【完結】魔王、奴隷、聖女。それが私の経歴です。〜追放されし奴隷魔王は聖女となり、勇者を育て復讐する〜

アキ・スマイリー

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魔王から奴隷へ。

第4話 思いがけぬ提案。

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「ど、どうしたのアリエッタ! 急に泣き出したりして!」

「あー、ネリスがアリエッタ泣かせた!」

「何を言ったのよ、ネリス」

「ぼ、僕は別に何も......!」

 オロオロするネリス。これは事情を説明しないと気の毒だ。

「わ、私、シエラと一緒にメイドをやってたの! シエラがね、ネリスの話を良くしていたから、会えたのが嬉しくって!」

「えっ、姉さんと!? そうなんだ! 姉さんは元気にしてる?」

 私はギクリとした。シエラの死にゆく光景が、脳裏に蘇る。いや、だがきっと生きている。あれはガルフェインの作った実体幻影に違いない。本物のシエラは、きっとガルフェインに匿われている筈だ。

「うん、元気だよ! 休みが取れたら、あなたに会いに来るって言ってた!」

「そうなんだ! まぁ、僕が休みを取れるかはかなり怪しいけど......嬉しいな。ところでアリエッタはどうして下級奴隷に? メイドだったんでしょ」

 なんの気なしに聞いて来たネリスに、ミルダとフォリーがツッコミを入れる。

「事情があるに決まってるじゃない!」

「そこはあえて聞かないのがマナーよ!」

「えっ、あっ、ごめん」

 ネリスはしまった、と言った表情で、私に謝罪した。

「あはは、気にしないで。ちょっと失敗しちゃったんだ。それでこのオークラルド大監獄に、配置移動になったの。今日からはみんなと一緒にここの仕事を頑張るよ。やり方、教えてちょうだい!」

「もちろん!」

「任せて!」

「よろしくね、アリエッタ!」

 三人は快活に微笑み、看守長の世話について色々と教えてくれた。

 看守長の食事を作ったり、風呂で背中を流したり、服の洗濯、看守長室の掃除、ペットへの餌やり等々。中でもペットへの餌やりは命がけだった。

「これが......ペット!?」

「うん。ヘルハウンドっていう魔獣だよ。近づき過ぎると噛みつかれるから、気をつけてね」

 大監獄はかなり広大で、ヘルハウンド用の犬舎まである。その中では、黒い体の巨大犬「ヘルハウンド」が眠っていた。所々が赤く燃え光り、普通の動物ではないと一目でわかる恐ろしい姿をしている。囚人が逃げ出した時に捕らえて喰い殺す役目と、死刑執行の役目を持っているらしい。

 看守長のパンデリンは魔人のご多分にもれず傲慢で自己中心的な男で、まだ仕事に慣れない私を捕まえては、些細なミスを責め立てた。おまけにセクハラもしてくる。何度殴ってやろうと思ったか、数えきれない。

 一日の労働を終えると、私達は囚人と同じように牢獄に入り、扉に鍵をかけられる。それが毎日の流れだった。

 そんなある日の事。パンデリンが突然、恐ろしいアイディアを発表した。

「お前らの中の誰でもいい。ヘルハウンドと戦ってみろ。もし一人でも勝てたら、全員を看守長の助手として【上級奴隷】に昇格してやる。そうすれば賃金も出るし、休日もある。もちろん隷従の首輪も外してやるぞ。悪い話じゃなかろう。最近逃げる囚人もいなけりゃ、死刑執行の予定もまだ先だ。しばらくこいつに人間を食わせてないんでな。人肉に飢えてるんだ。つまり負けたらそのまま、こいつの餌になってもらう」

 普通はそんな話、間に受けないだろう。だがネリスは真剣な眼差しで、パンデリンを見つめ返した。そして看守長室の窓から、大きな犬舎の方を見る。

「僕、やります。武器は貸してもらえるんですか?」

「ああ、剣を貸してやるぞ」

 パンデリンは愉快そうに、口元を歪めた。

「正気なの、ネリス!」

「絶対に死ぬわ! 止めた方がいいよ!」

 フォリーとミルダが悲鳴を上げる。

「いいや。決めたんだ。パンデリン様、僕にやらせて下さい」

 ネリスは本気だった。だが私もフォリーやミルダと同意見。魔獣と人間が戦った所で、結果は見えている。勝てるわけが無い。普通なら。

「私もやります、パンデリン様」

 私もネリスと共に、立候補した。ネリスもフォリーもミルダも、目を丸くして私を見る。

「アリエッタ、君は女の子だ。やめておいた方がいいよ。もしも失敗しても、犠牲になるのは僕だけでいい」

「ううん、ネリス。私が一緒なら、確実にあの犬っコロに勝てるよ」

 私は挑発する様に言い放ち、パンデリンを見た。

「犬っコロだと......! 撤回しろ、アリエッタ!」

「いいえ、しません! あいつはデカイだけの馬鹿犬。犬っコロで充分です!」

 パンデリンはピクピクとこめかみに血管を浮かばせ、ワナワナと拳を震わせた。

「いいだろう! お前の参加も許可する! せいぜい足掻いてみるがいい! そして無様に餌になるがいい!」

 口から唾を撒き散らし怒鳴るパンデリン。だが私は、余裕の表情でその傲慢な男を見返していた。
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