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透明の人材求ム
クーララ王国の公務員2名がエリカの家を訪問した翌日。
「最近モンスターが少ないし、今日は何か依頼でも探そうかしら」
ということで、エリカは今ハンター協会に来ている。
◇◆◇
窓口にマロン君がいたので、エリカはクーララ王国について尋ねてみた。
『クーララ王国ってどこにあるの?』
そう尋ねただけでマロン君は何があったかを察したようだ。
「クーララ王国のエージェントが勧誘に来ましたか?」
『よくわかったね』
「クーララ王国は、このミザル市から西に半月ほど歩いたところにあります。 ザンス帝国の南です」
『ザンス帝国って強いの? クーララ王国の人が「帝国の魔の手」とかって言ってたんだけど』
「この辺りの国々の中では一番の大国です。 クーララ王国はザンス帝国の属国のようなものですね。 領土や貿易の問題でザンス帝国に不利な条件を押し付けられています」
◇
マロン君との筆談を終え、エリカは依頼ボードへとやって来た。
「何か手頃な依頼はあるかしら? 私の長所を活かせて、楽に稼げて、今日1日で終えれるような...」
ボードに張られている依頼書を端からずらっと見ていると、エリカの体が突然よろめいた。
(あれ? この感じ前にも。 ひょっとしてアリスちゃん?)
エリカはマイ・ベルをチンと鳴らしてみた。 すると、しばらくしてチンと返事が鳴る。
(やっぱりアリスちゃんね。 依頼を探してるのかしら?)
アリスと少し話をしたいが、依頼ボードで筆談をするわけにもいかない。 エリカはベルの音でアリスを誘導した。 誘導先は1階フロアに設けられている談話エリア。 あそこなら小さいながらテーブルもある。
◇
『依頼を探してるの?』
『そうです。家にいてもヒマなので』
『万引きはしてない?』
『大丈夫です』
(大丈夫って...? してないってことでいいのよね?)
『そう? どんな依頼を探してるの?』
『私の長所を活かせて、楽に稼げて、今日1日で終わるような依頼です』
(私の条件と同じじゃない。 ライバルってわけね)
『何か良い依頼はあったかしら?』
『ありました。 これです』
アリスはすでに手頃な依頼を見つけ、依頼書をボードから引き剥がしていた。 エリカの目の前に差し出された依頼書には次のように書かれていた:
---------------
透明の人材求ム
内容: 委細面談
条件: 透明であること
報酬: 30万ゴールド
期間: 1日
---------------
(何この依頼? 他人に知覚されないってファントムさん以外にいないよね?)
『何だかうさん臭い気がするけど』
『私もそう思います。 でも、とりあえず依頼の内容を聞いてみようかなって』
『そうだね、意外にまともな依頼かもしれないもんね。 私も付いてっていいかな?』
『構いませんけど、この依頼は譲りませんよ?』
『心配しなくていいわよ。 興味本位だから』
依頼窓口に依頼書を持って行くと、依頼人が10分ほどで協会に来れるというので、アリスとエリカは面談用の部屋で先に待っていることになった。 エリカも以前に利用したことがある、6つのブースに仕切られた部屋だ。
◇
2人が面談室でしばらく待っていると、協会職員に案内されて依頼人が登場した。 頭髪が薄く、無精髭を生やした中年の男性である。
無精髭の男がアリスとエリカの座っている席に着こうとし、それを協会職員が慌てて制止する。
「あっ、そちらの席はハンターの方が座っていらっしゃるので」
「おお、なるほど透明なわけですな。 それでは私はこちらに」
依頼人が着席すると、職員は部屋から出て行った。
「えーと、そちらにハンターの方がいらっしゃるわけですね?」
アリスは返事代わりにベルを鳴らす。 チン。
「おや? ベルが返事の代わりですか? あなたは喋れない?」
チン。
「すると、あなたは噂のファントムさん?」
チン。
アリスが肯定すると、男は満足気に頷く。
「よしよし、それじゃあハンター・カードを拝見できますかな?」
アリスは首から下げているハンター・カードを机の上に置いた。
依頼人はカードを手に取り記載事項を確認すると、意外そうな声を出す。
「おや? ヒロサセ・アリスさんとおっしゃる?」
アリスはベルを鳴らす。チン。
「ふむ。 改めて確認しておきますが、ヒロサセさんはファントムさんなんですよね? 魔法で透明になっているのではなくて」
アリスがベルで肯定すると、男はいちおう納得したようで依頼の説明を始めた。
「ヒロサセさんには、とある犯罪組織に強奪された名画を奪回してもらいたいのです。 名画が犯罪組織の倉庫に保管されているという情報を入手したのですが、この倉庫の警戒が厳重でしてね。 しかし透明の人なら簡単に侵入できるだろうと。 そういうわけです」
アリスはベルをチンと鳴らして了解の意を伝える。
「じゃあ、さっそく倉庫に向かいましょうか。 ちゃんと付いてきて下さいね。 何しろ私にはあなたが見えない」
そう言って男は立ち上がり、部屋の出口へと向かった。 アリスがその後に続き、そのさらに後にエリカが続く。
アリスはチンチンとベルを鳴らして自らの存在を示すが、エリカはベルを鳴らさず自らの存在を明らかにしない。 エリカは髭の男の様子に警戒心を掻き立てられていた。
(杞憂で済めばいいんだけど...)
深刻な表情のエリカ。 だが心の奥底で彼女は、自分がこうして密かにアリスの後をついて行くのが役立つ事態 -ありていに言えば事件- が生じることを期待していた。
(でも心配しないでアリスちゃん。 何があっても大丈夫。 あなたの切り札があなたの真後ろにいるから!)
