【完結】生贄にされた第九皇子、邪神に見込まれて最強の使徒になる。

アキ・スマイリー

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第27話 技を思い出しました。

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 今僕がいるのは雲の上。伝説の邪竜ダラギオンの両翼と背中が見える位置だ。

 後はこのまま落ちていって、奴を仕留めるだけ。

 ダラギオンの伝説は僕も聞いた事がある。自分の所有していた宝を冒険者に盗まれた事で激怒し、王国二つを壊滅させたらしい。

 確かに恐ろしい奴だ。だけど関係ない。敵が強ければ強いほど、僕は興奮する。

 そして思い出した。僕の編み出した戦闘技術「魔武技」の一つを。

「魔破拳!」

 僕は技の名を叫んだ。すると奴の背中に巨大な目玉がギョロリと出現した。なるほど、死角はないと言うわけか。技の名前を叫んだ事で気づいたようだが、後悔はない。

 技名を叫ぶのは男のロマン! って昔誰かが言ってたような気がするし。まぁ、今の僕は女だけど。

 とにかく、奴が気づいた所でもう遅い。僕の技は放たれた。大気中と体内、両方の魔素を魔力に変換して拳に乗せ、前方に突き出すと共に一気に放つ技。

 相手に触れようが触れまいが、筋肉、骨、さらには体内のあらゆる内臓をも、破裂させて死に至らしめる。

「グオオオオオッ!」

 ダラギオンは咆哮した。最後の足掻きで、僕に攻撃するつもりだ。相手が巨大である場合、死ぬまで多少時間がかかる場合がある。

『魔人のメスか! 俺に魔素爆発を起こさせる気だな! だがそうはいかんぞ! お前の力を奪ってやる!』

 ダラギオンが怒りのこもった声でそう言った直後、ビュアアアッ! と無数の触手を僕を目掛けて伸ばして来た。

 まだ距離はあるけど、数秒すれば僕を捕らえるかも知れない。

「おい、コレはまずいぞリオン! お前の処女が危ない!」

 ベルが叫ぶ。

「え? 処女って何?」

 初めて聞く言葉だ。

「ああもう! そこを説明してる暇はない! とにかく避けろ! 奴はあの触手でお前の精気と魔素を吸い取り、自己再生して生きながらえるつもりだ! ちなみに俺の魔法には期待するな! ここまでの移動で魔力切れだ!」

「でもボク、落ちて行くだけだから避けられないよ」

「ああそうか! じゃあ切り裂くとか破壊するとか、何かあるだろう!」

「今思い出した技は、さっきの魔破拳だけなんだ。だから打撃で弱らせるか、引きちぎるしかないね」

「打撃はおそらく効かん! 引きちぎれ!」

「わかった!」

 触手達が僕のすぐそばまで伸びて来た。僕はそのうちの数本をワシッとつかみ取り、引きちぎろうと試みる。

「なんかヌルヌルしてて無理! うわ、何これ、ちょッ! ひゃああッ!」

 大量の触手が一斉に僕の手足を絡めとる。そして服の中へと侵入し、ニュルニュルと全身を這い回った。

「ふにぃッ! くすぐった、あっ、何、だめ、それダメ、なんか変ッ、ダメ、らめぇッ!」

 這いずり回る触手。気持ち悪いはずなのに、何くすぐったいような、それどころかすごく気持ちいいような、変な感じだ。それに、頭がボーッとして呂律が回らない。

 気持ちいい......。

「くそ、触手のヌルヌルは媚薬を分泌しているんだ! しっかりしろリオン! 力を奪われるぞ! 奴が生き延びれば、お前は食われて死ぬ!」

「しょんな事、言ったってぇ......」

『クククッ! 所詮はメスよ』

 僕の体は落下をやめ、今やダラギオンの触手に全身を絡め取られて宙に持ち上げられていた。そしてパンツの中に侵入していた触手達が、何やら怪し気な動きを取る。

『トドメだ』

「リオン!」

 ベルの悲痛な声。僕は、死ぬのか......。せっかくジョアンと再会出来たのに......。

 そうだ、ジョアン! ジョアンに会いたい! 抱きしめられたい! だから僕は、死ねない!

「うおおおッ!」

 パンツの中の触手を強引に引き抜き、ブチブチと引きちぎる。

『何ィッ! 何故掴めた!』

 驚愕するダラギオン。

「知るか! 気合いだ、こんなの!」

 僕は絡みついていた触手を次々と引きちぎって行く。

「いいぞリオン!」

 喜ぶベル。

「さぁ、ダラギオン。ボクの力を奪えなかった以上、お前の命も後わずかだな!」

『クッ! ふざけるな! 考えて見れば、俺に貴様の技ごときが通用する筈もない! 見ろ、俺はピンピンしている! このまま振り落として、空中でブレスをお見舞いしてやるわ!』

 ダラギオンは背中を振り返り、威嚇する様に歯を見せる。歯の隙間から、炎が噴き出す。

「ああ、言い間違えたよ。お前はもう、死んでる」

 そう捨て台詞を残し、僕はダラギオンの背中から跳んだ。

『バカめ! 格好の餌食だ! 死ねぇ!』

 スゥッと息を吸い込むダラギオン。だが。

『バッ、ガッ、ナァァァァァッ!』

 空中で爆散し、肉片や血を撒き散らした。この質量が落下したら、地上の建築物は跡形もなくなるだろう。

 でも、心配はしていない。ジョアンがいるから、きっと大丈夫だ。

 僕は愛すべき相棒の笑顔を思い浮かべながら、自由落下に身を任せた。


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