悪役令息に転生したのでそのまま悪役令息でいこうと思います

マンゴー山田

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海編

僕は男だからいいでしょー!

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「フリードリヒ殿下!フリードリヒ殿下!  海! 海で遊びたいです!」

ふんすー!とフリードリヒにそう言えば、カップ片手ににこりと笑う。うん。キラキラな笑顔だ! ほわー!とキラキラな笑顔の眩しさに顔を隠せば「海で遊ぶ…とは?」とアルシュが首を傾げている。
うん? ここの人たちって海で遊ばないの?

「えっとね。ビーチバレーしたりー、海で泳いだり!」
「びーち…ばれー?」
「おん?」

あれれ?
フリードリヒが首を傾けると、僕も一緒に首を傾ける。

「あれ? もしかしてバレーボールって知りませんか?」
「いや? 初めて聞く言葉だが…」
「あばば」

しまった! そうだよね! 中世ヨーロッパ風だもんね! 知らなくて当然か!
どどどどどうしよう!

あわわと一人焦っていると「それでその…ばれーぼーる、とやらはどのようにして遊ぶのですか?」とノアがにこにこしながら聞いてくる。ほわわー! ありがとー!ノア! 拾ってくれて!

「えっとね、えっとね。6人でポジションを決めて、ボールを落とさずに3回以内でボールを相手のコートに返すんです!」
「ふむ? なるほど?」
「ですが6人だと数が揃いませんね」
「ビーチバレーだと2人でいけるよ!」

ふんふんと鼻息荒くそう伝えてもなんだか乗り気じゃないフリードリヒ達。ううーん…貴族様がボール遊びとかしないかぁ。残念。
しょもん、と肩を落として「いいんです。ボール遊びとか子供っぽいですよね」と言えば「そんなことないぞ!」とフリードリヒがガッと僕の肩を掴む。おおおお?!

「レイジスは子供の頃、ほとんど遊べなかっただろう?」
「うん…」

子供のころは毎日ベッドで寝てたから遊びなんてものは殆どしたことがない。外で元気に駆け回っている子達を見ては羨ましがってたんだよね。
なんで僕は遊べないんだろう、って。

「ボール遊びは危ないからね。他のことをしよう?」
「ううーん…」

ね?と優しく言われると「嫌だ」とは言えない訳で。それにリーシャがいないから僕たちだけで遊ぶのもね。
朝、リーシャの姿がなくてフリードリヒに泣きつけば「リーシャはソルゾ先生とお話があるから午前中はいないんだよ」って頭を撫でられながらフリードリヒに教えてもらった。
それにほっとしたけどなんだかつまんなくて。ハーミット先生が「俺だけじゃ不安か?」と笑いながら言うから「そんなことないですよー!」と抱き付けば、わしわしと大きな手で頭を撫でてくれた。それにうふふー、と笑えば「レイジス。膝の上に乗ろうか」と両手を広げて必死に僕を呼ぶフリードリヒに笑うと、ぴゃーとフリードリヒに向かって走っていく。
それに「走ると転びますよ!」とアルシュが言うけど「部屋の中だし平気だよー!」と言った直後にテーブルの足に蹴躓き、フリードリヒに抱き留めてもらった。

「えへへー」
「レイジス」
「ごめんなさい」

こつん、と額に額をぶつけられて「めっ」と叱られてそれでおしまい。
甘いと思うでしょ? 僕もそう思うよ。でも今度からは気を付けよう、ってなるから不思議だよね。

「じゃあ海で泳ぐのは?」
「泳ぐって…レイジスは泳げるのかい?」
「たぶん?」

立ったまま、むいむいとほっぺを揉まれながらそう言えば「泳ぐ?」とこれまた首を傾げるアルシュ。

「でも何のために泳ぐんですか?」
「あれ? アルシュ知らない?」
「?」
「海…っていうか水の中で泳ぐと体力つくんだよ?」
「そうなんですか?」

へぇ、と瞳が輝いたアルシュにえへへと笑うと、今度はハーミット先生がどういうことだ?って聞いてくる。

「えっとですねー」
「その前に座って話そうか。レイジス、お腹は?」
「ふえ? そう言われればちょっと空いたかも、です」

朝ご飯はちゃんと食べたんだけどねー。ぐうと鳴った僕のお腹に「ではおやつにしましょうか」というノアの一言でおやつに入る。
ううーん。だいぶよくなったとはいえ、まだまだ燃費が悪いなぁ。

