ロリっ子Jkは平穏を愛す

赤オニ

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 なし崩し的に、イツキ先輩と一緒に学校をサボって、飛び出して行ったそーちゃんを探すことになった。
 でも、喧嘩していた相手のイツキ先輩がいて、果たしてそーちゃんが近付くかと言ったらノーだ。
 だから、その辺に浮いている幽霊やあやかしにこっそり声をかけて、そーちゃんを一緒に探してもらうことにした。
 イツキ先輩は適当に撒けばいい、着いてきてもらって申し訳ないけど。


「六花チャンってさ、目車と知り合いなんだね。しかも、かなり親しいみたいだ」
「幼なじみなんです」
「ふぅん」


 自分から話を振っておいて、興味無さそうに相槌を打つイツキ先輩を睨むと、なぜか笑われた。
 ムッとなって視線を逸らす。
 そーちゃんへ送ったメッセージの既読は、付かないまま。
 同じ高校だなんて、知らなかった。まぁそーちゃんは学校の話をしなかったし、わたしも小春ノ高校を受験するとは伝えていなかった。何という偶然。世間って狭すぎる。


 大通りから、商店街へ入る。色んなお店が並んでいて、平日の昼間にも関わらず、活気づいている。
 古着に駄菓子、アクセサリーに食べ物。こじんまりとした建物に物が売っている様子は、まるでお祭りの屋台を見ているみたいで、とても楽しい。
 こういう人の気が集まる場所は、あやかしや幽霊が嫌うから寄ってこないし、その点でもいい。ただ、今は寄ってきてくれないと情報が集まらないから、早く出ようと進む。


「六花チャン、はぐれるよ」


 イツキ先輩の声とともに、目の前にソフトクリーム。
 固まって、見上げると悪戯っ子のように笑っている。
 周りの人を避けながら、器用に歩くイツキ先輩の手にも、ソフトクリームが握られている。
 はい、と自然な流れで渡されて、溶けるのも困るからペロリと舐める。


「! 美味しい!」
「でしょ、僕のオススメ」


 同じくソフトクリームを舐めながら、イツキ先輩が嬉しそうに笑う。
 ……この商店街、詳しいのかな。そう言えば、これいくらなんだろう。払ったほうがいいかな……まぁ、いっか。先輩からの奢りだと思おう。
 ソフトクリームを舐めながら、並んで歩く。


 杖をついているわたしを見て、道を譲ってくれる人も何人かいた。その人たちに頭を下げて笑うと、不思議とイツキ先輩が何とも言えない顔で目を細めるのが見えた。


 ソフトクリームを食べ終えた頃に、空高く飛んでいるあやかしを見つける。ひらひらとわたしに向かって手を振っているから、何か情報を持ってきてくれたのかもしれない。
 お手洗いに行くと伝えて、そばを離れて人通りの少ない路地に入る。手招きをすると、空からするするとあやかしが降りてくる。


「お前さんの言っていた男だけど、この先の神社で寝ている姿を見かけたよ。あたしらは入れないからね、遠目だけど多分合ってると思う。さぁ、報酬をおくれ」
「だめ。まだわたしの目で確かめていないもの、報酬は後で」
「なんだい、ケチな子だねぇ。まぁいいよ、報酬は必ず寄越しな。じゃないと呪っちまうよ」
「分かってるよ。後でね」


 適当にあしらうと、不満気な顔をしたけど、鼻を鳴らしてまた空高く飛んでいった。
 わたしは、神社へ向かうことにして、イツキ先輩のことをすっかり忘れてしまっていた。


 神社は、緑が多く空気が澄んでいる。どうりで、あやかしモノが近付けないわけだ。
 神社や教会は、ある種結界のようなもので、あやかしモノにとっては害のある場所らしい。反対に、心霊スポットとかは大好きだと聞いた。心霊スポットには行かないと心に誓ったものだ。
 神社の境内を歩いていると、くい、袖を引っ張られる。振り返ると、スイが立っている。それはもう、楽しそうな笑顔を浮かべて。


 何でスイが、ここに? 
 社に行くと伝えたのは一週間前。待ちきれなくて来ちゃったとか、そういうの? ええ、勘弁願いたい……。
 わたしの心の中を読んだのか、顔に出ていたのか、にんまりと口角を吊り上げる。


「リッカ。アレ、リッカの大切?」


 すっと指したのは、木にもたれ掛かって眠っているそーちゃん。頬は腫れていて、服もヨレヨレのボロボロ。
 出会った時のことを思い出して、小さく笑いそうになったけど、堪える。スイの目が、笑っていない。むしろ、ギラついている。
 殺気が溢れてくるのに、冷や汗が出てくる。社を出ても、力を取り戻した強力なあやかしなんだと、認識する。
 一言でも間違えたら、大変なことになる。ゴクリと唾を飲み込んで、わたしは慎重に話す。


「お友達だよ。スイと、同じ」
「お友達? ぼくと、同じ……。そっか、じゃあいいや」


 さっきまで溢れ出ていた殺気が霧散して、その場にへたり込みそうになる。
 スイはわたしの袖を簡単に離して、にっこり笑う。


「同じなら、いいよ」


 その言葉だけを残して、足取り軽く去って行った。背中を見送って、眠っているそーちゃんに近付く。
 眉を寄せながらも、息をしている姿に、安心する。
 スイが残していった言葉。同じならいいよ、それはつまり。同じじゃなくなったらーーーー想像するだけで、恐ろしい。


 関わりたくないモノが、迫ってくる。わたしの平穏な日々を、奪おうとする。


 あやかしも、幽霊も怪異も……みんなみんな、見えなかったらよかったのにな。そしたら、平穏を脅かされることもなくて、そーちゃんや真理夏と笑って過ごせるのに。
 考えても、無駄なんだけど。


 わたしには見えてしまって、この力があやかしモノを引き寄せてしまって、だから仕方ない。
 だけど、諦める気はない。わたしが送りたいのは、平穏なJkライフなんだから! 絶対諦めるものか!


 ぐっと握り拳を作って気合を入れると、わたしはそーちゃんを揺する。
 中々起きてくれない体を容赦なく揺さぶって、慌てて起きたそーちゃんに笑いかける。
 ビックリした顔でわたしを見たあと、気まずそうに視線を逸らす。バッグから絆創膏を取り出して、目の下に出来た切り傷に貼ったあと、ペシっと軽く叩く。


「そーちゃんのバカ。離れたらだめだよ、約束したでしょ、あの日」
「……そう、だったな」


 痛そうに顔をしかめながら返すそーちゃんに、噴き出す。ひとしきり笑い終えてから、風邪引くから早く学校戻りなよ、と言うと何か言いたげに見てから、頷いて神社を出ていった。
 ……勘のいいそーちゃんだから、わたしが隠し事してるのも、バレてるんだろうなぁ。でも、話すつもりはないから。
 大丈夫、出来る。今までだって、一人でやってきたんだ、平気だよ。


 神社から離れると、さっきのあやかしが近付いてきた。
 報酬を寄越せと手を出してきたから、バッグを漁って裁縫セットを取り出す。針を1本取り出して、指に刺す。
 少し出た一滴の血をあやかしの手に垂らしてやる。その血をひと舐めして、満足そうな顔で飛んでいった。


 あやかしモノと関わる時は、必ず何かを差し出さなくてはいけない。
 それは爪だったり目玉だったりと様々なものを要求してくるけど、力の強いわたしは一滴の血でそれらは満足するらしく、そのために裁縫セットを持ち歩いているようなもの。
 

 一々血を出すのは面倒だけど、生爪剥がされるよりマシだから、と考えて大人しくあげる。
 ただ、油断するともっと寄越せと喰われそうになる時もあるから、そういう時は黙って蹴り飛ばす。


「六花チャン!」
「あ、イツキ先輩」


 息を切らして駆け寄ってくる相手に、忘れてましたーとは言えず、適当に笑っておく。イツキ先輩はなんとも言えない顔をしたあと、なぜか慌てたようにバッグを漁り出した。
 チラリと見えたバッグの中身はぐちゃぐちゃで、整理できないのかなーと考えていたら、シワのよった絆創膏を差し出される。


「迷子になって怪我するとか、小さい子じゃないんだから」


 世話がやけるね、なんて言われてしまった。
 貰った絆創膏を受け取って、大人しく自分の手で針を突き刺した指に貼る。
 いつもは適当にティッシュを当てて血が止まるのを待つんだけど、今回はすぐにイツキ先輩に見つかったからなぁ。


 神社の鳥居を見上げて、イツキ先輩がきゅっと眉を寄せる。わたしを一瞥し、ウインクをかましながら軽い口ぶりで話す。


「ここ、亡くなった母さんが好きな場所なんだ」
「地元なんですか?」
「あれ、注目するところ、そこなの? 何か、変わってるよね。六花チャンって。よかったら一緒に見て回ろう」


 スイの出来事があったから、正直足を踏み入れたくない。
 神に近い存在は、他のあやかしモノと違って、こういう神聖な場所を好む。もちろん、人が集まり祈ることによって、自身の力が高まるのも理由の一つだけど。

 一度人から信仰されなくなってしまったスイは、力を求める。もう一度、人々に祀られ愛される存在になるために。
 小さな社の中で、一人で過ごす姿を想像すると、寂しい。けれど、わたしの日常を犠牲にしてまで助けるほど、お人好しじゃない。


「六花チャン。ボーッとして、どうしたの? 疲れた?」
「……いえ、見て回りましょうか。緑も多くて、気持ちいいので」


 愛され、慕われ、自分の力によって笑顔になる人々。そんな人から、見捨てられ独りぼっちになった。
 手を差し伸べた雨城さんに感謝している様子は無さそうだし、そこら辺は神様の傲慢さが垣間見える。一度愛され、愛してしまったらーー忘れられなくなってしまうものなのか。


 そーちゃんがいて、真理夏がいて、笑って過ごしたあの日々。
 心のどこかで、線を引いて2人の中に入らなかったわたし。
 母親から愛されず、独りぼっち。寂しいあの毎日がわたしの当たり前だ。


 だから、一度でも愛され愛してしまえばーー失った時が、怖い。いつも一歩引く。それはわたしがとても臆病者な証。
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