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第2部
第8話 「ミツキを大切に」
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爪を切ってスッキリしたマリカは治療院に戻った。 さっきの事件は気懸かりだが、今からミツキを探す当てもない。 ミツキが家に帰ってきたら問い詰めよう。
治療院はマリカが開設した機関で、マリカの《治癒》が目玉サービスだ。 治療院の利用は今のところは無料である。 マリカの派閥の者しか利用していないから。 だが将来的には他派閥にも治療院を開放して、他派閥のボスや幹部から高額の治療費をいただく予定である。
◇❖◇
待望の爪切りの最中にも、治療院で働いているときにも、マリカの心はずっと先ほどの一件で占められていた。 マリカの悩みは次の2つだ:
1. あの人はいつからミツキと一緒にいたの? 行列に並ぶ前から? それとも行列でたまたまミツキの後ろに並んだの?
2. 行列が解散したあと、ミツキはちゃんとオリエさんと別れたのかしら? それとも...
治療院での仕事を終えて家に戻るまで、この2つの疑問にマリカは悩まされ続けた。
◇❖◇❖◇
マリカが帰宅したとき、ミツキはまだ家に戻っていなかった。 ミツキの帰りが遅いのは今日に限らないが、今はミツキの帰りの遅さもマリカの不安をかきたてる材料である。
(もう! あの子ったら、こんな時間までどこをほっつき歩いてるのかしら)
イライラとミツキの帰りを待ちながら、マリカは再び悩み始める。 初めのうちマリカは前述の2つの疑問を中心に悩み抜いていたが、一向に戻らないミツキを待つうちに彼女の悩みは次のステージへと進んだ。 オリエにミツキを奪われた場合のことを考え始めたのだ。
(もしもオリエさんにミツキを取られたら...)
マリカは恐る恐る考え始める。 ミツキがマリカと別れたというニュースが広まると同時に、マリカの派閥の男たちは ―護衛チームの男たちでさえ― ケダモノに戻ってマリカの肉体を狙い始めるだろう。 襲ってくる相手が1人なら撃退できるかもしれないが、複数の男に同時に襲い掛かられれば撃退は不可能。 手籠めにされてしまうのは確実である。
マリカに救われたかつてのコモノや共用女はパンピー男たちの獣欲に蹂躙されるマリカに同情することだろうが、それだけだ。 彼らにマリカを守る力はない。 マリカがパンピー男どもに乱暴に組み敷かれ悲鳴を上げるのを、コモノたちが指をくわえて遠巻きに眺める。 そんな情景が目に浮かぶようだ。
ミツキを失ったマリカが運よく派閥の居住区を脱出できるなら、彼女はジュニアに助けを求めることになる。 ジュニアは嬉々としてマリカを保護するに違いないが、それはマリカがジュニアの女になることを意味する。
ミツキをオリエに奪われれば必ずそんな展開になる。
(そうだった。 流刑地はそういう場所だった)
ミツキをオリエに奪われて悲惨な運命を辿るのはマリカだけではない。 マリカの派閥が他の派閥に征服されるにしても、マリカの派閥内から新たなボスが誕生するにしても、マリカの支配下でコモノ/共用女の身分を脱した男女は再びコモノ/共用女に戻されて暗黒の日々を再開することになる。
ミツキに出会ってからマリカは流刑地の過酷さをすっかり忘れていた。 ミツキの存在がマリカを流刑地の脅威から遮断してくれていたのだ。
(私がミツキに出会えたのは本当に幸運だった...)
しかし今、マリカはその幸運を失おうとしている。
考えすぎで熱っぽい頭の中でマリカは力いっぱい叫ぶ。
(これからはもっとミツキを大切にする! だから私のもとへ戻って来て、ミツキ!)
