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番外編-3 発情期
6
鍵をかけた直後、駿に首根っこを掴まれた。そして地面に叩きつけられた。
「痛っ……!」
駿は倒れ込んだ僕の腰を持ち上げ、乱暴にズボンを下ろした。
うしろから駿の荒い呼吸音が聞こえる。
「しゅ、駿……」
こわい、と思ってしまった。
いつもの駿の手つきじゃない。もっと強くて、乱暴で……
まるで別の人としているみたいに感じた。
「駿……」
返事はない。代わりに獣のような息遣いが返ってくるだけだ。
ベルトを外す音が聞こえ、次の瞬間――
「あぁぁぁぁ!?」
挿入されたと同時に、僕は射精した。中も痙攣して、意識が飛びそうになった。
なに、これ。全身が痺れる。目の焦点が合わず、口からは涎が垂れた。
これが……生のアルファ……
「ぐっ……!」
「ふっ……!?」
どぴゅ、と中に熱いものが注がれた。
「あ……あっ……あぁぁぁ……!!」
今まで感じたことのないほどの快感。恐ろしくなるほどの、悦び。
自分のオメガ性を、これほど強く実感したことはなかった。
駿が腰を動かしはじめた。
奥を突かれる度に、僕のペニスから精液が噴き出す。
聞いたことのない淫らな声が部屋に響き、それが自分の声であると気付くのに時間がかかった。
体も、脳みそも、どんどん自分じゃなくなっていくのが分かった。
難しいことなんて考えられなくなり、ただただ駿の……アルファの精液がほしいという欲望が僕を支配する。
「うっ……!」
駿が三度目の射精をする直前、うなじを強く掴まれた。爪を立てられていて、痛い。痛いのに、それすらも気持ちいい。
「がはっ……」
続けて、首輪を強く引っ張られた。まるで力ずくで外そうとしているようだ。
何度も引っ張られ、その度に首が絞めつけられて苦しかった。
駿の手が緩み、ホッとしたのも束の間――
「ぐっ……!」
次は、肩に噛みつかれた。それも甘噛みじゃない。肉を噛みちぎられそうなほど、強く。
「痛っ……、痛い、駿……っ!」
僕の声が聞こえたのか、駿が口を離した。
でも、すぐに腕に噛みついた。
「いっ……、んぐ、ぅ……っ」
獣の交尾のように、うしろからただひたすらに腰を振る駿。射精しても、抜きもせずに再び腰を振る。
交尾をしている最中も、僕の体中に噛みついた。
もう何度目かも分からない射精をして、駿がやっと体を離した。
おかしいよね。こんなに精液をもらっても、僕の体はまだ足りないって言っている。
駿と体を繋げたままでいたいって願っているのは、僕自身? それともオメガの性? もう、分からない。
分からないまま、僕は駿の上にまたがり、腰を振っていた。
こんな体位なんてしたことがなかったのに、なぜか上手にできた。
駿は虚ろな目で僕を見上げていた。駿なのに駿じゃなかった。でも、やっぱり駿なんだ。
「駿……っ」
この日はじめて、駿とキスをした。
駿は射精したけど、もう精液は出ていなかった。
それでも、僕たちは体を重ね続けた。
「ナオ……」
朝方、やっと駿が僕の名前を呼んでくれた。
「ナオ……ナオ……」
何度もそう呟いて、彼はまた、僕の肩を噛んだ。
◆◆◆
「――……」
気を失っていたようだ。意識が戻ったときには、太陽が昇っていた。
隣で駿が眠っている。いつもの寝顔だったので、ホッとした。
(発情期、おさまってる。……当然か)
体が軽い。ものすごく痛いけど。
僕はそそくさと首輪を外した。……これがなかったら危なかった。その代償に、全身歯形まみれになっちゃったけど。ラットのアルファってすごいな……。そりゃ、駿も怖がるわけだ。
「……ナオ……」
背後から声がした。振り返ると、顔を真っ青にした駿がこちらを向いていた。
「起きたんだね。おはよう、駿」
「……それ、俺が付けたの……?」
「歯形?」
「うん……」
「そうだよ」
「……ごめん……」
「全然大丈夫」
「大丈夫なわけないだろ……。真っ青になってる……」
噛む力がすごかったからね。
僕は駿の隣に座った。
「覚えてない?」
「……うん」
「駿、すごかったよ」
「ごめん……」
「僕もすごかったんだよ」
「……」
「すごいね、アルファとオメガのセックスって。まるで交尾みたいだった」
「……」
駿は申し訳なさそうに俯いている。そんな彼の両頬に手を添え、こちらを向かせた。
「アルファとオメガのセックスなんて、はじめてしたね」
「……うん」
「いつものセックスのほうが好きだけど、昨晩みたいなセックスも、たまには良いかも」
「……」
「これからも僕の発情期に付き合ってくれる?」
「……いいの? 毎回、痣作るハメになるぞ」
「悪くないね」
そう言って、僕は駿に腕を回す。
「正直なこと言っていい?」
「……おう」
「僕、発情期のときの自分が嫌いなんだ。野性的で、浅ましくて、醜くて、汚らわしく感じちゃって」
「バカ。俺のほうが――」
「うん。昨晩、駿も同じところに堕ちてくれた」
「……」
「それが……嬉しかった。ごめん。歪んでるよね」
駿は中途半端な微笑を浮かべ、やっと僕の目を見た。
「そっか」
