか…高圧的って言うよりもただ話しベタな人っぽい?
そんなエストラさんに、苦笑いを浮かべているのはフィルノさん。ちょっと重い空気だったけど、王宮に着くとすぐにエストラさんが降りてドアを開けてくれた。
僕はフリードリヒの手を取ってゆっくりと馬車から降りるとエストラさんをちらりと見た。けどにこりともしない仮面のような表情にちょっとだけがっかりしながらフィルノさんとエストラさんとバイバイをしたのだった。
でもエストラさんのことが少しだけ分かってよかった。
「エストラ君と話をしたかい?」
「はい。ちょっと苦手だったんですけどなんていうか…話しベタなだけかなって」
「そうか。レイジスの中でエストラ君の印象が変わったのならいいことだ」
「?」
それってどういうことですか?と問おうとしたけど「さて、おやつが待ってるよ」という父様の言葉に僕は「わーい!」と両手を上げるのだった。
「ソルゾか。どうした。そんなに慌てて」
フリードリヒの膝の上に座ったままうさうさバッグの中にあった魔石で属性魔石を作っていた時だった。
肩を上下に揺らして顔色が悪いソルゾ先生と、その後ろにいる三人の魔導士さん達が警戒をするように周りを見ている。ん? どうしたの?
全員がきょとんとしながらソルゾ先生を見れば、誰も怪我をしていないことを確認している。え? え? なになに?
「高魔力を感じたので来てみたんですが…」
そう言ってからソルゾ先生が僕の手にある魔石を見て、ほっと息を吐いた。
「レイジス様が魔石をお作りなられていたんですね」
「あ、もしかしてこれが原因ですか?」
今作っていたのはフリードリヒとノア用の土魔法の魔石。やっぱり王都内で属性武器を作るのはまずいよね、と思い至り魔石でサポートをすることにしたんだ。
…というか高魔力ってなに?
首を傾げながらソルゾ先生を見れば「高魔力ってなんですかってお顔ですね」と苦笑いを浮かべる。あわ。先生まで僕の言いたいこと分っちゃうんですか?!なんて驚いていたら「レイジス様がお顔に出やすいんですよ」とノアが笑う。あ、もしかしてリーシャも僕の顔見て「こんな感じじゃないのかな?」って予測してるのか!
「高魔力とはそのまま、魔力が高まっている状態ですね。ここは王族専用ですから少しでも高い魔力が感知された場合、警備の者が来ることになっています」
「ふむふむ」
「今回は殿下とレイジス様がいらっしゃったので、警備の者が守りを強くし魔力の感知をあげていました。そこでレイジス様の魔石作りの魔力が反応したようですね」
「うん? 僕だけ? リーシャの水と火魔法は?」
「リーシャ君も使ったんですか?」
「うん。ちょっと動転して、レイジス様と殿下をずぶ濡れにしました」
あっけらかんとそう言うリーシャに驚いているのは魔導士の三人。まぁ、普通王子に気が動転していたとはいえずぶ濡れにするなんて考えられないからね。処罰位当然だろうし。
それに加え、王族の膝の上に乗って魔石を作ってる僕にも驚いてた。うん。ごめん。お腹に手が回ってて逃げられないんだ。
「でも魔石作りだけで高魔力を感知できるものなんですか?」
「先程も言いましたが、守りを強くしたのも原因です。ですがレイジス様の魔力は人よりもお強いんですよ」
「そう言えばハーミット先生が、僕の魔石はそのままでも属性が漏れ出すみたいなこと言ってましたよね?」
「はい。ですからレイジス様のお作りになられる魔石は、魔導士が軽く魔法を使っているのと同じなんです」
「はえー」
そうなんだ。だったらなんか悪いことをしちゃったなー…。ちらっと警戒してた魔導士さんを見れば、さっと視線を逸らされた。おふ。ちょっと悲しい。
「ところでなぜ魔石を?」
「えっとですね! もぐっ」
僕が話そうとした口をフリードリヒの手が塞ぐ。また?! もぐぐー!と口をもごもごさせるけどにっこりと笑うだけで説明もないからちょっと怖い。
「レイジスが面白いことを発見したようだからな。明日の朝にでも宮廷魔導士三人を集めておくように言っておく。ソルゾ、お前もだ」
僕に笑うよりもちょっとだけ悪い感じでニヤリと笑うフリードリヒの言葉に、ソルゾ先生の眉が寄った。
「三人…と言うことは第一魔導士団長、副団長。それに第二魔導士団長と言うことですか?」
「ああ。第二魔導士団副団長はお前だから伝えるには十分だろう?」
ほあ?! ソルゾ先生って第二魔導士団副団長さんだったの?!
ふぐっ?!という僕の声ににっこりと笑いながら「そうだぞ」と告げるフリードリヒ。ちょっと! そう言うことは早く言ってよー!
「…分かりました。ですが殿下たちはどうなされるのですか?」
「昼が済んだからこれからレイジスの頼んだものを取りに店に戻る」
「ふりーほりひれんふぁー」
おっと。戻るならほぼほぼ食べつくしちゃったけどおやつをソルゾ先生に渡したい! ご飯も一緒に食べてないから!
「ん? どうした?」
「ぷはっ! おやつをソルゾ先生に渡してもいいですか? 残り物になっちゃってますけど」
「ああ、なるほど。そこにナプキンがあるだろう? それに包んで…」
「それなら私が」
そう言ってくしゃっと丸めて置いてあった包みの中から、アルシュが布ナプキンを三枚取り出すと浄化魔法で綺麗にしてからクッキー、ブラウニー、ドーナツとそれぞれ分けて包んでいく。寮に戻ったらまた一緒にご飯とおやつ食べようね!
「ありがとうございます。アルシュ君、レイジス様」
「ううん。残り物でごめんね」
「いえいえ。侍女さん達のおやつは美味しいですからね」
そう言ってふふーと笑い合えば、魔導士さん達の瞳が丸くなってる。え? そんな驚くこと?
「では我々は先に門へ戻りますね」
「ああ」
では、とフリードリヒと僕に向かって頭を下げると、魔導士さん達も頭を下げて戻っていく。おやつを包んだナプキンを大切そうに持って。
その背中にバイバイをすると「さて」とフリードリヒが僕を見た。ん?どうかしました?
「お弁当箱と魔石を片付けて店に戻ろうか」
「あ、はーい!」
そっか。ソルゾ先生たちが先に戻ったのはうさうさバッグの事があるからか。と言うことはソルゾ先生もうさうさバッグについては何かしら知ってるのかー。
そういえば僕、フリードリヒの膝の上に乗ったままだった。あ、ちょっと恥ずかしいー!
見知らぬ人たちに子供みたいに座ってるところ見られてたんだよね?! ふおおおお…! 今になって恥ずかしさが襲ってくるー!
うぐぐと一通り恥ずかしくなってから気持ちを切り替える。フリードリヒに降ろしてもらってお弁当箱をうさうさバッグに吸い込ませようとしたら、皆が興味津々で覗き込んでくる。あ、分かるー! 絶対に入らない大きさだもんね!
布で包んだお弁当箱を限界まで口を開けたうさうさバッグへと近づけると、すーっと吸い込まれていく。そして半分まで吸い込んだところで「しゅぽん!」と勢いよく吸い込まれていった。それに「うわ! こわ!」と告げたのがリーシャ。「なかなか興味深いですね」とうさうさバッグの口を開いたり閉じたりしてるのがノア。「そうやって入っていたのか…」「不思議ですね」とのんびりしてるのがフリードリヒとアルシュ。
それぞれの反応を楽しんでから、敷物も浄化魔法で綺麗にしてうさうさバッグへと入れる。こっちは普通にはあるんだよね。お弁当箱は影も形もないけど。ホント、不思議なカバンだ。
ぽんぽんとうさうさバッグの頭を撫でてから、フリードリヒと手を繋ぐ。門を出たらノアにバトンタッチ。そういう約束だからね。
門を出るまでのんびりとフリードリヒと手を繋いで歩く。ゆっくり、手を離すのが惜しいからのんびり、と。
「おう! 頼まれてたもの、できてるぞ!」
「ホントですか?!」
わー!早ーい!「アレクトスが飯も食わず作ってたからな」と、がははと笑いながらドロンガさんがカウンターに頼んでおいたものを並べてくれた。
そこにはガラスでできた六角柱が10本と万華鏡が3本。
「わー! アレクトス君すごい!」
「今、飯を食わせに行ってるんでいないけどな」
「そっか…。手にしてみても?」
「ああ」
ちゃり、とチェーンが付けられた透明なガラスでできたそれを手にすると「あれ?」とその違和感に気付いた。
ん? んんー? んん?
