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第1部
第34話 「爪の話」
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今後はミツキがマリカを守る。 そういうことで話がまとまると、ミツキが何やら話題を変える様子である。
「ところでさ」
「なにかしら?」
「マリカは爪が伸びるのが早かったりしない?」
「爪?」
意外なことを尋ねるのね。 そういえば私は爪が伸びるのが早いけど...
「爪が伸びる早さがどうかしたの?」
「俺の目的に関係あるんだ」
「クイちゃんに目的なんてあったのね」
マリカは興味なさそうにコメントしたが、ミツキは熱意溢れる口調で語り始める。
「人間の女性との間に子供を作るんだ」
「ふ~ん。 どうして?」
クイちゃん自身が子供みたいなものなのに。
「クイックリングの繁栄のためさ。 2つの条件を満たす人間が特定の日にクイックリングと交わると子供ができる」
「条件を満たさない人はどうなるの?」マリカはからかうように尋ねる。「老化して死んじゃうの?」
「まさか。 単に子供ができないだけさ」
「じゃあ、2つの条件って?」
「1つはマリカも満たしてるよ」
ミツキは朗報を告げる口ぶりでそう言ったが、マリカは内心で警戒した。
(もし私がクイちゃんの求める条件を2つとも満たしてたら、クイちゃんは私を守る代価として子造りを要求してくるはず)
マリカは恐る恐る尋ねる。
「私が満たしてる条件って何?」
「魔法を使えること」
マリカはすでにミツキの前で何度も魔法を使っている。 マリカが魔法を使えることを今さら否定しても無意味だ。
「ふーん、じゃあもう1つは?」
マリカは何気なさを装って尋ねたが、内心ではドキドキしている。
(もしこっちの条件も満たしてたら、クイちゃんは私を...?)
ミツキはマリカの反応を見逃すまいとマリカの顔を覗き込みながら慎重に告げる。
「朔生まれであること。 朔生まれで魔法が使える者に限り、クイックリングとの間に子を成すことができるんだ」
マリカは心の中で絶叫する。
(朔生まれ! それ私のことじゃない!)
しかし、心中の絶叫は彼女の声にも表情にも些かも表れない。
「へー。 そうなんだ」
見事なポーカー・フェイスである。
マリカは朔の日に生まれた。 「朔」とは新月に月の光が見えなくなる瞬間のこと。 その朔が生じる日のことを「朔日」と言う。 魔法使いが朔に生まれつくと波乱に満ちた人生になるという古来の言い伝えがあるが、現在では迷信だとされている。
「ねえ、マリカは朔生まれだったりしない?」
マリカは鉄壁のポーカー・フェイスを維持する。
「違うわ。 私はむしろ満月の日の生まれね」
「そっかー、残念だなあ」
ミツキはマリカのポーカーフェイスを見破れなかった。 自分が探し求める女性が目前にいると看破できなかった。
マリカは平静を装って尋ねる。
「クイちゃんは、どうやって朔生まれの女性を見つけるつもりなの?」
今後のために知っておきたい。
「爪の伸びる早さだよ。 朔に生まれた人は爪が伸びるのが早いんだよね?」
マリカは合点がいった。
(それで爪の伸びる早さを尋ねてきたのね! そして、ええ、その通りよ。 朔生まれの私は爪が伸びるのが異様に早い。 週に1度は爪を切りたいの)
返事をしないマリカにミツキが重ねて問う。
「ねえ、マリカは爪が伸びるのが早かったりしない?」
彼はマリカとの子造りを諦めきれないらしい。
「普通だと思うわ。 満月生まれですもの」
「マリカはどれぐらいの頻度で爪を切るの?」
執拗に尋ねてくるミツキに、マリカは嘘をつくことにした。 だが他の人が爪を切る頻度をよく知らないので、念のために大きめの数字を出すことにした。
「そうね、半年に一度ぐらいかしら」
マリカの返答にミツキが驚愕する。
「えっ、ひと月に一度くらいじゃないの?」
(えっ、そんなものなの? 思ってたより私と違わない?)
「マリカの爪、伸びるのが遅すぎない? 本当に半年に一度なの?」
ミツキに勘ぐられてマリカはハラハラ。 しかし2人が主張する数字 ―ひと月と半年― には大きな隔たりがあり、今からマリカがミツキの主張する数字にすり寄るのは無理がある。 仕方なくマリカは嘘をつき通すことにした。 クイちゃん相手ならなんとかなる気がする。
「妖精はどうだか知らないけど、人間が爪を切る頻度は半年に一度よ。 もちろん個人差はあって、だいたい3ヶ月から1年に1度ってとこね。 満月生まれの私は普通だから半年に1度なの」
嘘をつくときには言葉数が増えるというが、今のマリカがその好例である。 しかし、言葉数の多い嘘が効果的なのもまた事実。 ミツキはマリカの嘘を信じ始めた。
「えー、そうなの?」
「そうなの」
だからもう爪の話はおしまいにしましょう?
