コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~

好きな言葉はタナボタ

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そのベルが必要なのはアナタであって私じゃないわ

卓上ベルを鳴らさず、したがってマロン君とコミュニケーションすることもなく1週間が過ぎた。

その日、ラットリング狩りを終えたエリカがハンター協会を訪れると、マロン君からのメッセージが書かれた紙がベルの下に挟まれていた。 内容は次のようなものだ。

『ファントムさんにお話があります。 ベルを鳴らしてください。 マロン』

「マロンって、あのマロン君のこと!?」

驚いたことにマロン君は本名も「マロン」だったのだ。 「マロン君」はエリカがマロン君の外見からなんとなく思いついたアダ名で、彼女が勝手にそう呼んでいるに過ぎなかったのだが。

「ま、それはともかく、あっちから私にご用ってわけね。 ふ~ん?」

エリカは小馬鹿にしたような視線を卓上ベルに向け、ベルの頂上部にあるボタンを右手の人差指で押した。

チーンと安っぽい音が響き渡り、付近にいた数人が音の出どころに振り向く。 マロン君もそのうちの1人で、音を聞いてベルの近くへと寄って来た。

「お久しぶりですファントムさん。 実はですね、少しお話がありまして。 こんなところじゃなんですから、奥の部屋へどうぞ。 あっ、その卓上ベルも持ってきてくださいね。 合図に必要ですから」

「そのベルが必要なのはアナタであって私じゃないわ」と言いたい気持ちをグッとこらえ、エリカは卓上ベルを手にマロン君の後について歩き出した。

歩きながらエリカは少し不安になってきた。

(少しお話があるって、どんな話なんだろ? わざわざ奥の部屋でって何か重大な話なのかな?)



マロン君が奥の部屋に入り、エリカも後に続く。

部屋は応接間のような感じで、小さなテーブルとソファーが置かれている。 エリカがテーブルの上に卓上ベルを置いたことでマロン君はエリカが席についたと判断したらしく、話を切り出した。

「単刀直入に言いましょう。 ファントムさんに、ラットリング狩りをそろそろ後進に譲ってもらいたいんです」

「コーシンって何?」

マロン君にも自分が難しい言葉を使ったという自覚があったのだろう、エリカの言葉が聞こえてないにも関わらず彼は補足する。

「後進とは『後輩』と同じような意味です。 つまり新人ハンターということですね。 ファントムさんは毎日のようにラットリングを何十匹も狩ってくれていますが、おかげさまで最近はラットリングの繁殖数が抑制されているので」

エリカはベルをチーンと鳴らしてマロン君の言葉を遮った。 マロン君の言わんとすることがわかったからだ。

「要は獲物としてのラットリングを新人ハンターに譲れということなんでしょう」

「ベルが鳴ったということは、OKですか?」

「仕方ないじゃない」 返事代わりにエリカは再びベルをチーンと鳴らした。

「ありがとうございます」

「このベル、けっこう便利ね」

卓上ベルを認めつつあるエリカであった。
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