「レイジスはここ」
「んむー」

そう言ってぽんぽん、と膝の上を叩くフリードリヒにむぬぬと何とも言い難い表情をすれば「嫌かい?」と眉が下がる。
ぐぅ! その顔はズルい!

「乗りますー!」

きゃほー!とフリードリヒの膝の上に乗れば、アルシュとノア、ハーミット先生がそれぞれソファに座る。
すると侍女さんがお茶とおやつの準備をしてくれる。今日のおやつはなんだっろなー!
くふくふと一人笑いながら身体を揺らしていると、しょわっと皆が浄化魔法を使っているのを見て僕も光魔法を使う。すると部屋全体が浄化され、爽やかな空気に変わった。うむむ。これも、もうちょっと制御しないと…と思ってたけどハーミット先生が「助かります」と笑う。

「そう言えばハーミット先生って浄化魔法は使えないんですか?」
「あー…無理だな」
「浄化魔法もダメなのかー…」

そう。ハーミット先生は魔力はあるけれど属性を何一つ持たないという特殊な体質の持ち主なのだ。
それを聞いた時は驚いたけど、でも先生は気にしていないようで「すごいだろ?」と笑っていた。だから先生は魔石が手放せないんだって。だから今は僕がプレゼントしたクリスタルにこっそり火・水・風・土、それと雷の魔法を仕込んである。
先生にばれた時すっごい怒られたけど「ありがとうございます」って言われたから僕も「勝手に魔法を突っ込んでごめんなさい」って謝った。
そんなことがあったから光魔法が魔石にできるように頑張らないとね!
ふん!と両手で拳を作って気合を入れれば、フリードリヒにくすりと笑われた。
あ、これおやつを一杯食べるぞって思われてる。別にいいけどね!おやつ一杯食べる気満々だし!

「おやつだぞ。レイジス」
「わーい!」

お茶と共に出されたおやつのフロランタン。それにもう一つ、キャラメルナッツタルト。わほーい! やったー!
僕は当たり前のようにホールで出されるけどね! むふーと身体を揺らしていると「危ないよ?」とフリードリヒに注意される。
ごめんなさい。テンションが上がりまくりでした。
しょん、と反省すると目の前にフォークに刺さったタルトが現れた。ほわ?

「はい。レイジス。あーん」
「あーん」

フリードリヒに言われるがままぱかりと口を開ければそこにタルトを入れられ、もぐもぐと咀嚼する。

「ふままー」
「よかったな。レイジス」
「はいー」

うふふ、と幸せな気分を味わっていると侍女さんが急にばたばたし始めた。おろ?
なんだろう?と首を傾げていると「フリードリヒ殿下にまずは確認を…!」という声が聞こえてくる。んん? なんだなんだ?

「フリードリヒなら断らないだろうからな。失礼するよ」
「お、お待ち下さい! ガラムヘルツ殿下!」

侍女さんが止めているけど、他国の王子が来たのなら制止なんか聞かないよねー。ってえええええええ?!

「やあ、おはよう。フリードリヒ」
「………………」

爽やかに笑うガラムヘルツ殿下だけどここ僕の部屋だよね?
あー、ほらー。アルシュとノアが固まってるー!

「おや。レイジスは膝の上か。私の膝の上にも乗らないかい?」
「あー…それはさすがにちょっと…」

っていうか他国の王子様の膝の上に乗るってどうなんだろう? そもそも膝の上のお誘いとか聞いたことないんだけど。
するとアルシュとノアがハッと、我に返ったようで慌てて立ち上がろうとするのをガラムヘルツ殿下が手で止める。おお?

「そのままで結構」
「…なんの御用ですか?」
「そう邪険にするな。私とて家族だんらんに水を差されたようなものなのだから」

そう言ってガラムヘルツ殿下の後ろからひょこっと顔を出したのはまた知らない人。でもフリードリヒの膝の上に乗ってるから怖くはない。
だぁれ?
首を傾げてその人を見れば、その人も僕を見つめている。ほわ?

「初めまして、レイジス。私はシュルスタイン。シュルスタイン・ストラウム」
「はぁ…どうも?」

褐色の肌に燃えるようなフェニックスレッドの髪、それにナイルグリーンの瞳は宝石みたいで綺麗。
ほへぇと口を開けて見ていたのか、そっとフリードリヒが下あごを持ち上げてくれる。おわ。ありがとうございます。

というかなんで僕だけに挨拶?

「シュルスタインはストラウム帝国の皇子だ」
「ほぁ?!」

ばびょっと後ろ髪が逆立ち、なんならアホ毛様もピーン!と立っている。
あばばば。なんでまたそんな偉い人が…。

「レイジスは人慣れしていないからな」
「…分かっている」
「それで、なんの用だ」

不機嫌な声を隠しもしないでそう言うフリードリヒに「ほわ」と声を出せば「ああ、ごめんね」と微笑まれる。うん。冷たい感じのフリードリヒもきゅんってする。
じゃなくて。

「今朝、私のところにが届いてな」
「朝?」
「ああ。おかげで寝不足だ」
「お前はいつもそうだろう」

んん? なんか仲良さげ? でもガラムヘルツ殿下の持つあれって…?

「それってもしかしてグレープフルーツですか?」
「知っているのか?」
「あ、いえ。そんな感じかなって」

黄色い玉を遠目から見たものだからね。それに何となくシュルスタイン皇子の容姿から暑いところになるものかなって予想しただけ。
というかアルシュもノアもハーミット先生も黙ってるからすっごい静か。

「ではこれを近くで…っと、近付いても?」
「あ、はい。大丈夫です。フリードリヒ殿下がいてくれるので」

にぱーと笑いながら言えば「…そうか」と瞳が細くなる。ひょわ?! 怖い!
思わずフリードリヒに抱き付けば「大丈夫だからね」と頭を撫でてくれる。ふわわー。

「こらこら。怖がらせてどうする」
「…お前も怖がらせただろうが」
「それはそれだ!」

じと、と半眼でシュルスタイン皇子に睨まれても動じないガラムヘルツ殿下はマジすごい。僕はびくびくしてるのに。

「レイジス、大丈夫かい?」
「は、はひ。大丈夫れす」
「全然大丈夫じゃないな」
「ハーミット。今は気を付けろ」
「はいはい。申し訳ございません」
「…ハーミット?」

いつものように話しかけてくれたハーミット先生にぴくりと反応したのは王子2人。ひええええ! 怖いよぉ!
ぎゅううとフリードリヒにしがみついてぷるぷるしていると「ごめんよ! レイジス!」とガラムヘルツ殿下が慌てている。やっぱりまだ知らない人が怖いのはしょうがないのかな?