「ところでさ」
「なにかしら?」
「マリカは爪が伸びるのが早かったりしない?」
「爪?」
意外なことを尋ねるのね。 そういえば私は爪が伸びるのが早いけど...
「爪が伸びる早さがどうかしたの?」
「俺の目的に関係あるんだ」
「クイちゃんに目的なんてあったのね」
マリカは興味なさそうにコメントしたが、ミツキは熱意溢れる口調で語り始める。
「人間の女性との間に子供を作るんだ」
「ふ~ん。 どうして?」
クイちゃん自身が子供みたいなものなのに。
「クイックリングの繁栄のためさ。 2つの条件を満たす人間が特定の日にクイックリングと交わると子供ができる」
「条件を満たさない人はどうなるの?」マリカはからかうように尋ねる。「老化して死んじゃうの?」
「まさか。 単に子供ができないだけさ」
「じゃあ、2つの条件って?」
「1つはマリカも満たしてるよ」
ミツキは朗報を告げる口ぶりでそう言ったが、マリカは内心で警戒した。
(もし私がクイちゃんの求める条件を2つとも満たしてたら、クイちゃんは私を守る代価として子造りを要求してくるはず)
マリカは恐る恐る尋ねる。
「私が満たしてる条件って何?」
「魔法を使えること」
マリカはすでにミツキの前で何度も魔法を使っている。 マリカが魔法を使えることを今さら否定しても無意味だ。
「ふーん、じゃあもう1つは?」
マリカは何気なさを装って尋ねたが、内心ではドキドキしている。
(もしこっちの条件も満たしてたら、クイちゃんは私を...?)
ミツキはマリカの反応を見逃すまいとマリカの顔を覗き込みながら慎重に告げる。
「朔生まれであること。 朔生まれで魔法が使える者に限り、クイックリングとの間に子を成すことができるんだ」
マリカは心の中で絶叫する。
(朔生まれ! それ私のことじゃない!)
しかし、心中の絶叫は彼女の声にも表情にも些かも表れない。
「へー。 そうなんだ」
見事なポーカー・フェイスである。
マリカは朔の日に生まれた。 「朔」とは新月に月の光が見えなくなる瞬間のこと。 その朔が生じる日のことを「朔日」と言う。 魔法使いが朔に生まれつくと波乱に満ちた人生になるという古来の言い伝えがあるが、現在では迷信だとされている。
「ねえ、マリカは朔生まれだったりしない?」
マリカは鉄壁のポーカー・フェイスを維持する。
「違うわ。 私はむしろ満月の日の生まれね」
「そっかー、残念だなあ」
ミツキはマリカのポーカーフェイスを見破れなかった。 自分が探し求める女性が目前にいると看破できなかった。
マリカは平静を装って尋ねる。
「クイちゃんは、どうやって朔生まれの女性を見つけるつもりなの?」
今後のために知っておきたい。
「爪の伸びる早さだよ。 朔に生まれた人は爪が伸びるのが早いんだよね?」
マリカは合点がいった。
(それで爪の伸びる早さを尋ねてきたのね! そして、ええ、その通りよ。 朔生まれの私は爪が伸びるのが異様に早い。 週に1度は爪を切りたいの)
返事をしないマリカにミツキが重ねて問う。
「ねえ、マリカは爪が伸びるのが早かったりしない?」
彼はマリカとの子造りを諦めきれないらしい。
「普通だと思うわ。 満月生まれですもの」
「マリカはどれぐらいの頻度で爪を切るの?」
執拗に尋ねてくるミツキに、マリカは嘘をつくことにした。 だが他の人が爪を切る頻度をよく知らないので、念のために大きめの数字を出すことにした。
「そうね、半年に一度ぐらいかしら」
マリカの返答にミツキが驚愕する。
「えっ、ひと月に一度くらいじゃないの?」
(えっ、そんなものなの? 思ってたより私と違わない?)
「マリカの爪、伸びるのが遅すぎない? 本当に半年に一度なの?」
ミツキに勘ぐられてマリカはハラハラ。 しかし2人が主張する数字 ―ひと月と半年― には大きな隔たりがあり、今からマリカがミツキの主張する数字にすり寄るのは無理がある。 仕方なくマリカは嘘をつき通すことにした。 クイちゃん相手ならなんとかなる気がする。
「妖精はどうだか知らないけど、人間が爪を切る頻度は半年に一度よ。 もちろん個人差はあって、だいたい3ヶ月から1年に1度ってとこね。 満月生まれの私は普通だから半年に1度なの」
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「えー、そうなの?」
「そうなの」
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