【完結】Eランクの最凶邪竜〜家族を殺されたおっさん、最強の破壊神「世界を喰らう邪竜」となって復讐を開始する。土下座して謝ってももう遅い!

アキ・スマイリー

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第2章

第10話 怪しげな集団。

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 三十分という驚異的なスピードでルースド村に到着したステイン。その速さは実に早馬の六倍だった。

 村も街と同様、モンスターから人々と守る城壁がある。見上げる程に高い石壁が、ぐるりと村を囲んでいるのだ。

 東西南北に一箇所ずつある入り口。その南側の門にステインは近付いていく。門番として立っている村の駐在騎士二人が、彼を見て警戒する。

「そこで止まって下さい! その位置で、身分証の提示をお願いします!」

 騎士の一人が叫んだ。

「わかりました!」

 ステインは懐から身分証を出して提示した。幻影によって、フィルの身分証に見える筈だ。

 身分証の提示を指示した駐在騎士が、双眼鏡を取り出してステインの身分証を見る。そして笑顔でオーケーサインを出す。

「Sランク冒険者のフィル・ホープ様ですね! 魔術電話によってギルドから連絡は受けております! お早いお着きですね! どうぞ、お通り下さい!」

「ありがとうございます!」

 お互いの距離が離れている為、大声での会話となる。騎士が入り口を指し示したのを見て、ステインは彼らに近付いて行った。

 すると二人はビシッと敬礼し、その後握手を求めてきた。ステインは笑顔で握手に応じる。と言っても、幻影による面頬でステインの笑顔は見えない。

「フィル様、この度は無報酬の依頼をお受け下さって、本当にありがとうございます。私は駐在騎士のノーウィン。そして彼はハダリタ。村長の家まで、私が案内致します」

 三十代前半くらいの男性騎士、ノーウィンが案内を買って出た。

「よろしくお願いします」

 ステインははお辞儀をして、彼に付き従った。ハダリタはそのまま、門の番をする。

 そこから歩いて十分程で、村長の家に到着した。木造建築の立派な邸宅だった。ノーウィンが家の扉についたノッカーを打ち鳴らす。

「村長! 冒険者ギルドよりやってきた、フィル・ホープ様をお連れしました!」

 ノーウィンがそう告げると、少しして四十代くらいの男性が中から顔を出した。

「フィル様。こんな場所まで、ようこそおいで下さいました。私が村長のグラターンです。詳しく説明しますので、どうぞ中にお入り下さい」

「はい。それでは失礼致します」

 ステインが中に入ると、ノーウィンは「では、私はこれで」と言い残して去っていった。

 村長の家の中は思いのほか簡素で、必要最低限の家具や調度品しか置いていないようだった。村長に付き従って奥に行く途中、椅子に座ったまま項垂れている女性がいた。

(きっと村長の奥方だろう。娘がいなくなって、悲しくて仕方がないのだ。可哀想に)

 ステインは彼女の心中を察し、とてもいたたまれない気持ちになった。彼自身、一度子供を失っている。その為、村長夫妻の辛さは身に染みて分かっていた。

 村長に案内された部屋は、執務室のようだった。応接用のテーブルに案内され、ステインはそこに腰掛ける。

 村長はその向かい側に座ると、鎮痛な面持ちで状況の説明を始めた。

「実は数日前、娘は一度盗賊団によって攫われているのです」

「何ですって!?」

 ステインは驚いたが、話の腰を折らずに村長に続きを促した。

「私の妻は病気がちで、娘は妻の為の薬草を一人で摘みに行っていたようなのです。薬草は村の外、オルゲン森の中に生えています。モンスターが出るかも知れない危険な場所なので、行くなと言ってあったのですが......騎士に贈り物をして、門を開けてもらったようなのです」

 村長は一旦話を区切り、溜息をついた。そしてまた、話を続ける。

「そしてそれを薬屋に届け、調合してもらっていたようで。騎士も薬屋も口止めされていましたが、娘が攫われた後で教えてくれました」

 村長の目に涙が滲む。その時の事を思い出しているのだろう、とステインは察した。

「なるほど。では、その時に身代金を要求されたのですね」

「はい。持っている金を全て差し出せと。私も妻も、娘が命よりも大切です。金など、惜しくはありませんでした。お恥ずかしながら、今回の依頼が無報酬なのもその為です。申し訳ございません」

「いえ、構いません。それで、その後娘さんは帰って来たのですか?」

「それが......」

 村長は悔しそうに目をギュッつぶり、涙をポロポロとこぼす。

「奴らは金を受け取った後、娘を家の前まで連れて来ると言う約束だったのですが......翌日まで待っても来ませんでした。騎士達が村の周辺を見回ったところ野営の跡があり、その一帯は血にまみれていたそうです」

「盗賊団を襲った者がいる、という事ですね。そして、娘さんは襲った連中のもとに」

 ステインは息を呑んだ。その状況が、ありありと目に浮かぶようだった。

「はい、おそらくは。そしてその頃から、村の北に怪しげな連中が住み着くようになったのです。騎士達の話によれば、奴等はサーカス団のような巨大なテントを張り、そこで毎晩怪しげな儀式を行っているそうです」

「では、その者達が......」

 ステインは確信していた。その連中の仕業だと。

「ええ。きっとそうなのでしょう。そしてもしかしたら、娘はもう生きていないかも知れません。フィル様、お願いです。どうか娘をお助け下さい。もしも死んでしまっているなら、せめて亡骸だけでもきちんと埋葬してあげたいのです」

 そこまで言うと、村長は顔を両手で覆って嗚咽を漏らした。

 ステインは立ち上がり、そっと村長の肩に手を置く。

「大丈夫です。きっと娘さんは助け出してみせます。彼女の名前を教えて頂けますか?」

 ステインはそう言葉をかけ、村長が落ち着くのを待った。やがて村長は顔を上げ、泣き腫らした目で彼を見つめる。

「娘の名前はジュディです。フィル様、ジュディをどうか、よろしくお願いします」

「ジュディさんですね。わかりました。もう少しの間、お待ち下さい。必ず娘さんを連れ帰って来ます」

 ステインは村長と握手をかわし、彼に安心と希望を与えるような言葉をかけてその場を後にした。

 相手が何者なのかは分からない。だが、明確な悪であるとステインは判断した。

(悪に対しては容赦しない。話し合いは無意味。命までは奪いはしないが、それ以外は奪う覚悟がある)

 ステインは北門の騎士に事情を話して通してもらうと、遠くに見える巨大なテントを見つめた。

(まずは潜入。そして観察だ)

 ステインは「幻影の呪文」で自身の姿を他者から認識出来ないよう「透明」にし、そのままテントに向かって高速で駆け出した。





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