19 / 29
ナストとフラストとヴァルア
1話【ナストとフラストとヴァルア】
しおりを挟む
インキュバス・テールに淫紋を付けられ、そしてフラスト様のおかげで消えたあの日から一週間が経った。その翌日に一日中一緒に過ごしてから、また僕はヴァルア様と会えていない。あの日仕事を放り投げて城に戻って来た(あまつさえ一日中僕を抱いた)せいで、仕事がさらに溜まってしまったようだ。あと一週間は帰れないだろうと、数日前にヴァルア様から手紙が届いた。
「ねえ、アリス。お願いだから僕のペニスを楽にしてよ」
「いけません。私がナスト様に快感を与えるなんて、そんな恐れ多いことはとても」
「そんなこと言わずに、僕のためだと思ってさ。そうじゃないと僕どうにかなっちゃうよ」
いくらお願いしても、アリスは頑なに首を横に振った。ほんのり頬を赤らめている。
「で、でしたら、ナスト様ご自身でなさってください! あなたはもうご自身の体に触れていいのですよ」
「それができないから困ってるんだよ。できるならやってる」
長年触れてはいけないと言いつけられてきた体は、未だにその掟を破ることを拒絶する。
アリスが部屋を去ったあと、僕はベッドに腰掛け寝衣をめくり上げた。何もしていないのにペニスが勃起している。カウパーまで垂らしているのに、誰も僕に触れてくれない。
僕は、今日こそ自慰をするぞと意気込んだ。これからもきっと、ヴァルア様と会えない日の方が多いのだから、自分で性欲の処理くらいできるようにならねば。
ペニスに手を伸ばす。ペニスが快感を期待してぴくりと動いた。あと数ミリで握れるというところまではいけるのだが――
「やっぱりダメ!!」
どうしても、自身のペニスを握ることができない。
「辛い……」
ヴァルア様。早く帰って来てください。僕のペニスはもう限界です。自分ではまだどうしようもできないんです。
「うぅぅ……」
いや、ダメだ。ヴァルア様に甘えてばかりでは、僕はいつまで経っても成長できない。
自慰を。自慰をできるようにならねば。自慰を!
反り返っているペニスを握ろうと四苦八苦している最中に、ノックもなしにドアが開いた。
「ナスト。父上からお前に――」
「……」
贈り物を抱えるフラスト様が入って来た。勃起したペニスを丸出しにしている僕と目が合うや否や、彼は何も言わずにドアを閉めた。
「フラスト様! お待ちください!!」
「……なんだ。俺は忙しいんだ」
呼び止めると、ドアをほんの少し開けた隙間からめんどくさそうな声が返ってきた。
「フラスト様! お、お願いがあります……」
「断る」
「まだ何も言っていません」
「そのペニスをどうにかしろとでも言うのだろうこの淫乱め」
「うっ……。で、でも、お願いできる人がフラスト様しかいなくて……」
「どうして俺になら頼めるんだ。頼めると思うんじゃない」
僕はドアをもう少し開けた。フラスト様の片目がやっと見えるくらいの狭い隙間だ。
僕と目が合ったフラスト様は、憎々しげに僕を睨んだ。
「だからそんな目で俺を見るな」
「ぼ、僕ってどんな目でフラスト様を見ているんでしょうか……。いつもそうやって叱られます」
「……」
「フラスト様にそういったことを言われると、悲しくなります。嫌われているんじゃないかと……」
「……嫌いたいんだと言っているだろう」
「嫌わないでください……」
ドアの奥で深いため息が聞こえた。それからまた少しドアが開く。今度はフラスト様の顔がしっかり見えた。とても苛立っているような表情をしている。
「お前は俺の気も知らずにそんなことを言う」
「す、すみません……」
「何も分かっていないのに謝るな」
「……」
フラスト様は難しい。何を考えているのか、何を思っているのかを言葉には出してくれない。口から出るのは、思ってもいないことか、皮肉か、遠回しすぎてよく分からない言葉だ。
でもあの日、僕はフラスト様の優しさを知ってしまった。本当は僕のことを大切に想ってくれていることや、僕に好意を抱いてくれていることも。
「僕はあなたに嫌われたくありません」
「まだ言うのか」
「……」
「だからそんな目で……」
と言いかけて、フラスト様は口を噤んだ。僕が言われたくないと言ったから途中で止めてくれたんだ。やはりフラスト様は優しい。
「……僕、ずっと毎日性行為をしていました。だからその行為は、排泄と同じくらい、毎日して当たり前のことだったんです。それをここのところあまりできていないから、とても苦しくて……。でも、自分では触れられないし、アリスにも断られるしで……。お願いできるのがフラスト様しか……」
「俺じゃなくとも、そこらへんの使用人に頼んだら喜んでしてくれるだろう。親父だって乗り気でしてくれるはずだ。それなのになぜ俺にしか頼めないんだ」
「……触れられたいと思えるのが、あなたしかいないんです」
ドアが勢いよく開いた。フラスト様は僕の手を引いてズカズカとベッドまで進み、僕をベッドに放り投げた。
「うっ」
「俺にそんな文句、よく言えたものだな」
「ねえ、アリス。お願いだから僕のペニスを楽にしてよ」
「いけません。私がナスト様に快感を与えるなんて、そんな恐れ多いことはとても」
「そんなこと言わずに、僕のためだと思ってさ。そうじゃないと僕どうにかなっちゃうよ」
いくらお願いしても、アリスは頑なに首を横に振った。ほんのり頬を赤らめている。
「で、でしたら、ナスト様ご自身でなさってください! あなたはもうご自身の体に触れていいのですよ」
「それができないから困ってるんだよ。できるならやってる」
長年触れてはいけないと言いつけられてきた体は、未だにその掟を破ることを拒絶する。
アリスが部屋を去ったあと、僕はベッドに腰掛け寝衣をめくり上げた。何もしていないのにペニスが勃起している。カウパーまで垂らしているのに、誰も僕に触れてくれない。
僕は、今日こそ自慰をするぞと意気込んだ。これからもきっと、ヴァルア様と会えない日の方が多いのだから、自分で性欲の処理くらいできるようにならねば。
ペニスに手を伸ばす。ペニスが快感を期待してぴくりと動いた。あと数ミリで握れるというところまではいけるのだが――
「やっぱりダメ!!」
どうしても、自身のペニスを握ることができない。
「辛い……」
ヴァルア様。早く帰って来てください。僕のペニスはもう限界です。自分ではまだどうしようもできないんです。
「うぅぅ……」
いや、ダメだ。ヴァルア様に甘えてばかりでは、僕はいつまで経っても成長できない。
自慰を。自慰をできるようにならねば。自慰を!
反り返っているペニスを握ろうと四苦八苦している最中に、ノックもなしにドアが開いた。
「ナスト。父上からお前に――」
「……」
贈り物を抱えるフラスト様が入って来た。勃起したペニスを丸出しにしている僕と目が合うや否や、彼は何も言わずにドアを閉めた。
「フラスト様! お待ちください!!」
「……なんだ。俺は忙しいんだ」
呼び止めると、ドアをほんの少し開けた隙間からめんどくさそうな声が返ってきた。
「フラスト様! お、お願いがあります……」
「断る」
「まだ何も言っていません」
「そのペニスをどうにかしろとでも言うのだろうこの淫乱め」
「うっ……。で、でも、お願いできる人がフラスト様しかいなくて……」
「どうして俺になら頼めるんだ。頼めると思うんじゃない」
僕はドアをもう少し開けた。フラスト様の片目がやっと見えるくらいの狭い隙間だ。
僕と目が合ったフラスト様は、憎々しげに僕を睨んだ。
「だからそんな目で俺を見るな」
「ぼ、僕ってどんな目でフラスト様を見ているんでしょうか……。いつもそうやって叱られます」
「……」
「フラスト様にそういったことを言われると、悲しくなります。嫌われているんじゃないかと……」
「……嫌いたいんだと言っているだろう」
「嫌わないでください……」
ドアの奥で深いため息が聞こえた。それからまた少しドアが開く。今度はフラスト様の顔がしっかり見えた。とても苛立っているような表情をしている。
「お前は俺の気も知らずにそんなことを言う」
「す、すみません……」
「何も分かっていないのに謝るな」
「……」
フラスト様は難しい。何を考えているのか、何を思っているのかを言葉には出してくれない。口から出るのは、思ってもいないことか、皮肉か、遠回しすぎてよく分からない言葉だ。
でもあの日、僕はフラスト様の優しさを知ってしまった。本当は僕のことを大切に想ってくれていることや、僕に好意を抱いてくれていることも。
「僕はあなたに嫌われたくありません」
「まだ言うのか」
「……」
「だからそんな目で……」
と言いかけて、フラスト様は口を噤んだ。僕が言われたくないと言ったから途中で止めてくれたんだ。やはりフラスト様は優しい。
「……僕、ずっと毎日性行為をしていました。だからその行為は、排泄と同じくらい、毎日して当たり前のことだったんです。それをここのところあまりできていないから、とても苦しくて……。でも、自分では触れられないし、アリスにも断られるしで……。お願いできるのがフラスト様しか……」
「俺じゃなくとも、そこらへんの使用人に頼んだら喜んでしてくれるだろう。親父だって乗り気でしてくれるはずだ。それなのになぜ俺にしか頼めないんだ」
「……触れられたいと思えるのが、あなたしかいないんです」
ドアが勢いよく開いた。フラスト様は僕の手を引いてズカズカとベッドまで進み、僕をベッドに放り投げた。
「うっ」
「俺にそんな文句、よく言えたものだな」
45
あなたにおすすめの小説
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
学園の卒業パーティーで卒業生全員の筆下ろしを終わらせるまで帰れない保険医
ミクリ21
BL
学園の卒業パーティーで、卒業生達の筆下ろしをすることになった保険医の話。
筆下ろしが終わるまで、保険医は帰れません。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました
すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。
第二話「兄と呼べない理由」
セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。
第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。
躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。
そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。
第四話「誘惑」
セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。
愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。
第五話「月夜の口づけ」
セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる