【完結】【BL】気付いてないのは篠原だけだよ。【オメガバース】

ちゃっぷす

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第一章

第二十二話

《test_123さんが配信を始めました!》

 スマホの通知を見て、驚いた。
 ナオのヤツ、アレで学校を休んでいるのに配信はするんだ。
 あ、でも今日で四日目だし、だいぶ治まってきたのかな。

《こんばんは。じゃあ、今日も読んでいきます。……少し疲れているので、短めで》

 声色はいつもと同じだった。やっぱり治まったんだな。ってことは、明日は学校に来るかも。
 ……そう考えただけで、ちょっとちんこが勃った。

 配信が終わってから、俺はLINEチャットを送った。

 篠原 駿:配信聴いたー。今回もよかったー

 しばらくして、ナオから返事がくる。

 古賀 直:ありがとう

 篠原 駿:明日、学校来る?

 古賀 直:どうしようかな。あと一日休もうと思ってたけど。

 篠原 駿:だったら休んだ方がいいだろっ。休んどけ

 古賀 直:うん。そうする

 ……寂しい~……。古賀に会いたい~……。明日も休みなんか無理ぃ~……。
 声聞きてえ~……。聞きてえ、聞きてえよ~……。

 その気持ちを押さえて返事をしたつもりだったが、微妙に感情が漏れ出た文章になってしまった。

 篠原 駿:うんうん、そうしとけって。
 篠原 駿:それまでアーカイブ聴きまくるわ(笑)

 やばい。返信がない。引かれたか……!?
 既読になっていたにもかかわらず、テンパッた俺は二行目を送信取消をした。だ、だせぇ……

 するとすぐ、返事がきた。

 古賀 直:電話する?

 ひょえっ……

 古賀 直:ごめん。言い方が悪いね
 古賀 直:僕が駿の声を聞きたい

「……」

 あ、射精してしまった。
 え、俺手コキもなしに射精できんの? すごくね?
 っていうかこの文面の破壊力ヤバくね?

 ちんこの処理をしていた時間を、ナオは勘違いしたようだった。

 古賀 直:勘違いしないでほしいんだけど、別にアルファの声を求めてるわけじゃないし、発情期の名残を君の声で発散しようとかそんなことは思ってないからね。
 古賀 直:僕はただ、君と久しぶりに話したいとか、今回配信した小説の感想を聞きたいなって思っただけで
 古賀 直:無理にとは言わないし、嫌なら全然、遠慮なく断ってくれたらいいから。

 急に長文連続で送ってくんじゃん。
 それにしてもまあ、ナオらしい言い訳だなあ。

 このままどこまで長文が続くかも試してみたくはあったが、それよりもナオの声が聞きたかった。

 篠原 駿:俺もナオの声聞きたい

 しかし、五分経っても十分経っても、電話がかかってこない。
 なんでだよっ!! こっちはずっと正座して待っているんだが!?

 やっとチャットが来たと思ったら、これだ。

 古賀 直:ごめん。やっぱり無理

 なんでだよ!!!!!

 篠原 駿:いや、無理とか無理。もうそういうモードに入ったから。

 古賀 直:無理なんだって

 篠原 駿:なんでだよ!! さっきまでノリノリだったじゃん!!
 篠原 駿:えっ!? 俺の返事が遅かったからヘソ曲げた!?
 篠原 駿:いやいや、違うんだって。わざとじゃないって。
 篠原 駿:電話したいんだが!?!?
 篠原 駿:無理ならせめて無理な理由を言えっ!!

 思わず大量のチャットを送ってしまった。
 だいぶ間が空いてから、ナオからのチャットが届いた。

 古賀 直:体の反応がおさまらないんだよ!!

 篠原 駿:えっ? なんで? どうした?

 古賀 直:嬉しくてだよ!!
 古賀 直:言わせないでよ!!

 なんでお前がキレてんだよ。
 ちょっと待て。クソッ。……可愛すぎないか、こいつ?
 俺と電話できるって思って、そんな嬉しかったわけ……?

 おいおい……
 俺の中のカツナリが暴れ出しそうだぜ。

 篠原 駿:じゃあ、早く電話しよ
 篠原 駿:俺だってナオの声聞きたいんだから

 古賀 直:無理

 篠原 駿:俺と電話できるのが嬉しいんじゃねえの!?

 古賀 直:あのさ
 古賀 直:ごめん
 古賀 直:実は
 古賀 直:駿が貸してくれたタオル、使っちゃった
 古賀 直:発情期のときに

「……」

 古賀 直:ほんとにごめん
 古賀 直:これ以上、君のことを性的に利用したくないんだ
 古賀 直:だから、僕が普通に戻ったときに、声聞かせて


 不思議だ。
 消しゴム女子に消費されたことにはゾッとしたのに……
 ナオが俺のフェロモンに欲情したことは、すげえ嬉しかった。
 なんでだろ。分かんねえけど。


 俺は勝手に電話をかけた。ナオが出るまでかけ続けた。

《……っ、もう、なんでかけてくるの……》
「かけたかったから」
《んぅっ……》

 声、エロ。いつものナオと全然違う。

「タオルのこと、俺、全然気にしてないから」
《……っ、ごめん……っ》
「気にしてないって。それに、俺の声だって……聞いてよ、もっと」
《もう喋らないで……っ》
「俺、嬉しいからさ」
《っ……、んぅ……っ》

 やべえ。声が甘すぎる。このままじゃ俺もおかしくなってしまいそうだ。
 俺はナオの声があまり聞こえないよう、スマホから耳を遠ざけた。

「ナオ、声聞かれたくないだろ。ミュートにしてていいぞ。じゃっ、俺、勝手に一人で喋ってるからー。気が済んだら勝手に切るしー。ナオも、もういいやーって思ったら切ってくれていいからなー」

 それから俺は、今日配信していた小説の感想とか、あとは学校の世間話とかを、ひたすらに喋り続けた。

「あ……。そういえばさ、友だちの鴨橋に意味不明のこと言われたんだよなー。なあ、俺ってあんたのこと好きなの? あんたなら分かる? 俺分かんねえんだけどー。……あ、そういや、あんたも前に、俺があんたのこと好きって言ってたよなあ。それってなんでそう思ったんだ? 今度会ったとき聞かせてよ」

 ナオ、しんどいのマシになったかな。俺の声でちょっとでも楽になってくれていたらいいんだが。

「……俺がベータだったらなあ」

 アレになったナオの世話もしにいけたのになー……。
 ナオに余計な欲情をすることもなかったかもしれないし……。
 はあ、なんで俺、アルファなんだろ。

 ナオがミュートを解除して、こう言った。

《……ベータでもアルファでも、駿は駿でしょ》
「……でも、あんただって、俺がベータのほうがよかっただろ」
《アルファでもベータでも同じ。それがどうしたの?ってだけ》
「……はは。そっか」
《そう。だから……自分の性を、憎まないで》

 僕みたいに、って声が、かすかに聞こえた。

《……今日はありがとう》
「おー。だいぶ楽になったみたいだな」
《……おかげさまで。ごめんね、ほんと》
「ううん、嬉しいんだってば」

 しばらくの沈黙ののち、ナオが口を開く。

《君は気付いてないみたいだけど、君ってすごく素敵な人なんだよ。そこにアルファとかベータとか、関係ない》
「――……」
《もうちょっと、自分のこと分かっておいたほうがいいと思う》

 そう言って、ナオは電話を切った。

「……」

 よく、分かんねえ。
 ナオが何を言ってんのか、ほんとに、分からん。

 それなのに、ベッドに潜って、灯りを消してから、なぜか涙がぽろっとこぼれた。
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