45 / 123
第1部
第44話 「名案」
しおりを挟む
籠を背負うのを中止して耳を澄ませていると、三叉路の道の1つから人がやって来る物音が聞こえてきた。
「本当ね。 人が来たみたい」
ミツキを落ち着かせようと、マリカは殊更にのんびりした口調でそう言った。
「4人だよ。 全員男だ」
マリカは振り向いて、自分の背後に潜むミツキに言う。
「もしものときは頼むわね?」
「ああ、任せとけ」
ミツキの居場所とは対照的に返事は頼もしい。
物音は近づき続け、やがて4人の男が山道から姿を現した。 4人とも背中に籠を背負い、弓を手にしている。
マリカとエライナを見た男たちが驚く。
「うお、女だ」
「なんていい女だ!」
「女だけか?」
マリカが予想していた通りの反応である。 マリカの傍らにはエライナもいるが、彼らの関心はマリカに集中している。 男たちはマリカの背後に隠れるミツキに気づかないようだった。
マリカは普通に挨拶をしてみた。
「ご機嫌よう。 あなたたちも食べ物を採りにいらしたの?」
男たちはマリカたちに近づきながら挨拶を返してきた。
「おう、ご機嫌よう」
「あんたら二人だけかい?」
「男はいねえのか?」
「なんならオレたちが」
すぐに襲い掛かって来る様子ではないが、マリカに異性としての興味を持っているのは明らか。 マリカが男連れでないと確認できれば襲い掛かって来るだろう。 そうなればマリカの背後から飛び出したミツキが男たちに襲い掛かり、殺すか気絶させるかするに違いない。 いまミツキは短刀を腰に帯びているから死人が出るのは確実だ。
彼らの生命を救うためマリカは告げる。
「男ならいるわよ。 とびきり危険なのが」
「どこにいるってんだ?」
それまで男たちはヨダレを垂らしそうなダラしない顔をしていたが、「危険」と聞いてヨダレを少しひっこめた。
「私の背後よ。 さあミツキ、出ていらっしゃい!」
ところがミツキは出てこなかった。 微発光した状態でマリカの背中にしがみついている。 ミツキの基準ではまだ、「もしものとき」ではなかった。
「出てこねえじゃねえか」
男たちは背伸びをするようにしてマリカの背中の後ろを覗き込んだ。
「お、たしかに誰かいるぜ。 まだガキだな?」
「なんだコイツ、光ってやがる」
微発光するミツキを見て、男たちの1人が顔色を変える。
「気を付けろ! こいつ、クイックリングだ!」
「クイックリング?」
「知らねえのか? 何日か前に流刑地に出没し始めたって話だ。 きのう何人もクイックリングにやられてんだぞ。 死人も出たって話だ」
そこでミツキがマリカの背中の後ろから顔を出した。
「そのクイックリングとは俺のことだな。 マリカを襲うつもりなら、お前らも同じ目に遭うぞ」
ミツキの微発光は収まっている。 ミツキは男たちが自分を恐れていると知って安心したのだ。
姿を現したミツキを見て、男たちは少し後ずさった。
「襲うつもりなんて端っからなかったさ。 なあ?」
「ああ。 別嬪さんがこんな森の中でどうしたんだろって思っただけだ」
「そうそう。 もう夕暮れが近いし、女の子だけだと危ないから町まで送って行ってあげようかと...」
男たちの弁解を聞くうちに、マリカの頭の中で1つの名案が浮かび始めた。
(町まで送ってくれる...? それには荷物を持つのも含まれるのよね?)
マリカは「町まで送って行く」と言ってくれた男を見据えて言う。
「私たちを町まで送ってくれるって本当かしら?」
男は慌てて答える。
「もちろんだよ。 なあ?」
「ああ。 女を守るのは男の務めだ」
さっきの弁解が嘘ではないことを示すため、男たちはマリカの要求に応えるしかなかった。
「本当ね。 人が来たみたい」
ミツキを落ち着かせようと、マリカは殊更にのんびりした口調でそう言った。
「4人だよ。 全員男だ」
マリカは振り向いて、自分の背後に潜むミツキに言う。
「もしものときは頼むわね?」
「ああ、任せとけ」
ミツキの居場所とは対照的に返事は頼もしい。
物音は近づき続け、やがて4人の男が山道から姿を現した。 4人とも背中に籠を背負い、弓を手にしている。
マリカとエライナを見た男たちが驚く。
「うお、女だ」
「なんていい女だ!」
「女だけか?」
マリカが予想していた通りの反応である。 マリカの傍らにはエライナもいるが、彼らの関心はマリカに集中している。 男たちはマリカの背後に隠れるミツキに気づかないようだった。
マリカは普通に挨拶をしてみた。
「ご機嫌よう。 あなたたちも食べ物を採りにいらしたの?」
男たちはマリカたちに近づきながら挨拶を返してきた。
「おう、ご機嫌よう」
「あんたら二人だけかい?」
「男はいねえのか?」
「なんならオレたちが」
すぐに襲い掛かって来る様子ではないが、マリカに異性としての興味を持っているのは明らか。 マリカが男連れでないと確認できれば襲い掛かって来るだろう。 そうなればマリカの背後から飛び出したミツキが男たちに襲い掛かり、殺すか気絶させるかするに違いない。 いまミツキは短刀を腰に帯びているから死人が出るのは確実だ。
彼らの生命を救うためマリカは告げる。
「男ならいるわよ。 とびきり危険なのが」
「どこにいるってんだ?」
それまで男たちはヨダレを垂らしそうなダラしない顔をしていたが、「危険」と聞いてヨダレを少しひっこめた。
「私の背後よ。 さあミツキ、出ていらっしゃい!」
ところがミツキは出てこなかった。 微発光した状態でマリカの背中にしがみついている。 ミツキの基準ではまだ、「もしものとき」ではなかった。
「出てこねえじゃねえか」
男たちは背伸びをするようにしてマリカの背中の後ろを覗き込んだ。
「お、たしかに誰かいるぜ。 まだガキだな?」
「なんだコイツ、光ってやがる」
微発光するミツキを見て、男たちの1人が顔色を変える。
「気を付けろ! こいつ、クイックリングだ!」
「クイックリング?」
「知らねえのか? 何日か前に流刑地に出没し始めたって話だ。 きのう何人もクイックリングにやられてんだぞ。 死人も出たって話だ」
そこでミツキがマリカの背中の後ろから顔を出した。
「そのクイックリングとは俺のことだな。 マリカを襲うつもりなら、お前らも同じ目に遭うぞ」
ミツキの微発光は収まっている。 ミツキは男たちが自分を恐れていると知って安心したのだ。
姿を現したミツキを見て、男たちは少し後ずさった。
「襲うつもりなんて端っからなかったさ。 なあ?」
「ああ。 別嬪さんがこんな森の中でどうしたんだろって思っただけだ」
「そうそう。 もう夕暮れが近いし、女の子だけだと危ないから町まで送って行ってあげようかと...」
男たちの弁解を聞くうちに、マリカの頭の中で1つの名案が浮かび始めた。
(町まで送ってくれる...? それには荷物を持つのも含まれるのよね?)
マリカは「町まで送って行く」と言ってくれた男を見据えて言う。
「私たちを町まで送ってくれるって本当かしら?」
男は慌てて答える。
「もちろんだよ。 なあ?」
「ああ。 女を守るのは男の務めだ」
さっきの弁解が嘘ではないことを示すため、男たちはマリカの要求に応えるしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる