【完結】【BL】気付いてないのは篠原だけだよ。【オメガバース】

ちゃっぷす

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第一章

第十一話

 ――ナオから連絡が来ない。
 なんでだよ。連絡先を交換したんだぞ? 連絡してくるだろう、普通。
 なんだ。恥ずかしがっているのか? 奥手のツンデレだもんな、あいつ。

 しかたねえ。しかたねえから、あいつのために俺から連絡してやるか。
 全く。世話のかかるオメガだぜ。

《なにしてんのー?》

 ……既読が付かない。
 なんでだよっ。連絡先交換をした初日の夜だぞ!?
 普通、風呂場までも持って行って、俺とのチャットルームを開いて待機しているはずだろうっ。
 今までの恋人は五分以内に返事をしてきたぞ。見習えよっ。

 三十分経っても、一時間経っても、うんこしているときでさえスマホをガン見していたのに、既読のマークは付かなかった。

 やっと既読が付いたのは、チャットを送ってから三時間後のことだった。
 返事の内容は――

《今から寝る》

 こいつやる気あんのか!! 寝る直前に返事って!! 続ける気ねえじゃん!!

 腹が立ったので、電話をかけた。
 かなり長い間があってから、やっとナオが応答した。

《……なに》
「なに、じゃねえっ!! さっさと出ろや!!」
《用件は?》
「あのな。返事くらいさっさとしろっ!」
《重……》
「なっ……」

 重……? 重い……? 俺が……?
 それは俺が相手に言う言葉であって、俺が言われる言葉じゃない……

《それだけ? 切るよ?》
「ちょ、待てーーーいっ!」
《……なに》
「寝る前に俺の声聞けて嬉しいだろっ、な? 電話してやったぜ!」
《きっしょ……》

 きっしょ……?

《君こそ、僕の声聞けてよかったね》
「はあ!?」
《でも迷惑だから急に電話かけてくるのやめてね。じゃあ》

 一方的な切電。
 な……なんだ、あいつは……。

 理解ができない。今までにないパターンだ。迷惑? 俺との電話が? 俺の声が聞けるのに? なぜ……?

 俺はそのまま鴨橋に電話をかけた。

《なにー》
「なあ……ナオに〝急に電話かけてくんな〟って電話切られた……」
《ぎゃはは! 古賀最高すぎる!!》
「なんでだ!? 俺からかけてやったのに、なんで喜ばねえの!?」
《ちげーだろ、篠原~》
「な、なにがだよっ」
《お前が電話したかったんだろー》
「はあ!? んなわけねえだろ!!」
《そこは認めとけー。じゃないとさすがにウザがられんぞー。ただでさえウザいのにー》
「ウザいウザい言うなっ!!」

 鴨橋との電話を終えた俺は、しばらく呆然としていた。
 俺が電話をしたい? いやいや、んなわけ。そんなこと、今まで思ったことねえよ?
 だって、いつもあっちのほうから電話してきて、俺はめんどくせえなあって思いながらも相手をしていたんだ。
 俺があっち側にいくなんて、そんなことはありえんだろ……。

 ありえん。ありえんけど――

 もう一回、ナオの声が聞きてぇ~……

 明日は土曜日で、明後日は日曜日だ。ナオとメシは食わねえし、校内放送も聞こえてこない。
 あいつの声を聞くのは三日後だぜ。遠い。遠すぎる。

 でも、もしかしたらこのスマホから、ナオの声が聞けるかもしれないんだぞ。

 聞きてぇ~……
 でも自分から誘うの気に食わねえ~……

 くぅ~……

 俺はナオのチャットを開いた。指がなかなか動かない。
 脳みその中で、「はっ、自分から誘うの? お前が? イケメン上質アルファが? オメガ相手にお誘いするんだ?」と言っている勢力と、「聞きてぇ~……」を繰り返すばかりの勢力で二分している。

 そして当の本人である俺は……
「聞きてぇ~……」の勢力についてしまった。

《声、聞きたいです……》

 そんな、みっともないチャットを送って。


 しばらくして、ナオから電話がかかってきた。着信音に心臓がひっくり返る。あとびっくりしてちんこがちょっと勃った。なんで。

「もしもしっ!」
《……ぷっ。嬉しそう》
「う、嬉しくなんかねえしっ!」

 嬉しい~……。ナオから電話かけてきた~……。ナオが笑っている。嬉しい~……。
 ……落ち着け、俺。へにゃへにゃすんな。アルファの誇りを忘れるな。

 《やけに素直なチャットだったね》
「べっ、別にっ。ああ送ったら、あんたから電話かけてくると思っただけっ。作戦通りだっ」
 《まあ、君にしては頑張ったほうだと思う》
「上から目線やめろっ」

 うわ~……。ナオの声、いつもよりおっとりしている~……。まじで寝る前だったんだ。眠そう~……。

「もうベッドの中?」
《うん。あったかい》

 あったかいだぁ~……? ぬくぬくしているのか~、そうか~……。
 布団にくるまってぬくぬくしているナオを想像したら、ちんこがめっちゃ勃った。やめろ。そんな気持ちで想像したんじゃねえっ。

「明日なにすんの?」
《んー……。なにしよ……。宿題して……読書して……配信して……》
「……配信!?」
《あっ……》
「なに、ナオ、配信してんの!?」
《……してない》
「いやしてるだろっ! おい、アカウント教えろ!」
《やだ》
「教えてくれないと一生チャット送り続けてやる」
《……分かったけど、バカにしないでね。あと変に絡んでこないでよ。他人のフリしてね》
「分かった!!」
《はぁ……君はズカズカと僕に踏み込んでくるね……》
「今のはうっかり漏らしたあんたが悪いっ!」
《そうですね……》

 通話のあと、URLが送られてきた。
 リンクを開くと、しょっぼいアイコンのアカウントが表示された。
『test_123』と、なんともまあ適当に付けたのが丸わかりのアカウント名だ。
 チャンネル名は『よむやつ』。これも脳死で付けたんだろうなあ。

 アーカイブ動画のタイトルは、だいたいが『朗読します』だった。
 朗読か。ナオっぽいな。
 小説なんて興味はないが、ナオの声が聞けるなら、まあ聞くか。そんな気持ちで、一番上の動画を再生した。

《……こんばんは。眠くなるかもしれません。無理せず、聞いてください》

 あ、ほんとにナオの声だ。いつもの声というより、校内放送で聞こえる、ちょっとだけよそいきの声。
 それを流しながら目を瞑ると、すぅっと気持ちよく眠りに落ちた。
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