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第七章
第五十二話 ノーブラの友だち
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ある日の夜、ものすごく不機嫌そうなマリちゃんから電話がかかってきた。
《睦んちどこ》
なに突然。
《今から行くから教えて》
「え。こんな時間に……?」
《いいから教えてよ》
圧に負けて住所を教えたら、小一時間くらいでマリちゃんがやって来た。
玄関のドアを開けると、マリちゃんはブスッとした顔のまま部屋に上がり込んだ。そしてローテーブルの前に腰を下ろす。
お気に入りのクッションが敷いてある俺の定位置を奪われてしまった。仕方なく、俺はその向かいに正座する。
「急にどうしたの?」
「彼氏とケンカした」
「あー、そういうことか……」
それから二時間ほど彼氏の愚痴を聞かされた。今回のケンカはかなり深刻で、別れるか別れないかの瀬戸際のところらしい。口には出さないが、あんなクズ彼氏となんてさっさと別れたらいいのにと思う。
ひとしきり怒ったり泣いたりして、マリちゃんは少し落ち着いたようだった。
俺はジュースとありったけのお菓子をテーブルに広げた。これでちょっとでも気分が良くなってくれたらいいんだけど……。
ポッキーを頬張りながら、マリちゃんが言った。
「今晩、睦んち泊まるから」
「……えっ!?」
俺がでかい声を上げると、マリちゃんにギロッと睨まれる。
「いいでしょ」
「いや……。俺恋人いるし、マリちゃんも彼氏いるし……」
「それが?」
「それが?」??? それが全てですけど???
「いいじゃん別に」
「女の子の友だちんとこは……? そっちのほうが良いんじゃない?」
「ヒナは帰省中だし」
「他の子たちは……」
「……」
マリちゃんはふてくされた顔で黙り込んだ。他の子たちは帰省していないんだな。じゃあ……
「……睦が一番、私の気持ち分かってくれると思って」
「へっ……」
「一番分かり合えるのが同性同士とは限らないんだよ」
「……」
「あの子たちは私の話を聞いてるフリしてるだけ。エンタメの一種としか捉えてない」
グループの中心にいるマリちゃんが、みんなのことをそんなふうに思っていたなんて。それが核心を突いた言葉なのかは俺には分からないけれど……少なくとも、マリちゃんにはそう映っているみたいだ。
「私は睦に話を聞いてもらいたいし、睦に一緒にいてほしいの」
そう言って、マリちゃんが俺を窺い見る。
「……ダメ?」
ここで「ダメ」と言えない俺は、優しいのか押しに弱いのかのどっちかだ。
どちらにせよ、マリちゃんにここまで信頼されたことが嬉しかった。
シャワーを浴びたマリちゃんが、俺のピンクTシャツを着ている。
マリちゃんは屈辱的な表情を浮かべていた。
「ずっとイジッてたピンクTシャツを自分が着ることになるなんて……っ! 他の服ないの!?」
「寝巻はそれしかないから。悪いけどそれで我慢してください」
「もう最悪!」
ケタケタ笑っていた俺は、あることに気付いてフリーズした。
Tシャツの二か所がツンと盛り上がっている。
「マ、マママ、マリちゃん!?」
「なに?」
「なんか見えちゃってるよ!? もしかしてノ、ノ、ノ……」
「ノーブラだけど、それが?」
「ノーブラだけど、それが」!?!?!? それが全てですけど!?!?
「ちゃんと付けてよ……!」
「イヤだよ。寝る前まであんなしんどいもん付けてらんないよ」
「目のやり場に困るんだけど!?」
俺が慌てふためいたことで、マリちゃんの何かを刺激してしまったようだった。
マリちゃんはニヒルな笑みを浮かべて、俺の隣に座る。めっちゃ近い。やめてよ。
「そっか。睦は女の体に慣れてないんだもんね」
「そうだよ! だから付けてよ! てかもうちょっと離れてくれる!?」
「うわー、顔真っ赤になってる」
マリちゃんがニヤニヤしながら、俺の腕に胸を押し当てた。ブニィッ!ではなく、ふにゅんって感じだった……
「わ。わ。わ……」
ノーブラのふにゅんが腕にくっついている……。や、柔らけえ……なんだこれ……。
なぜかサブイボは立たず、代わりにちんこがちょっと勃った。
それに気付いたのか、マリちゃんが俺の股間に手を添える。
「ひゅっ……」
「へえー。女の子の体に興味あるんだ? 睦ってゲイなんじゃないの?」
「分からない……っ」
「分からない? 何それ」
そこで俺はハッとした。もしかしてマリちゃん、俺がゲイだと――女の子に興味がないと思ったから泊めてって言ってきたんじゃ……。それなら危ない。
「マリちゃんっ……。俺、男の人にだけ興奮するわけじゃないから……っ。女の人の体にも興奮するし、観てるエロ動画はだいたい女の人のやつなんだ。だから……」
俺は大学のクラスメイトになんてことをカミングアウトしているんだ。
マリちゃんは俺の股間をさすりつつ答えた。
「言われなくても分かったよ。だって睦、ちょっと勃ってるもん」
「すみません……。あの、さするのやめてもらっていいですか……」
マリちゃんの視線は俺の股間に向いている。しばらく黙っていたマリちゃんが、やっと口を開いた。
「ねえ睦。童貞卒業してみない?」
……は?