首を傾げながら六角柱のガラスをくるくると回しながら感触を確かめる。
「なんか注文と違ったか?」
「いえ…なんていうかこれガラスって言うよりも…クリスタルに近い感じが…?」
「クリスタル? 本当か?」
「はい」
「見ても?」
「? はい。どうぞ?」
ドロンガさんがちょっと焦りながら「では失礼して」と浄化魔法で手を綺麗にして布でそれを手にし、僕と同じようにくるくると回して確かめてる。
「本当だ…。これはガラスよりもクリスタルに近いな」
「あれ? ドロンガさんは気付かなかったんですか?」
「アレクトスに「レジィのものだから触るな」と言われちまって触らせてくれなかったんだ」
「ああ…これは。ほほう?」
顎に手を乗せてにまにまとしてるリーシャに首を傾げてからドロンガさんに「どうしましょう?」と相談してみる。
「どうと言われてもな…。こんなのは初めてなわけだし…」
「レジィ。これは天然の物と遜色ないのか?」
「はい。素人目ですがこれはクリスタルでほぼ間違いないかと」
「店主は?」
「間違いねぇな。これはクリスタルだ。俺が保証してやる」
と、いうことはアレクトス君は土魔法で本物の鉱石を作りだしたのか。すごいなー!
けどこれで魔法から宝石が作り出せることが証明されちゃった訳で。
「ふむ。ならばこれはここだけの話にしてもらいたい」
「? ああ。構わんが…。あんたは?」
「む。失礼した。ノアの友人のセイランと言う」
にっこりと笑ってそう言うフリードリヒにアルシュとノアがちょっと苦笑いしてる。
まぁお忍び、だからね。
「じゃあこのことは王宮に話を付けとくよ。まさか魔法で宝石と変わらない物ができちゃったわけだし」
「ああ。頼んだぜ、リーシャ。報告したらあいつ…アレクトスに監視とかつかないよな?」
「平気じゃない? 何かしら制限はかかると思うけど、レジィ以外は頼んでも作ってくれそうもなさそうだし大丈夫だって。ねぇ? セイラン?」
「レジィ以外、というのが引っかかるが平気だろう」
「そうか…。ならよかった。あいつは腕を磨いて将来装飾店を開いて、教会にいる孤児たちに美味いもんを腹一杯食わせるって言うのが夢なんだよ」
ほわぁ…。アレクトス君ってほんっといい子だなぁ…。よし! 陛下に言って僕の氷の魔石の売り上げの半分を国内の教会へと寄付しよう。そのうち氷の魔石の価値がなくなるから今のうちにたくさん寄付するぞ!
ふんす、と気合を入れていると「レジィの言いたいことがなんとなくわかる」とリーシャに突っ込まれる。それにうんうんと頷くアルシュとノア。良いもん! 悪いことじゃないから!
「あ、そうだ! アクセサリーの方はクリスタルの値段でお願いします」
「いやいや。こっちが勝手にそう作っちまったんだ。ガラスの値段でいいよ」
「だーめーでーすー! アレクトス君にも言いましたけど職人さんにお金を払わないのは失礼なんです!」
「…うさぎの嬢ちゃんは嬉しいこと言ってくれるねぇ。職人、か」
「はい! アレクトス君はもう立派な職人さんですから!」
むふん、と胸を張れば「そうか。なら万華鏡の方は無料で構わん。だがクリスタルの方は少々値が張るぞ」とドロンガさんがにやりと笑う。
その笑みに持ってるお小遣いで大丈夫かな?なんてちょっと不安になるけど「構いません!」と言えばお小遣いで十分に買えてほっとした。でも残ったのは半分くらい。
「あ。そうだ」
ドロンガさんが1つ1つ革の袋に丁寧に入れてくれたそれをフリードリヒ、アルシュ、ノア、リーシャにやや強引に手渡す。
「レジィ? これは?」
「街まで付き合ってもらったお礼です!」
えへっと照れ隠しにそう笑えば、全員の目が見開いた。
「お礼…」
「はい! 制服の胸の辺りに付けられるようにしてもらったのでペンダントでも胸飾りでもできるようになってます」
いつも着てる制服もそうだけど、もう一つの制服を着てる皆を見て作りたくなっちゃったんだよね。
騎士科のフリードリヒとアルシュとノアはちょっと邪魔かもしれないけど。リーシャは大丈夫だろうからちょと長めにしてある。
するとフリードリヒが近付いてきてぎゅうと抱き締められた。ほわ?!