すると玄関のほうでドアがガラガラっと開く音がして、ミツキの呑気な声が聞こえて来た。
「ただいまー」
それはまるで天の神様がマリカの真摯な願いを聞き届けたかのようであった。 そして、そう、マリカの家の玄関は引き戸であった。
治療院はマリカが開設した機関で、マリカの《治癒》が目玉サービスだ。 治療院の利用は今のところは無料である。 マリカの派閥の者しか利用していないから。 だが将来的には他派閥にも治療院を開放して、他派閥のボスや幹部から高額の治療費をいただく予定である。
◇❖◇
待望の爪切りの最中にも、治療院で働いているときにも、マリカの心はずっと先ほどの一件で占められていた。 マリカの悩みは次の2つだ:
1. あの人はいつからミツキと一緒にいたの? 行列に並ぶ前から? それとも行列でたまたまミツキの後ろに並んだの?
2. 行列が解散したあと、ミツキはちゃんとオリエさんと別れたのかしら? それとも...
治療院での仕事を終えて家に戻るまで、この2つの疑問にマリカは悩まされ続けた。
◇❖◇❖◇
マリカが帰宅したとき、ミツキはまだ家に戻っていなかった。 ミツキの帰りが遅いのは今日に限らないが、今はミツキの帰りの遅さもマリカの不安をかきたてる材料である。
(もう! あの子ったら、こんな時間までどこをほっつき歩いてるのかしら)
イライラとミツキの帰りを待ちながら、マリカは再び悩み始める。 初めのうちマリカは前述の2つの疑問を中心に悩み抜いていたが、一向に戻らないミツキを待つうちに彼女の悩みは次のステージへと進んだ。 オリエにミツキを奪われた場合のことを考え始めたのだ。
(もしもオリエさんにミツキを取られたら...)
マリカは恐る恐る考え始める。 ミツキがマリカと別れたというニュースが広まると同時に、マリカの派閥の男たちは ―護衛チームの男たちでさえ― ケダモノに戻ってマリカの肉体を狙い始めるだろう。 襲ってくる相手が1人なら撃退できるかもしれないが、複数の男に同時に襲い掛かられれば撃退は不可能。 手籠めにされてしまうのは確実である。
マリカに救われたかつてのコモノや共用女はパンピー男たちの獣欲に蹂躙されるマリカに同情することだろうが、それだけだ。 彼らにマリカを守る力はない。 マリカがパンピー男どもに乱暴に組み敷かれ悲鳴を上げるのを、コモノたちが指をくわえて遠巻きに眺める。 そんな情景が目に浮かぶようだ。
ミツキを失ったマリカが運よく派閥の居住区を脱出できるなら、彼女はジュニアに助けを求めることになる。 ジュニアは嬉々としてマリカを保護するに違いないが、それはマリカがジュニアの女になることを意味する。
ミツキをオリエに奪われれば必ずそんな展開になる。
(そうだった。 流刑地はそういう場所だった)
ミツキをオリエに奪われて悲惨な運命を辿るのはマリカだけではない。 マリカの派閥が他の派閥に征服されるにしても、マリカの派閥内から新たなボスが誕生するにしても、マリカの支配下でコモノ/共用女の身分を脱した男女は再びコモノ/共用女に戻されて暗黒の日々を再開することになる。
ミツキに出会ってからマリカは流刑地の過酷さをすっかり忘れていた。 ミツキの存在がマリカを流刑地の脅威から遮断してくれていたのだ。
(私がミツキに出会えたのは本当に幸運だった...)
しかし今、マリカはその幸運を失おうとしている。
考えすぎで熱っぽい頭の中でマリカは力いっぱい叫ぶ。
(これからはもっとミツキを大切にする! だから私のもとへ戻って来て、ミツキ!)
すると玄関のほうでドアがガラガラっと開く音がして、ミツキの呑気な声が聞こえて来た。
「ただいまー」
それはまるで天の神様がマリカの真摯な願いを聞き届けたかのようであった。 そして、そう、マリカの家の玄関は引き戸であった。
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