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演劇部の羞恥の特訓

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 中学校に入学して、私は演劇部に入りました。
 演劇部には、ちえみさんという美人でスタイルが良くて、それに演技も上手で、演劇部員じゃなくても女子なら誰もが憧れるような部長の先輩がいました。

 そのちえみ先輩に、私は入部したての頃から目をかけてもらいました。
 私は背も低くてやせっぽちで、メガネをかけていて、よくいう地味っ子です。なのに、先輩は定期的にある発表会で、私に結構良い役を当てて下さったのです。

「あんりちゃん(私のことです)は自分では気づいてないみたいだけど、声がきれいでよく通るし、何より演技に入ったら役になりきるし、才能あるよ」
 憧れの先輩にそんな言葉をかけていただき、私は涙が出るほどうれしかったです。

 でも、人に認めてもらうということは、その分耐えなければならないこともあるのだと、私は後に教えられることになりました。

 五月の連休を過ぎたある日、私は全体練習の途中、ちえみ先輩に呼ばれて部室に連れて行かれました。そこには部長のちえみ先輩だけでなく、副部長と二年生のリーダー(来年部長になる予定の先輩です)の三人が椅子に座っていました。三人とも真剣な表情でしたから、とても緊張しました。

「四月からずっと三人で話してたんだけど、今の一年生の代は、あんりちゃんに部長をやってもらうことに決めたから」
 ちえみ先輩にそう言われて、喜ぶよりも先に頭が真っ白になりました。
「あの……わたしで、いいんですか?」
「前も言ったじゃない。あなたほど声が通って、役になりきれる子はいないって」
 副部長の先輩から叱るように言われて、私は「ハイ」と返事するしかありませんでした。
 すると、ちえみ先輩が妙なことを言
い出したのです。
「でも部長としてやっていくには、腹式呼吸とか完璧にして、それからもっと堂々とできるようにならなくちゃいけないから。あんりちゃん、そのためにしばらく、あたし達が特訓するからね」
 そう言って、ちえみ先輩は「上着と靴下脱ごうか」と告げたのです。
 私はますます混乱して、先輩の言葉をオウム返しするしかできませんでした。
「え……脱ぐって」
「腹式呼吸をちゃんとチェックするには、胸とおなか、それに足の動きとかも見ないといけないから」
「それにハダカだと緊張するでしょ?」
 副部長の先輩が続けました。
「ハダカで発声練習する緊張感に慣れておけば、練習や本番の演技なんてなんでもなくなるから」
「は、はい……」
 私は涙目でしたが、体操服のシャツに手をかけました。すると、またちえみ先輩が付け加えました。「あんりちゃん、勘違いしないでね。あたし達は、あなたに意地悪したくて、こんなことしてるんじゃないから」
「あ、はい。それは……」
「でも、もしあたし達の言うことが信じられないんだったら、無理してこの特訓受けなくていいよ。いくら女同士でも、ハダカになるなんてヤだもんね。どうするか、自分で決めなさい」
 憧れの先輩にここまで言われて、断れる子なんていないと思います。
「……分かりました。特訓、受けさせてください」

 それから私はシャツとジュニアブラ、靴下を脱いで上半身裸に素足、短パン一枚だけの姿になり、発声練習の特訓を受けることになりました。
 やっぱり胸を見られて恥ずかしいので、最初は声がなかなかうまく出せませんでしたが、先輩達はそこは「最初は仕方ないよ」と優しく言ってくれました。
 ただしばらくすると、おっぱいやおなかの動きを細かく見られて、胸式呼吸になっているとか、足の向きがずれているから姿勢が悪いとか、何度も厳しい指摘をされました。その度に泣きそうになってしまいましたが、「これぐらい耐えられないようじゃ部長は任せられないからね」と突き放され、涙をこらえるしかありませんでした。

 特訓中は厳しい分、休憩時間はいつもの優しい先輩達に戻ってくれました。ただし羞恥心を克服するため、休憩中も上半身裸のままでしたが。それでも「よくがんばってるね」「だんだん呼吸の形ができてきたよ」と褒めてもらえると、うれしくなってきました。

 また部活以外の時間にも、部長としてやっていく力量を身に着けるため、もう一つ試練を言い渡されてしまいました。

「体育の時はブラとパンツ、表彰とかで全校生徒の前に出る時は、キャミも含めて下着は禁止ね」
 特訓の時はまだ先輩達の前だけだったので耐えられましたが、体育と全校集会の時は恥ずかしくてたまりませんでした。
 まだ体育の時は、シャツの下にキャミソール、下は短パンを履いているのでなんとか我慢できたのですが、全校集会の時は素肌の上からセーラー服とスカートを着なきゃいけないので、どうしても落ち着けませんでした。特に雨の日は乳房や乳首がうっすら透けてしまうこともありましたし、風が強いとスカートがめくれてしまったら大変でしたから、気が気じゃなかったです。

 わたしは絵と作文が得意で、全校集会では度々前に出て表彰されていました。その時制服の下は下着なしですから、賞状や賞品をもらって喜ぶどころじゃありませんでした。

 そのうえ、全校集会の日は一日中、下着を身に着けることは許されませんでした。そしてその日の特訓は、残りの制服や靴下も脱いで、全裸でさせられるようになりました。

 全裸にされると、いつもよりも羞恥心が強くなります。この頃おっぱいはお椀くらいには膨らんでいて、寒さと緊張で乳首が立ってしまいました。下のヘアも薄く生え始めていて、恥ずかしいところが丸見えです。動揺で着衣の時はできていた発声や腹式呼吸も乱れてしまい、先輩から何度もきつく叱られました。
「こんな基本もできないでどうするの!」
「部長が緊張してしまったら、ほかの子たちまで演技できなくなっちゃうんだよ!」
 私は「すみません、すみません」と泣きながら頭を下げるしかありませんでした。でも、先輩達は厳しく言うだけ私に期待してくれているんだと自分に言い聞かせて、なんとか耐えることができました。

 やがて、ちえみ先輩が引退する頃には、練習はもちろん本番での演技で緊張することはなくなっていました。また腹式呼吸の仕方も、プロの劇団員の方に褒めていただけるほど上達することができました。
 ちゃんと特訓の成果はあったのです。すごく恥ずかしくて辛かったですが、今では先輩達に感謝しています。


 そして今……私は三年生になりました。
 ちょうど一年生の子に、手足の動きが伸びやかで、すごく素質のありそうな子を見つけたところです。あの子に何て言って、ハダカの特訓を受け入れてもらおうか、今考えている最中です! 
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