二十年間レベル1のおっさん、恋人を寝取られた上にギルドを追放される〜ハズレスキル「ちからをためる」で溜め続けた力、今こそ解放します〜完全版

アキ・スマイリー

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第25話 ミストの正体。

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「そうだ、爺ちゃんに魔扉で送ってもらえばいいんだ」

 フェイトの執務室は魔術ギルドの中にある。執務室を出た俺はそう思い付き、魔術ギルド内でオースティンの姿を探した。

「あっ、ティムさん。ギルドマスターなら、出かけてますよ」

 すれ違った魔術士に尋ねると、そう教えてくれた。

「参ったな。んじゃ、やっぱ歩くしかない。俺の傷が開くまであとどのくらいかな」

 ケイトに問いかけると、彼はポケットから懐中時計を取り出した。これは魔術機構ではなく、ゼンマイ機構の品物。振動によって自動でゼンマイが巻かれ、半永久的に時を刻む。

「そうですね。フェイト様が巻き戻した時間は六時間。それから経過した時間は四十分程です。ですから、あと五時間二十分でティムさんは瀕死の重症になります」

 ニッコリとそう言って、ケイトは時計を半ズボンのポケットに仕舞う。

「ケイトも時計持ってるんだな」

「え? ああ、そうですね。時間をいつも把握しておく事は、裁定の際にも重要ですから」

「なるほどね。うーん、あと五時間弱か。今は午後の二時。シュミラと一緒に夕食を食べるくらいは出来そうだな。よし、急ごう」

 俺は自身の腕時計で時刻を確認すると、魔術ギルドの外へ向かって足早に歩いた。

 ギルドの外へ出て、家を目指す。魔術ギルドから俺の家までは三十分程度。走れば多分、二十五分くらいだ。

「ケイト、走るぞ!」

 俺は自宅へ向かって全力疾走する事にした。

「ええー!? 待ってくださいよ! 僕、走るのは苦手で!」

 とか言いながら、めっちゃ余裕の表情で走ってくるケイト。さらには俺を追い抜いていく。

「ぜぇ、ぜぇ、おい、まて、ケイト! 俺を置いて、行くな!」

 そう言えばアイツ、めちゃくちゃ足が速いんだった。くっそ、負けてられん!

「うおおおおおッ! 俺は今、風になる!」

 そんな事を叫びながら走る。そして走りながら、オースティンが言っていた言葉を思い出す。

(練習すれば、自在に風をコントロール出来るようになるだろう。空を飛ぶ事さえ可能だ)

 そうだ、風の籠手! 空飛べるんだ! でも空を飛ぶ練習なんてしてないし、無理かな。

 いや! 一か八か、やってみよう!

「風よ集まれ!」

 俺は両手を掲げ、風を集めた。ものすごい勢いで、宙に渦巻いている。

 これを地面に向ければいいのかな......。よし、まずはやってみよう!

 俺は渦巻く風たちを地面に向けて移動してみた。すると。

「うぉあああああああッ!」

 俺の体は一瞬で上空に吹っ飛ばされた。人が豆粒みたいに見える。やばい、このまま落ちたら死ぬ!

 もう一度風を集めてクッション代わりにすれば、助かるかも知れない!

「風よ集まれ!」

 俺は落下地点に風を集め、着地の衝撃を和らげた。ゆっくりと地面に足をつける。

 ふぅ、なんとか死なずに済んだ。さて、どのくらい進んだかな。

 俺は周囲を見回す。すると前方の方から黒髪の少年が走ってきた。

「もう、ティムさんったら何やってるんですか! 急ぐんですよね!? 全然進んでないじゃないですか! ほら、行きますよ!」

 怒られてしまった。どうやら俺は上空へ舞い上がった後、元の地点に落下したらしい。

「ごめん、空を飛べないか試して見たんだ」

「風の籠手の存在は僕も知っていましたが、そう簡単に扱えるものではありませんよ! 何せそれは神器。神々の作り出した代物です。表向きは魔術機構と言う事にはなっていますが」

「神器!? マジかよ......実在するのか」

 神器の話は、おとぎ話や伝説に登場する。だから俺は、その存在に関しては半信半疑だった。

「遊び半分で扱っていいものではないんです。魔術を学んでいる僕たち魔術士でさえ、それの扱いは難しい。使う際は、細心の注意を払って下さいね」

 少しムっッとした表情のケイトが、ようやく微笑んでくれた。

「わかった。気をつけるよ」

「分かって頂けて良かった。では急ぎましょう」

「ああ」

 俺とケイトは再び家路を急ぐ。その途中、病院で目覚めて以降ミストと連絡が取れていない事を思い出した。きっとアイツも心配している筈だ。

 もう一度「連帯の指輪」で念話を試してみよう。俺は歩きながら指輪に触れ、ミストの事を考えた。そして彼の意識に直接語りかける。

(ミスト! 俺だ、ティムだ! 返事をしてくれ!)

 すると少しして、ミストから返事があった。

(ティムか。随分と久しぶりだな。妹に渡した手紙は読んだか?)

 よし、ようやく反応ありだ!

(ああ、読んだよ! あの手紙のお陰で、俺は立ち上がる事が出来たんだ! お前と妹のシュミラのお陰で、絶望の淵から這い上がれた! 感謝してもしきれないよ! 本当にありがとう!)

(フッ。大袈裟な奴だ。所でオースティンにはあったのか?)

(ああ、会った! そして「ちからをためる」の新しい使い方を学んだんだ! これで俺は、また戦える! その事を伝えたくて、一度連絡したんだけど......忙しかったのか?)

(まぁな。お前と違って俺は狩猟ギルドでの仕事が忙しい。丁度狩りをしていたのさ。まぁ、きっとその事での連絡だろうとは思っていた。すぐに返事が出来なくてすまなかったな)

 そんな話をしていると、俺の家が見えて来た。もうすぐシュミラに会える。

(いや、いいんだ。お前の言う通り、俺は仕事もしないでゴロゴロしてた。だが、これからはまた、冒険者の仕事を頑張るつもりだ。ミスト、その件で詳しく打ち合わせしたいからさ、良かったら俺の家に来てくれないか? 紹介したい奴もいるし、一緒に飯でも食おう)

(何? お前の家でか? いや、それは遠慮しておこう)

(いやいや、遠慮すんなって。今ちょっと、妹に聞いてみるよ。夕食余分に作ってもらえないかどうか)

(今!? 今、家の近くにいるのか?)

(ああ、いるよ)

(ちょ、ちょっと待て!)

 なんだ? ミストが何やら慌てている。一体どうしたんだろう。ここは一旦、そっとしておいてやろう。

「到着しましたね、ティムさん」

「ああ。途中、余計な事をしちまってすまなかった」

 ケイトと話しながら、家のドアを開ける。

「ただいま、シュミラ!」

(お、おかえりなさい、お兄ちゃん!)

 ......え!?

 今の声、ミストの念話、だよな。

 家を入ってすぐのダイニングキッチンには、シュミラが立っていた。そしてハッとしたような顔で、俺を見ている。

「シュミラ、お前、その指輪......」

 シュミラの左手薬指には、連帯の指輪がはめられていた。
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