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第一章
第九話
次の日の校内放送は、知らん女子の声だった。その次の日も、さらにその次の日も……
ナオの声に戻ったのは、あの日から四日目のことだった。
その校内放送を聞き、俺は教室を飛び出した。
少しホッとした。放送室にはナオ一人だった。
「ナオ」
ナオはそっぽを向いたまま、口を開く。
「……この前はごめん」
「別に、いいけど。もう体は大丈夫?」
「……」
「あ……ごめん。今のナシ」
「……大丈夫」
「そ、そっか。よかった」
ナオの肩がちょっと震えている。
「……ほんとはさ、ちょっと怖いんだ。君とここで二人きりなの」
「……俺がアルファだから?」
ナオが小さく頷いた。
「実はずっと怖かった。だから、君と二人でお昼ごはんを食べてる間はいつも、真人に通話を繋いでもらってたんだ」
「はっ!? そうなの!?」
「……ごめん」
それってさ、俺に襲われることを警戒していたってことだよな……。あと、真人のことをめちゃくちゃ信用しているってことでもある……。
真人のことを思い浮かべて胸がズクッとした。
「でも、思ったより君がそういう感じじゃなかったから、ちょっと安心してはいたんだ」
「おい……当たり前だろう。アルファのことをなんだと思ってるんだ。相手の許可なくヤるわけないだろ……」
「そういうアルファもいるんだよ。でね、襲われたって、無警戒だったオメガが悪いって言われるんだ」
「んなわけねーだろ。襲ったほうが悪いに決まってる」
ナオがやっとこっちを向いた。泣きそうな顔で微笑んでいる。それは、いろんなことを諦めた人みたいな表情だった。
「君はバカだけど、やけに真っ当だね」
「普通のこと言ってるだけど」
俺が当然のことのように思っている〝普通〟は、ナオにとっての〝普通〟じゃないようだ。
……こいつは今までどんなクズアルファと関わってきたんだろう。そんなことをするヤツなんて、アルファでもなんでもない。ただの猿だ。そんなクズと俺を同じにするなっ。
ナオはモジモジと足を揺らす。
「この前のことなんだけど。朝から変だなって思ってたんだ。もしかしたらアレが来るかもしれないって予測してて。だから、万が一に備えて、真人を連れてきたんだ」
「……あ、そ」
「別に、嫌がらせをしたかったわけじゃないんだよ。ただの自己防衛」
ナオの一言で、ほんのちょっとだけ、モヤモヤが消えた。
でも、ほんのちょっとだけだ。まだ全然モヤモヤだ。
「……あの、さ」
「ん?」
「その……真人と、どういう関係……?」
「……」
ナオは俺をじーっと見た。その視線がいやで、だんだん俺の頭が垂れていく。
ナオが淡々と説明しはじめる。
「真人は僕の幼馴染。お隣さんで、家族ぐるみで仲が良いんだ」
おいぃ……。なんだ、その羨ましすぎる関係性はぁ……。
「真人は僕が一番信用してる人」
「……付き合ったりとかは……」
「してないよ。……してないよ!?」
なんでそこで声を荒らげる。
「もしかして、好きだったりする?」
「好きだよ? 恋愛としてじゃなく、ね」
ホッ……と胸が軽くなった。
でも……
「あの、さ……。デリカシーのないこと、聞いていい……?」
「なに?」
「その……友だちのベータが言ってたんだけどさ……。えっと、オメガが、その……ベータを、発情期限定のセフレにするのがメジャーとか、なんとか……って……」
「……」
「……」
「君、ほんとにデリカシーないね」
「……ごめん」
ナオが大きなため息を吐く。
「僕がそんなことをする人に見える?」
「見えない。見えないけど……でも……真人がスマホで……あんたの周期とか管理してたし……」
「目ざといな……。それは、僕が自分の周期すらまともに管理しないズボラだからってだけ」
「でも……あの日、真人と一緒に帰ったぁ……」
「送ってもらっただけだって……」
まあでも、とナオがボソッと呟く。
