【完結】生贄にされた第九皇子、邪神に見込まれて最強の使徒になる。

アキ・スマイリー

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第23話 第二の使徒。

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「ベル! ゴブリンロードが逃げた!」

「ああ、放っておけ。ジョアンが片づける」

 思いもよらないベルの返答に、僕は面食らった。

「え!? ジョアンの体、見つかったの!?」

「ああ。というよりも、俺はジョアンの体を預かっていたようだ。リオン、お前と同じようにな。すっかり忘れていたが、ここでゴブリン共と戦っているうちに思い出した。お前とジョアンは、前世からの相棒。名前も変わっていない。また巡り合うとは、よほど縁があるらしいな」

「ええええ!? そうなの!?」

 僕はかなり驚いたが、それと同時に嬉しくもあった。

「ジョアン。前世から僕を愛してくれているんだね」

 そう呟いて、涙が溢れてきた。早くジョアンに会いたい。

「あの......私はこれからどうすれば」

 ゴブリンロードに捕まっていた女性が、気まずそうに僕を見上げた。確か、彼女はシャルファと呼ばれていた筈だ。

「ごめんなさいシャルファさん。もう大丈夫ですよ。悪いゴブリンは全て退治しました。他の女性達も、別室にて安全は確認済みです。皆さんと一緒に帰りましょう。魔法でお送りしますよ。どちらの村のご出身ですか?」

「あ、私は、その......実は記憶喪失なんです」

「ええ!? そうなんですか?!?」

 驚いた。記憶喪失は記憶の一部、または全部を失ってしまう病気だ。帝国にいた時に家庭教師から習っていたけど、凄く珍しい病気だった筈だ。実際に出くわすなんて、思っても見なかった。

「では、とりあえずサルート村にまいりましょう。囚われていた女性達は、皆さんあの村の出身の様ですので。方村長さんも優しい方ですから、きっと力になってくれる筈です」

「はい、ありがとうございます」

 微笑みながら、僕の手を握るシャルファさん。今は同性同士だけど、なんだか照れてしまう。

「リオン! その女から離れろ!」

 甲高い少女の声。僕たちが現在立っている、ゴブリンロードの寝室前にある廊下。その向こうから、銀色の髪に金色の目をした小柄な美少女が、短剣を構えて走ってくる。

「チッ!」

 シャルファさんは舌打ちをしながら素早く手を動かし、何やら呪文を唱えた。するとその指先から巨大な火球が出現し、銀髪の少女に向かって放たれる。

「危ない、ジョアン!」

 僕は咄嗟に叫んだ。彼女がジョアンである事を、本能で悟っていた。または前世の記憶なのかも知れない。

 ジョアンは華麗に側転宙返りをし、火球を避ける。そして手に持っていた短剣をシャルファさんに向かって投げた。

 僕は一連のやり取りでシャルファさんが実は敵だと理解していたので、彼女を助けたりはしない。

 だがシャルファさんはほとんど聞き取れないほどに高速で呪文を詠唱し、指を短剣に向かって突き出した。すると短剣は空中で粉々に砕け散った。

「ふふっ。どうしてわかったのかしら、お嬢ちゃん」

 薄く目を細めて笑うシャルファさん。妖艶な笑みではあるが、どこか邪悪な雰囲気も漂う。

「どうしてだと? 笑わせるな。殺気が隠せてないんだよ。リオン、こっちに来てくれ」

 ジョアンは可愛い姿なのにバリバリの男口調で僕にそう告げた。まぁ、僕も人の事は言えないけれど。

 ジョアンに言われるがままに彼女の元へ移動する。その間も、ジョアンは真っ直ぐにシャルファさんを睨みつけていた。

「正体を表しな。どうせもう、誤魔化しは効かないんだからな」

 ジョアンは羽織っているマントの下から、短剣を二本取り出しながらそう言い放つ。

「あらそう? なら、少し勿体無いけど見せてあげる。同じ魔人のよしみでね」

 シャルファさんはそう言って、結んでいた髪を解いた。
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