「最近モンスターが少ないし、今日は何か依頼でも探そうかしら」
ということで、エリカは今ハンター協会に来ている。
◇◆◇
窓口にマロン君がいたので、エリカはクーララ王国について尋ねてみた。
『クーララ王国ってどこにあるの?』
そう尋ねただけでマロン君は何があったかを察したようだ。
「クーララ王国のエージェントが勧誘に来ましたか?」
『よくわかったね』
「クーララ王国は、このミザル市から西に半月ほど歩いたところにあります。 ザンス帝国の南です」
『ザンス帝国って強いの? クーララ王国の人が「帝国の魔の手」とかって言ってたんだけど』
「この辺りの国々の中では一番の大国です。 クーララ王国はザンス帝国の属国のようなものですね。 領土や貿易の問題でザンス帝国に不利な条件を押し付けられています」
◇
マロン君との筆談を終え、エリカは依頼ボードへとやって来た。
「何か手頃な依頼はあるかしら? 私の長所を活かせて、楽に稼げて、今日1日で終えれるような...」
ボードに張られている依頼書を端からずらっと見ていると、エリカの体が突然よろめいた。
(あれ? この感じ前にも。 ひょっとしてアリスちゃん?)
エリカはマイ・ベルをチンと鳴らしてみた。 すると、しばらくしてチンと返事が鳴る。
(やっぱりアリスちゃんね。 依頼を探してるのかしら?)
アリスと少し話をしたいが、依頼ボードで筆談をするわけにもいかない。 エリカはベルの音でアリスを誘導した。 誘導先は1階フロアに設けられている談話エリア。 あそこなら小さいながらテーブルもある。
◇
『依頼を探してるの?』
『そうです。家にいてもヒマなので』
『万引きはしてない?』
『大丈夫です』
(大丈夫って...? してないってことでいいのよね?)
『そう? どんな依頼を探してるの?』
『私の長所を活かせて、楽に稼げて、今日1日で終わるような依頼です』
(私の条件と同じじゃない。 ライバルってわけね)
『何か良い依頼はあったかしら?』
『ありました。 これです』
アリスはすでに手頃な依頼を見つけ、依頼書をボードから引き剥がしていた。 エリカの目の前に差し出された依頼書には次のように書かれていた:
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透明の人材求ム
内容: 委細面談
条件: 透明であること
報酬: 30万ゴールド
期間: 1日
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(何この依頼? 他人に知覚されないってファントムさん以外にいないよね?)
『何だかうさん臭い気がするけど』
『私もそう思います。 でも、とりあえず依頼の内容を聞いてみようかなって』
『そうだね、意外にまともな依頼かもしれないもんね。 私も付いてっていいかな?』
『構いませんけど、この依頼は譲りませんよ?』
『心配しなくていいわよ。 興味本位だから』
依頼窓口に依頼書を持って行くと、依頼人が10分ほどで協会に来れるというので、アリスとエリカは面談用の部屋で先に待っていることになった。 エリカも以前に利用したことがある、6つのブースに仕切られた部屋だ。
◇
2人が面談室でしばらく待っていると、協会職員に案内されて依頼人が登場した。 頭髪が薄く、無精髭を生やした中年の男性である。
無精髭の男がアリスとエリカの座っている席に着こうとし、それを協会職員が慌てて制止する。
「あっ、そちらの席はハンターの方が座っていらっしゃるので」
「おお、なるほど透明なわけですな。 それでは私はこちらに」
依頼人が着席すると、職員は部屋から出て行った。
「えーと、そちらにハンターの方がいらっしゃるわけですね?」
アリスは返事代わりにベルを鳴らす。 チン。
「おや? ベルが返事の代わりですか? あなたは喋れない?」
チン。
「すると、あなたは噂のファントムさん?」
チン。
アリスが肯定すると、男は満足気に頷く。
「よしよし、それじゃあハンター・カードを拝見できますかな?」
アリスは首から下げているハンター・カードを机の上に置いた。
依頼人はカードを手に取り記載事項を確認すると、意外そうな声を出す。
「おや? ヒロサセ・アリスさんとおっしゃる?」
アリスはベルを鳴らす。チン。
「ふむ。 改めて確認しておきますが、ヒロサセさんはファントムさんなんですよね? 魔法で透明になっているのではなくて」
アリスがベルで肯定すると、男はいちおう納得したようで依頼の説明を始めた。
「ヒロサセさんには、とある犯罪組織に強奪された名画を奪回してもらいたいのです。 名画が犯罪組織の倉庫に保管されているという情報を入手したのですが、この倉庫の警戒が厳重でしてね。 しかし透明の人なら簡単に侵入できるだろうと。 そういうわけです」
アリスはベルをチンと鳴らして了解の意を伝える。
「じゃあ、さっそく倉庫に向かいましょうか。 ちゃんと付いてきて下さいね。 何しろ私にはあなたが見えない」
そう言って男は立ち上がり、部屋の出口へと向かった。 アリスがその後に続き、そのさらに後にエリカが続く。
アリスはチンチンとベルを鳴らして自らの存在を示すが、エリカはベルを鳴らさず自らの存在を明らかにしない。 エリカは髭の男の様子に警戒心を掻き立てられていた。
(杞憂で済めばいいんだけど...)
深刻な表情のエリカ。 だが心の奥底で彼女は、自分がこうして密かにアリスの後をついて行くのが役立つ事態 -ありていに言えば事件- が生じることを期待していた。
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