僕たちはキスをした。今度はちゃんと、人間としての優しいキスを。
「痛っ……!」
駿は倒れ込んだ僕の腰を持ち上げ、乱暴にズボンを下ろした。
うしろから駿の荒い呼吸音が聞こえる。
「しゅ、駿……」
こわい、と思ってしまった。
いつもの駿の手つきじゃない。もっと強くて、乱暴で……
まるで別の人としているみたいに感じた。
「駿……」
返事はない。代わりに獣のような息遣いが返ってくるだけだ。
ベルトを外す音が聞こえ、次の瞬間――
「あぁぁぁぁ!?」
挿入されたと同時に、僕は射精した。中も痙攣して、意識が飛びそうになった。
なに、これ。全身が痺れる。目の焦点が合わず、口からは涎が垂れた。
これが……生のアルファ……
「ぐっ……!」
「ふっ……!?」
どぴゅ、と中に熱いものが注がれた。
「あ……あっ……あぁぁぁ……!!」
今まで感じたことのないほどの快感。恐ろしくなるほどの、悦び。
自分のオメガ性を、これほど強く実感したことはなかった。
駿が腰を動かしはじめた。
奥を突かれる度に、僕のペニスから精液が噴き出す。
聞いたことのない淫らな声が部屋に響き、それが自分の声であると気付くのに時間がかかった。
体も、脳みそも、どんどん自分じゃなくなっていくのが分かった。
難しいことなんて考えられなくなり、ただただ駿の……アルファの精液がほしいという欲望が僕を支配する。
「うっ……!」
駿が三度目の射精をする直前、うなじを強く掴まれた。爪を立てられていて、痛い。痛いのに、それすらも気持ちいい。
「がはっ……」
続けて、首輪を強く引っ張られた。まるで力ずくで外そうとしているようだ。
何度も引っ張られ、その度に首が絞めつけられて苦しかった。
駿の手が緩み、ホッとしたのも束の間――
「ぐっ……!」
次は、肩に噛みつかれた。それも甘噛みじゃない。肉を噛みちぎられそうなほど、強く。
「痛っ……、痛い、駿……っ!」
僕の声が聞こえたのか、駿が口を離した。
でも、すぐに腕に噛みついた。
「いっ……、んぐ、ぅ……っ」
獣の交尾のように、うしろからただひたすらに腰を振る駿。射精しても、抜きもせずに再び腰を振る。
交尾をしている最中も、僕の体中に噛みついた。
もう何度目かも分からない射精をして、駿がやっと体を離した。
おかしいよね。こんなに精液をもらっても、僕の体はまだ足りないって言っている。
駿と体を繋げたままでいたいって願っているのは、僕自身? それともオメガの性? もう、分からない。
分からないまま、僕は駿の上にまたがり、腰を振っていた。
こんな体位なんてしたことがなかったのに、なぜか上手にできた。
駿は虚ろな目で僕を見上げていた。駿なのに駿じゃなかった。でも、やっぱり駿なんだ。
「駿……っ」
この日はじめて、駿とキスをした。
駿は射精したけど、もう精液は出ていなかった。
それでも、僕たちは体を重ね続けた。
「ナオ……」
朝方、やっと駿が僕の名前を呼んでくれた。
「ナオ……ナオ……」
何度もそう呟いて、彼はまた、僕の肩を噛んだ。
◆◆◆
「――……」
気を失っていたようだ。意識が戻ったときには、太陽が昇っていた。
隣で駿が眠っている。いつもの寝顔だったので、ホッとした。
(発情期、おさまってる。……当然か)
体が軽い。ものすごく痛いけど。
僕はそそくさと首輪を外した。……これがなかったら危なかった。その代償に、全身歯形まみれになっちゃったけど。ラットのアルファってすごいな……。そりゃ、駿も怖がるわけだ。
「……ナオ……」
背後から声がした。振り返ると、顔を真っ青にした駿がこちらを向いていた。
「起きたんだね。おはよう、駿」
「……それ、俺が付けたの……?」
「歯形?」
「うん……」
「そうだよ」
「……ごめん……」
「全然大丈夫」
「大丈夫なわけないだろ……。真っ青になってる……」
噛む力がすごかったからね。
僕は駿の隣に座った。
「覚えてない?」
「……うん」
「駿、すごかったよ」
「ごめん……」
「僕もすごかったんだよ」
「……」
「すごいね、アルファとオメガのセックスって。まるで交尾みたいだった」
「……」
駿は申し訳なさそうに俯いている。そんな彼の両頬に手を添え、こちらを向かせた。
「アルファとオメガのセックスなんて、はじめてしたね」
「……うん」
「いつものセックスのほうが好きだけど、昨晩みたいなセックスも、たまには良いかも」
「……」
「これからも僕の発情期に付き合ってくれる?」
「……いいの? 毎回、痣作るハメになるぞ」
「悪くないね」
そう言って、僕は駿に腕を回す。
「正直なこと言っていい?」
「……おう」
「僕、発情期のときの自分が嫌いなんだ。野性的で、浅ましくて、醜くて、汚らわしく感じちゃって」
「バカ。俺のほうが――」
「うん。昨晩、駿も同じところに堕ちてくれた」
「……」
「それが……嬉しかった。ごめん。歪んでるよね」
駿は中途半端な微笑を浮かべ、やっと僕の目を見た。
「そっか」
僕たちはキスをした。今度はちゃんと、人間としての優しいキスを。
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