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そうなんですか……もしかして、今も続いてたりします?」
 私は出来るだけ冗談でも言うように、その僧侶に訊ねましかた。
「さぁ、どうでしょうね」
 僧侶はただ、笑うばかりです。

 私はそれが妙に不安で仕方ありませんでした。
 そんな妖怪なんているわけがないと言って欲しかったのです。

 絵の中で打ち据えられている妖怪は、妙に離れてギョロっとした目やまるで裂けたように大きな口を持っていた。それは両生類や魚類、そしてあのお爺さんを思わせました。



 私があのおまじないを使ったのは、あの一回きりです。
 今は赤原町を出て独り暮らしをしていますが、時々喜陽川のことが脳裏に浮かびます。
 そのたびに私は、あの澱んだ川から伸びる、ぶよぶよとした冷たい手に引き込まれる自分を思い描いては振り払うことを繰り返しています。
 もしかすると、他の誰かが私にまじないをかけるのではないか……そんな想像が、未だに私を苛むのです。
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