「真人には辛い思いをさせてるんだろうけど……」
「え? なんて……?」
「……僕が真人を一番信頼してる理由、なんだと思う?」
「分かんねえよ……。考えたくもねえ、あいつのことなんか……」
「君からこの話題を出したんじゃないか……。あのね。真人が……僕のどんな姿を見ても、理性を失わないからだよ」
「……」
ナオとは付き合いが短いけど、ナオらしい理由だなって思えた。
「アルファじゃなくたって……ベータですら、発情期のオメガを目の前にしたら、普通は理性が吹き飛ぶ」
「……だろうな」
「でも、真人はそんなことにならない。みっともない僕を見たって、黙々と世話をして――」
「世話ぁ!?」
「薬を飲ませたり、服を着替えさせたりするだけだよ!!」
「服ぅ!?」
「あのね……真人と僕は、三歳のときから一緒に温泉に入ってるんだよ……」
「温泉!?」
「家族ぐるみで旅行したりするんだよ!!」
「旅行ぅ!?!?」
「いちいち食いつくな!!」
聞けば聞くほど真人が憎たらしくなっていくぜ……。
「つまり!! 僕と真人はそんな汚らわしい関係じゃないんだよ!! そんな勘違いしないでもらえる!? 真人に失礼でしょ!!」
「……」
「……」
「……」
「……大丈夫?」
大丈夫かと訊かれたら、ぶっちゃけ大丈夫じゃないかもしれない。なんか、今までに経験したことのないモヤモヤが全然なくならない。
でも――
「……ありがと」
「そこでどうして〝ありがとう〟?」
「教えてくれて」
「……うん」
「この前のこと、なかったことにもできたのに。自分から事情説明してくれたのが、なんか嬉しかった」
「僕は誠実なんだよ」
「うん、そうだと思う」
「君は……」
ナオは少し言葉をためてから、微笑んだ。
「思ってたより、良い人だ」
「――……」
良い人、か。
もしかしたら、言われたことなかったかも。
良いアルファとか、良い顔とか、そんなことは山ほど言われてきたけど。
良い人、か。
なんだろ。じんわり、あったかい言葉だ。
ナオの声に戻ったのは、あの日から四日目のことだった。
その校内放送を聞き、俺は教室を飛び出した。
少しホッとした。放送室にはナオ一人だった。
「ナオ」
ナオはそっぽを向いたまま、口を開く。
「……この前はごめん」
「別に、いいけど。もう体は大丈夫?」
「……」
「あ……ごめん。今のナシ」
「……大丈夫」
「そ、そっか。よかった」
ナオの肩がちょっと震えている。
「……ほんとはさ、ちょっと怖いんだ。君とここで二人きりなの」
「……俺がアルファだから?」
ナオが小さく頷いた。
「実はずっと怖かった。だから、君と二人でお昼ごはんを食べてる間はいつも、真人に通話を繋いでもらってたんだ」
「はっ!? そうなの!?」
「……ごめん」
それってさ、俺に襲われることを警戒していたってことだよな……。あと、真人のことをめちゃくちゃ信用しているってことでもある……。
真人のことを思い浮かべて胸がズクッとした。
「でも、思ったより君がそういう感じじゃなかったから、ちょっと安心してはいたんだ」
「おい……当たり前だろう。アルファのことをなんだと思ってるんだ。相手の許可なくヤるわけないだろ……」
「そういうアルファもいるんだよ。でね、襲われたって、無警戒だったオメガが悪いって言われるんだ」
「んなわけねーだろ。襲ったほうが悪いに決まってる」
ナオがやっとこっちを向いた。泣きそうな顔で微笑んでいる。それは、いろんなことを諦めた人みたいな表情だった。
「君はバカだけど、やけに真っ当だね」
「普通のこと言ってるだけど」
俺が当然のことのように思っている〝普通〟は、ナオにとっての〝普通〟じゃないようだ。
……こいつは今までどんなクズアルファと関わってきたんだろう。そんなことをするヤツなんて、アルファでもなんでもない。ただの猿だ。そんなクズと俺を同じにするなっ。
ナオはモジモジと足を揺らす。
「この前のことなんだけど。朝から変だなって思ってたんだ。もしかしたらアレが来るかもしれないって予測してて。だから、万が一に備えて、真人を連れてきたんだ」
「……あ、そ」
「別に、嫌がらせをしたかったわけじゃないんだよ。ただの自己防衛」
ナオの一言で、ほんのちょっとだけ、モヤモヤが消えた。
でも、ほんのちょっとだけだ。まだ全然モヤモヤだ。
「……あの、さ」
「ん?」
「その……真人と、どういう関係……?」
「……」
ナオは俺をじーっと見た。その視線がいやで、だんだん俺の頭が垂れていく。
ナオが淡々と説明しはじめる。
「真人は僕の幼馴染。お隣さんで、家族ぐるみで仲が良いんだ」
おいぃ……。なんだ、その羨ましすぎる関係性はぁ……。
「真人は僕が一番信用してる人」
「……付き合ったりとかは……」
「してないよ。……してないよ!?」
なんでそこで声を荒らげる。
「もしかして、好きだったりする?」
「好きだよ? 恋愛としてじゃなく、ね」
ホッ……と胸が軽くなった。
でも……
「あの、さ……。デリカシーのないこと、聞いていい……?」
「なに?」
「その……友だちのベータが言ってたんだけどさ……。えっと、オメガが、その……ベータを、発情期限定のセフレにするのがメジャーとか、なんとか……って……」
「……」
「……」
「君、ほんとにデリカシーないね」
「……ごめん」
ナオが大きなため息を吐く。
「僕がそんなことをする人に見える?」
「見えない。見えないけど……でも……真人がスマホで……あんたの周期とか管理してたし……」
「目ざといな……。それは、僕が自分の周期すらまともに管理しないズボラだからってだけ」
「でも……あの日、真人と一緒に帰ったぁ……」
「送ってもらっただけだって……」
まあでも、とナオがボソッと呟く。
「真人には辛い思いをさせてるんだろうけど……」
「え? なんて……?」
「……僕が真人を一番信頼してる理由、なんだと思う?」
「分かんねえよ……。考えたくもねえ、あいつのことなんか……」
「君からこの話題を出したんじゃないか……。あのね。真人が……僕のどんな姿を見ても、理性を失わないからだよ」
「……」
ナオとは付き合いが短いけど、ナオらしい理由だなって思えた。
「アルファじゃなくたって……ベータですら、発情期のオメガを目の前にしたら、普通は理性が吹き飛ぶ」
「……だろうな」
「でも、真人はそんなことにならない。みっともない僕を見たって、黙々と世話をして――」
「世話ぁ!?」
「薬を飲ませたり、服を着替えさせたりするだけだよ!!」
「服ぅ!?」
「あのね……真人と僕は、三歳のときから一緒に温泉に入ってるんだよ……」
「温泉!?」
「家族ぐるみで旅行したりするんだよ!!」
「旅行ぅ!?!?」
「いちいち食いつくな!!」
聞けば聞くほど真人が憎たらしくなっていくぜ……。
「つまり!! 僕と真人はそんな汚らわしい関係じゃないんだよ!! そんな勘違いしないでもらえる!? 真人に失礼でしょ!!」
「……」
「……」
「……」
「……大丈夫?」
大丈夫かと訊かれたら、ぶっちゃけ大丈夫じゃないかもしれない。なんか、今までに経験したことのないモヤモヤが全然なくならない。
でも――
「……ありがと」
「そこでどうして〝ありがとう〟?」
「教えてくれて」
「……うん」
「この前のこと、なかったことにもできたのに。自分から事情説明してくれたのが、なんか嬉しかった」
「僕は誠実なんだよ」
「うん、そうだと思う」
「君は……」
ナオは少し言葉をためてから、微笑んだ。
「思ってたより、良い人だ」
「――……」
良い人、か。
もしかしたら、言われたことなかったかも。
良いアルファとか、良い顔とか、そんなことは山ほど言われてきたけど。
良い人、か。
なんだろ。じんわり、あったかい言葉だ。
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