そういえばいつからだろう?
知らない人が怖くなったのは。

ふとそんなことを考えれば、すっと額に手が乗せられる。

「レイジス、大丈夫かい?」
「あ、はい。大丈夫です」
「少し熱いか?」
「ぜ、ぜぜん大丈夫れす!」

ぶぶぶと首を高速で左右に動かせば、当然頭がくらりとするわけで。

「ほへぇ…」
「ああ、ほら。無理はしない」
「しゅみませぇん…」

ぽしゃっとフリードリヒに凭れかかって、頭を撫でてもらうと自然と頬がゆるゆるになっちゃう。むふふー。

「申し訳ないがあまり騒がれるなら出ていってもらえるか?」
「…悪かった」

ぐっと言葉を飲み込んだようなシュルスタイン皇子。んー。でもあれ気になるよねー。
もうちょっとフリードリヒの頭なでなでを味わってからシュルスタイン皇子に聞いてみよう。むふむふと一人笑えば「レイジス?」と怪しまれてしまった。あばば。

「ん。も、だいじょぶです」
「そうか。体調がよくなかったら言うんだよ?」
「はい!」

えへーとフリードリヒに笑ってから、シュルスタイン皇子に視線を向ければ小さな声で「大丈夫か?」と聞いてくる。ふふっ。大きな声でも大丈夫ですよー。

「すみません。驚いちゃった…えと驚いて」
「ああ。口調は崩したままでいい」
「え。でも…」
「私が構わないのだ」

そう言われて、フリードリヒをちらりと見れば「いいよ」と瞬き一つ。それに頷くと「分かりました」と言えば、むっとした表情に変わる。おおう?

「もう少し砕けてもいいのだが」
「いえ。流石にそこまでは…」

というか他国の皇子さまぞ?
出会ったばっかで、砕けた口調で話していいなんて言われても困るんですよー。もうちょっと…そうだな、あと三ヶ月くらいしたら普通に話せると思うんですよ。

「まぁいい。それで、これがなんだったか。ぐれーぷふるーつ?と言うものなのか?」
「もうちょっと近くで見ないと分りませんけど…」
「ふむ。なら近付いても?」
「フリードリヒ殿下と一緒なので大丈夫です」
「分かった」

そう言ってそのまま近付いてくるシュルスタイン皇子。するとふわりと漂う香りにすん、と鼻を鳴らせば「レイジス?」とフリードリヒに呼ばれる。

「ん。いい匂い」
「匂うか? 消したつもりなのだが」
「いえ。僕は好きですよ。この匂い」

すんすんと失礼も承知で鼻を動かせば「…可愛いな」とシュルスタイン皇子から声が漏れた。可愛い? 匂い嗅いでるのに?
おっと。そうだよ。匂い嗅いでる場合じゃないよ。

「あ、すみません。それ貸していただいても?」
「ああ」
「ありがとうございます」

シュルスタイン皇子から黄色い玉を両手で受け取って、それを鼻の近くに持っていき、すんすんと鼻を動かせば柑橘の爽やかな香りが鼻孔を擽る。はわわ~。いい匂い~。

「うん。やっぱりこれ、グレープフルーツですね」
「そうか。昨日の夜突然生えてな」
「突然生えた?」
「ああ。そうらしい」
「それで慌ててここに来たって訳だ」
「なんでここに?」

ガラムヘルツ殿下の言葉にかくかくと首を動かせば「レイジスがいるからね」と、ばちこんとウインクをされた。
なんで僕がここにいることがばれてるんだろう? というか僕がこういうものを知っているってガラムヘルツ殿下もシュルスタイン皇子も知ってる?
ぎゅう、とフリードリヒの服を強く掴むと「レイジス?」と背中を撫でてくれる。

「ああ。レイジスは本をよく読んでいるから知っているかもしれない、と思ってな」
「……………」

そう笑うシュルスタイン皇子をじぃっと見つめると「そう警戒しないでくれ」と苦笑いを浮かべる。
持っていたグレープフルーツを渡して、ささっとフリードリヒの隣に隠れるように避難をすると「嫌われたか」としょんぼりと肩を落とすシュルスタイン皇子。

「そう言えばグレープフルーツと言う名はレイジスの瞳にもついているね」
「ほへ?」
「そうなのか?」
「ああ、そうですね。僕の瞳の色はグレープフルーツ・グリーンですから」
「ほうほう。なるほど」

それににまりと笑ったのはガラムヘルツ殿下。おおん?

「でも…」
「うん?」
「これ食べるときなんだか僕の目を抉りだして食てるような気になりますよね」
「…………………」

なんとなく放った言葉がその場にいた全員を固まらせるには十分で。

「…うん。食べるのはやめようか」
「え? なんでですか? 美味しいですよ?」
「レイジスの瞳を抉り…」
「やめろ。ヴール。考えるな」

グレープフルーツを持ってカタカタと震えているシュルスタイン皇子の肩を優しく叩くガラムヘルツ殿下を見てからアルシュとノア、ハーミット先生を見れば「レイジス様らしい」と苦笑いを浮かべていて。
それに首を傾げると「レイジスはレイジスのままでいいんだよ」とフリードリヒに頭を撫でられた。うふふー。

その後グレープフルーツを使ってゼリーにしようと思ったけど一個だけだと作れないから困ってたらシュルスタイン皇子が「これなら一応木箱一杯持ってきた」としれっと言われた。
ならそれを使ってゼリーを作ろうと持ってきてもらうことにしたんだけど。

「お前たちも食べるのか?」
「もちろん」
「あ。なら皮も使っておいしいもの作りましょう!」
「「皮?」」

フリードリヒとガラムヘルツ殿下の声が重なって、ふはっと笑えば「皮って…あの皮ですか?」とハーミット先生が聞いてくるから「そうだよ」って返すと何とも言えない表情を浮かべる。ふはっ。

「普通皮は捨てちゃうんだけどね。手を加えれば立派なお菓子になるんだよー」
「それは…」

ハーミット先生は平民だからこういうことは知ってそうだったけど、料理に情熱を注がないこの世界だと知らなかったみたいだ。
なら美味しいの作らないとね!
ふんすと気合を入れれば、侍女さん達の背筋もぴしりと伸びる。新しいおやつだからね! 気合も入るよね!

そんなこんなでシュルスタイン皇子が僕の部屋にグレープフルーツが入った木箱を持ってきてくれて、その中身を見ようとしてフリードリヒに止められた。
木箱からグレープフルーツを取りだしてくれる騎士さん…でいいのかな? 騎士さんが一つ一つ検分してから籠に乗せてくれる。そうそう! 竹籠! 竹籠があったんだよ! だから迷わず購入したんだ。
まさか竹があるとは思わなかったよー。
それからどんどん重くなるそれをアルシュが支えてくれて、最終的にはハーミット先生がキッチンへと運んでいった。…非力だからね。僕。

光魔法でしょわっと全部浄化してから、侍女さん達と一緒にグレープフルーツを切って包丁で身だけをくり抜いてもらう。皮は器として使うからね! ピールも作るけど。歴戦の侍女さん達がちゃちゃっとやってくれるから僕は見ているだけ。
そのうち果物ナイフ使わせてもらえるかな? なんて思いながらゼリーを作ってからタルトも作る。ちょっとだけ暑くなってきたから、こういったさっぱりしたの美味しんだよねー。
シュルスタイン皇子に言って木箱も貰ってそこに氷の魔石を入れておく。こうするといい感じに冷気が逃げて冷蔵庫っぽくなるんだ。冷凍庫はもうちょっと考える。
作ったそれらを光魔法で綺麗にした木箱の中に入れてあとは放置。固まるまで時間がかかるから僕はこれでお役目ごめん。
キッチンから部屋に戻ればそこにはもう1人増えてて驚いた。

「ルスーツさん?!」
「ごきげんよう。レイジス君」

うふふと笑いながらソファに座っているルスーツさん。ほあ?!と驚けば「あらあら、今日も可愛い格好してるわね」とほんわかしている。
あ、はい。今日はセーラー服っぽいの着てます。水兵さんの格好なんだけどこっちの世界では違うみたい。もちろん長袖。でも今日はなんとハーフパンツっぽいのを履いているのだ! やっふー! でもサスペンダーしてるんだよ。なんで。
この歳で膝小僧出すのは恥かしいんだけど、暑いからね。
外に出るときは帽子も用意されてるし、髪も結ぶんだって。

