コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~

好きな言葉はタナボタ

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もしもし? わたしエリカ

ヒモネスが予感した「何者か」はザンス帝国軍の本営に潜入していた。 あれほどにヒモネス隊が恐れた帝国軍だが、認識外の存在である彼女にとっては潜入など散歩と変わらない。 いまエリカの目前には、モデル体型の女性と並んで立つヒモネスの後ろ姿があった。

ヒモネスの腰に得意げに腕を回す女性の後ろ姿を眺めながら、エリカは不思議に思う。

(この女がヒモネスさんを捕らえたの? こんなに痩せた人が?)

ヒモネス隊の女子隊員から聞かされて、エリカはヒモネスの強さもよく知っていた。 クーララ人としては異例の身体能力を持つうえ圧縮詠唱まで使えるのだという。 そのヒモネスが、この病的にスリムな女性に敗れたのだろうか?

(とりあえずヒモネスさんに接触してみよう)

ベルチンだと周囲の帝国兵にもエリカのメッセージが届いてしまう。 エリカは長らく封印していた《伝心》の呪文を使うことにした。 指向性ベルチンでもいいのだが、エリカは胸に期するところがあった。 《伝心》のスクロールを入手した塔で初めて《伝心》を使い、伝えたくないことまで相手に伝わって恥ずかしい思いをして以来、エリカは密かに《伝心》を練習していたのだ。

「今こそ練習の成果を試すとき! トキメキドキドキトルキリティス オトメノハートドキンチャン。 私の思いよ貴方に伝われ。 でんっ、 しんっ!」

《伝心》の呪文は滞りなく発動し、エリカはテレパシーで自分のメッセージを任意のターゲットに伝えられるようになった。 エリカは恐る恐るヒモネスにメッセージを送信する。

『もしもし? わたしエリカ。 あなたを助けに来たわ』

エリカのメッセージが頭に届いたのだろう、ヒモネスが身じろぎした。 そして長めの金髪の裾がふるふると動く。 メッセージの主を探して、ヒモネスが視線をあちこちに向けているのだ。 ちらっと見えた顔は噂にたがわず美形っぽい。 同時に、ヒモネスが猿轡を噛まされているのがエリカに見えた。

(もしかして猿轡? 猿轡されてる人を見るの初めて!)

美丈夫の猿轡姿さるぐつわすがたに胸を高鳴らすエリカ。

エリカに胸を高鳴らされているとはつゆ知らず、そのときヒモネスも謎の人物からの突然のメッセージに胸を高鳴らせていた。

(エリカとは誰だ? ひょっとして守護霊様なのでは!?)

ヒモネスは守護霊様の到来を予期していた。 エリカの指揮により十字路で敗退したミレイ隊の残党が敗北をミレイに報告したとき、ヒモネスもミレイの傍らに立ち彼女の骨っぽく冷たい手に尻を揉みしだかれながら残党の報告を聞いていたのだ。 ヒモネスは「IIB」の意味を知っていたので、自分の部下を救う「何者か」の正体が守護霊様だろうと考え、到来を心待ちにしていた。

エリカは再びヒモネスにメッセージを送る。

『あなたを縛っている縄と猿轡を外すから、あなたは逃げて。 圧縮詠唱で《加速》を唱えれば余裕で逃げれるでしょ?』

エリカはヒモネス隊の女子隊員から、ヒモネスが《加速》の呪文を使えることまで聞かされていた。 しかしヒモネスはそんなことを知らないので、エリカの持つ情報量に驚いた。

(なんてオレに詳しいんだ。 やはり、この方が守護霊様!)

女子隊員一同いちどうはからずも、エリカとヒモネスの邂逅かいこう円滑えんかつにせしめたのであった。
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