「ありがとう。レジィ」
「は、はばばばば!」
まさか抱き締められるとは思ってみなかったからビックリよりも羞恥が勝る。だってすぐ近くにドロンガさんがいるんだもん!
「ノア…とかいったか?」
「はい」
「嬢ちゃんを取られたな」
「いいんですよ。あの二人はそういう仲ですから」
「は?!」
「それに。私はあの子の『兄』ですからね」
「そうか…。寂しくなるな」
「……………。そうですね」
僕がフリードリヒに抱き締められてはわはわしている間に、ノアが少し寂しそうにそうドロンガさんと会話していた事は気付かなかった。
夕方まで少し時間があったけど王宮に戻って部屋に行くと、父様がのんびりとお茶をしていた。
今日のお迎えはフィルノさんと、久々な第一魔導士団副団長エストラさん。王都に来る時以来ですね。
エストラさんが結構苦手な僕は、すすっとフリードリヒの影に隠れると瞳が細められた。うう…やっぱり苦手だぁ…。
たぶん僕が「面白いこと」を発見したから明日呼び出されるんだろうなー。ごめんて。
フリードリヒと一緒に馬車に乗って王宮へ戻る途中、すっとエストラさんが懐から何かを取り出した。なぁに? 緑色の石? ううん。風の…魔石?
掌に乗せられたのは風の魔石。ん? どうしたの?急に?
「…落ちた荷物を集めておりましたらこれが森の中に落ちていました」
「森の中?」
「はい」
「森…あ」
もしかしてそれ、アルシュに属性武器を作ってもらうために僕が作ってセレナの上から落とした魔石? エストラさんが拾ってくれてたの?
「たぶんそれ僕が落としたものです」
「…やはりそうでしたか。レイジス様」
「ふぁい?!」
エストラさんに名前を呼ばれてびくりと肩を震わせ、思わずフリードリヒの服を摘まむ。
「これを、私に譲っていただいてもよろしいでしょうか」
「ふえ?」
風魔法の魔石を? でもエストラさんならもっといいのが作れると思うけど。これ学園で売られてるクズ石だよ?
「クズ石がこれほどまでに力を持つことは無に等しい。ですが、これは今あるどの風の魔石よりも素晴らしいものです」
「は、はぁ…」
なんか褒められる? ちらりとフリードリヒを見れば「よかったな」と唇が動いた。あ、やっぱり褒められてたんだ。
「えと…それでよければどうぞ」
「ありがとうございます。レイジス様」
淡々と言葉を続けた後、頭を下げるエストラさん。なんか…高圧的って言うよりもただ話しベタな人っぽい?
そんなエストラさんに、苦笑いを浮かべているのはフィルノさん。ちょっと重い空気だったけど、王宮に着くとすぐにエストラさんが降りてドアを開けてくれた。
僕はフリードリヒの手を取ってゆっくりと馬車から降りるとエストラさんをちらりと見た。けどにこりともしない仮面のような表情にちょっとだけがっかりしながらフィルノさんとエストラさんとバイバイをしたのだった。
でもエストラさんのことが少しだけ分かってよかった。
「エストラ君と話をしたかい?」
「はい。ちょっと苦手だったんですけどなんていうか…話しベタなだけかなって」
「そうか。レイジスの中でエストラ君の印象が変わったのならいいことだ」
「?」
それってどういうことですか?と問おうとしたけど「さて、おやつが待ってるよ」という父様の言葉に僕は「わーい!」と両手を上げるのだった。
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せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
表紙は自作です(笑)
もっちもっちとセゥスです!(笑)
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます
日色
BL
「ぼく、あくやくれいそくだ」弟の誕生と同時に前世を思い出した七海は、悪役令息キルナ=フェルライトに転生していた。闇と水という典型的な悪役属性な上、肝心の魔力はほぼゼロに近い。雑魚キャラで死亡フラグ立ちまくりの中、なぜか第一王子に溺愛され!?
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
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