「やっぱりうちの子にならない?」
「いえ…それはちょっと」
「ダメ? エメエラのお姉ちゃんになってくれると嬉しいのだけれど」
「ルスーツ様」

はぅ、と頬に手を当てて憂い気味にそう言われるけど、僕はユアソーン家の人間ですからね。それにフリードリヒの婚約者でもあるので。
っていうかあの子エメエラちゃんって言うのか。可愛い名前だ。

「そう言えば今日はお出かけにはなりませんの?」
「リーシャとソルゾが昼からしか合流できませんので、午後から出かけます」
「なら私も同行しよう」
「あら。なら私たちも同行しましょうか」
「ふむ。それはいい案だ」

え? 皇子様たちも来るんですか? というか護衛が大変なことになりません? 現にウィンシュタインとハガルマルティアの騎士さんがいるんだけど…。そこにストラウムの騎士さん達も合流でしょ? 偉い人がいますよって宣伝してるようにしか見えないんだけど。大丈夫なの?

「なら護衛は三人ほどにするか。君たちは今回護衛はなし。うちに任せればいい」
「私のところも三人ほどにするか」

僕たちを置いてちゃかちゃかと決まったんだけどいいのかなぁ? それにアルシュもノアも困惑が隠しきれないよね。ハーミット先生は僕たちの保護者枠に入るんだろうけど。

「レイジス君はどこか行きたいところはあるのかしら?」
「僕、ですか?」

ルスーツさんにそう問われぱちりと瞬きをすると「ええ」とにっこりと微笑む。うーん…行きたいところ、行きたいところ…。
あ! そうだ!

「海で泳ぎたいです!」
「泳ぐって…どういう?」
「え? 水着でばしゃばしゃしたいです!」
「水着?」

おろろ? やっぱりルスーツさんも海に関しての知識がさっぱりっぽいなー。皆王族だからかな?

「水着って言うのは水に濡れても平気な服…じゃないか、下着みたいなもので…」
「下着?!」
「食い付くところはそこか。ガラムヘルツ」
「あ、あああああ当たり前だろう?!」
「レイジス。その…水着と言うものを着なければならないのかい?」
「? 服着て泳いだら溺れますよ? むしろ溺れにいくようなものですし」
「ええと…それで?」

なぜかみんなが動揺しているけど、ルスーツさんが話を進めてって言ってくれるから首を傾げながら話しを進めることにする。

「服を脱いで水着一枚で海に入るんです!」
「「「「却下!」」」」」
「ふえぇぇぇぇぇ!」

四人の声が綺麗に重なり僕涙目。なんでー! いいじゃんかー!

「いいじゃないですかー! 僕男ですよー!」
「そうじゃない! レイジスの肌を他人に見せろというのか?!」
「そうだぞ! レイジス! 肌をどこの誰とも分からないやつに見せるのはお父さん許しません!」
「男とか女とか関係ない! 肌をむやみやたらと晒すのはダメだというのだ!」
「そうよレイジス君! こんな綺麗な肌を早々見せてはダメよ!」

…………ガラムヘルツ殿下からとんでもない言葉が聞こえたような気がするけど気のせいだよね?
でもなんでダメなんだよー! 男だから関係ないじゃないー!

「やーだー! 海で遊びたい―!」
「「「「ダメ!です!」」」」」
「びええええええええん!」

王族たちにダメだと言われればどうすることもできなくて。びええええ!とアルシュに泣きつけば「アルシュ! ズルいぞ!」とフリードリヒが叫ぶ。それにガラムヘルツ殿下とシュルスタイン皇子、さらにルスーツさんが加わってわいわいと大騒ぎするのだった。


後に戻ってきたリーシャはこの様子を見てこう言った。

「ここは地獄ですか?」

と。


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