《睦んちどこ》
なに突然。
《今から行くから教えて》
「え。こんな時間に……?」
《いいから教えてよ》
圧に負けて住所を教えたら、小一時間くらいでマリちゃんがやって来た。
玄関のドアを開けると、マリちゃんはブスッとした顔のまま部屋に上がり込んだ。そしてローテーブルの前に腰を下ろす。
お気に入りのクッションが敷いてある俺の定位置を奪われてしまった。仕方なく、俺はその向かいに正座する。
「急にどうしたの?」
「彼氏とケンカした」
「あー、そういうことか……」
それから二時間ほど彼氏の愚痴を聞かされた。今回のケンカはかなり深刻で、別れるか別れないかの瀬戸際のところらしい。口には出さないが、あんなクズ彼氏となんてさっさと別れたらいいのにと思う。
ひとしきり怒ったり泣いたりして、マリちゃんは少し落ち着いたようだった。
俺はジュースとありったけのお菓子をテーブルに広げた。これでちょっとでも気分が良くなってくれたらいいんだけど……。
ポッキーを頬張りながら、マリちゃんが言った。
「今晩、睦んち泊まるから」
「……えっ!?」
俺がでかい声を上げると、マリちゃんにギロッと睨まれる。
「いいでしょ」
「いや……。俺恋人いるし、マリちゃんも彼氏いるし……」
「それが?」
「それが?」??? それが全てですけど???
「いいじゃん別に」
「女の子の友だちんとこは……? そっちのほうが良いんじゃない?」
「ヒナは帰省中だし」
「他の子たちは……」
「……」
マリちゃんはふてくされた顔で黙り込んだ。他の子たちは帰省していないんだな。じゃあ……
「……睦が一番、私の気持ち分かってくれると思って」
「へっ……」
「一番分かり合えるのが同性同士とは限らないんだよ」
「……」
「あの子たちは私の話を聞いてるフリしてるだけ。エンタメの一種としか捉えてない」
グループの中心にいるマリちゃんが、みんなのことをそんなふうに思っていたなんて。それが核心を突いた言葉なのかは俺には分からないけれど……少なくとも、マリちゃんにはそう映っているみたいだ。
「私は睦に話を聞いてもらいたいし、睦に一緒にいてほしいの」
そう言って、マリちゃんが俺を窺い見る。
「……ダメ?」
ここで「ダメ」と言えない俺は、優しいのか押しに弱いのかのどっちかだ。
どちらにせよ、マリちゃんにここまで信頼されたことが嬉しかった。
シャワーを浴びたマリちゃんが、俺のピンクTシャツを着ている。
マリちゃんは屈辱的な表情を浮かべていた。
「ずっとイジッてたピンクTシャツを自分が着ることになるなんて……っ! 他の服ないの!?」
「寝巻はそれしかないから。悪いけどそれで我慢してください」
「もう最悪!」
ケタケタ笑っていた俺は、あることに気付いてフリーズした。
Tシャツの二か所がツンと盛り上がっている。
「マ、マママ、マリちゃん!?」
「なに?」
「なんか見えちゃってるよ!? もしかしてノ、ノ、ノ……」
「ノーブラだけど、それが?」
「ノーブラだけど、それが」!?!?!? それが全てですけど!?!?
「ちゃんと付けてよ……!」
「イヤだよ。寝る前まであんなしんどいもん付けてらんないよ」
「目のやり場に困るんだけど!?」
俺が慌てふためいたことで、マリちゃんの何かを刺激してしまったようだった。
マリちゃんはニヒルな笑みを浮かべて、俺の隣に座る。めっちゃ近い。やめてよ。
「そっか。睦は女の体に慣れてないんだもんね」
「そうだよ! だから付けてよ! てかもうちょっと離れてくれる!?」
「うわー、顔真っ赤になってる」
マリちゃんがニヤニヤしながら、俺の腕に胸を押し当てた。ブニィッ!ではなく、ふにゅんって感じだった……
「わ。わ。わ……」
ノーブラのふにゅんが腕にくっついている……。や、柔らけえ……なんだこれ……。
なぜかサブイボは立たず、代わりにちんこがちょっと勃った。
それに気付いたのか、マリちゃんが俺の股間に手を添える。
「ひゅっ……」
「へえー。女の子の体に興味あるんだ? 睦ってゲイなんじゃないの?」
「分からない……っ」
「分からない? 何それ」
そこで俺はハッとした。もしかしてマリちゃん、俺がゲイだと――女の子に興味がないと思ったから泊めてって言ってきたんじゃ……。それなら危ない。
「マリちゃんっ……。俺、男の人にだけ興奮するわけじゃないから……っ。女の人の体にも興奮するし、観てるエロ動画はだいたい女の人のやつなんだ。だから……」
俺は大学のクラスメイトになんてことをカミングアウトしているんだ。
マリちゃんは俺の股間をさすりつつ答えた。
「言われなくても分かったよ。だって睦、ちょっと勃ってるもん」
「すみません……。あの、さするのやめてもらっていいですか……」
マリちゃんの視線は俺の股間に向いている。しばらく黙っていたマリちゃんが、やっと口を開いた。
「ねえ睦。童貞卒業してみない?」
……は?
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