コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~

好きな言葉はタナボタ

文字の大きさ
35 / 144

異世界劣等生

しおりを挟む
翌朝。 エリカは台所で朝食を食べながら1日のスケジュールを考えていた。

「ファビロサさんと会うのは午後4時だから、それまではモンスター退治かな。 効率は悪いけど、散歩がてら出かけましょうか」

エリカはコップに入ったオレンジ・ジュースを飲み干すと席を立ち、朝食に使った食器を洗って、外出の支度を始めた。



家を出たエリカは南門を目指して歩き出した。 途中にある商店街で昼食を買い求めるつもりである。

「今日のお昼は何にしようかな。 サンドイッチ? それともお弁当?」

エリカは幾人もの通行人を追い越しどんどん歩いて行く。 本人はのんびりと歩いているのだが、それでも常人の1.5倍の速度である。 マナにより強化された彼女の体は、人並み以上の歩行速度を自然と生み出すのだ。

そうして歩いていて商店街の入口に差し掛かったときである。 エリカの体に衝撃が走った。 腹から胸にかけて軽い鈍痛がある。

エリカは謎の現象に首をひねる。

「今のは何だったのかしら?」

そして、前にも同じことがあったことを思い出す。

「そういえば前も同じことが... 場所もこの辺りだった」

そのときのことを思い返していてエリカは思い至った。 自分の後にファントムさんとなった者がいる可能性に。

「新たなファントムさんが来てる!? 私と同じように人嫌いで自殺した人が、この世界に送り込まれた?」

エリカは考えを整理する。

「何かにぶつかられたのに、ぶつかられたと思わない。 それは、ぶつかって来たのが知覚外の存在であるファントムさんだから。 そして、新ファントムさんが私によくぶつかるのは、新ファントムさんにも私が見えていないから。 辻褄がピタピタと合う!」



商店街に入りお弁当屋さんへ足を向けると、怒鳴り声が聞こえて来た。 怒鳴っているのは弁当屋の店主だ。

「こう盗まれ続けるんじゃ商売あがったりだぜ!」

「ファントムさんにも困ったもんですなあ」と隣の商店の主。

「気が向いたときにしかカネを置いていかねえってのは頂けねえぜ」

(私はいつもおカネをちゃんと支払ってますけど)

そこでエリカは気付いた。

(あー、さっきの謎現象は新ファントムさんで確定だね。 こないだも謎現象の後で商店街に入ったら、お弁当屋さんが万引きに怒ってた。 あれも新ファントムさんが盗んだんでしょ)

しかし、新ファントムさんに前にぶつかられたのは何週間も前である。 新ファントムさんは何週間も万引きで暮らしてるのだろうか? この先もずっと万引きで暮らすのだろうか?

エリカは新ファントムさんのために自分が一肌脱げないものかと考え始めていた。



南門を出たエリカはモンスターを求めて歩き出す。 どこにモンスターがいるか見当も付かないので、散歩気分で適当に歩く。 《魔物探知》スクロールを買いたいとかミスリルの長剣の代金を支払いたいとかで大金が必要なエリカだが、生活費に困っているわけではないので血眼になってモンスターを探すほどではない。

歩きながら、エリカは新ファントムさんについて考える。

「新ファントムさんを助ける方法は簡単。 彼あるいは彼女にハンター協会の存在を教えるだけでいい。 新ファントムさんも透明で、それにたぶん不死身だから、ラットリング狩りぐらいなら問題なくこなせる」

「察するに新ファントムさんは異世界劣等生。 つまり異世界IQが低いの。 だから冒険者ギルドでおカネを稼ぐという発想がなく盗っ人を続けるハメになるのよ。 平素からRPGやラノベでファンタジーに接していないから、いざ異世界に飛ばされたときにそうなるのよ」

モンスターが一向に見つからないので、エリカはさらに新ファントムさんについて考える。

「まずは、コミュニケーションの取り方よね。 私も新ファントムさんも互いの存在を認識できないからコミュニケーションはとても困難。 あと、新ファントムさんが住んでる場所とか... あっ、オーク見っけ」

4匹のオークは小川で水浴びをしていた。 粗末な革鎧と武器を岸辺に置いて、4匹で川の真っ只中で戯れている。

マナ酔いを経てエリカの肉体が強化されてから初めての戦闘である。 彼女は胸に期すものがあった。

「さあいくわよ。 強くなった私の肉体を、あなたたちの体で存分に味わいなさい!」

受け取り方によっては一部がエッチなセリフを叫びながら、エリカはオークに突撃した。

タッタッタと地面を駆け、ザブザブと水の中に入り、まるで無警戒なオークの心臓を長剣で一突きしたり、背後から忍び寄って首を刎ねたり。 エリカはあっという間に4匹のオークを皆殺しにしてしまった。

「うーん、あんまり変わらないわね。 これまでなら突けなかったタイミングで心臓を突いたりできたけど。 ファントムさんがミスリルの長剣を持ってる時点でわりと無敵だもんね」
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

処理中です...