君との恋の物語-mutual dependence-

日月香葉

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9月に入るとすぐ、学校では集中講義が始まった。

だけど、私と詩乃の距離は離れたままだった。

私が何も連絡してないんだから、当たり前なんだけど。

でも、ちゃんと前に進んでいると思っている。

恒星に会いに行って、恒星はもう私とのことはちゃんと思い出にできていることがわかった
し、私も、ちゃんと気持ちの整理をしたから。

それでも、すぐ詩乃に会いに行ったら同じことになる気がして、私は集中講義が終わるまでは1人でいようと思っていた。

学校には、詩乃との付き合いがきっかけで距離ができてしまった友達がいて、すごく気まずかったけど…。
けど、皆、きっと話せばわかってくれると思っていた。

そんなわけで、集中講義の初日は、本当、学校行くのが怖かったんだけど、自分1人で乗り越えなきゃ意味がないんだって言い聞かせて、頑張った。

講義のある教室についたら、友達2人がいるところ見つけたので、自分から話しかけた。

「お、おはよう」

2人とも振り返って、すぐに気まずそうな顔になった。

『おはよ…』

それでも、挨拶だけは2人ともしてくれた

そして、そのうちの1人どちらかというと穏やかで優しい祥子が聞いた。

『今日は、彼と一緒じゃないの?』

嫌味とか、そんなんじゃなかった。

少なくとも祥子は、本当に心配してくれているみたいだった。

「うん、彼は、集中講義は取ってないし、今ちょっと、距離置いてるから」

私がそういうと、もう1人の、活発で、さっぱりとした性格の由美が

『そ、そうなの!?じゃぁほら、ここ座んなよ!』

そう言ってくれた。
ありがと。

「うん、ありがとね」

そのまま3人並んで集中講義を受けて、お昼も一緒に食堂に行った。

私は、恐る恐る2人に聞いてみた。

「ねぇ、2人は、講義の後は予定ある?」

2人とも首を振っている。

『ないよ。お茶しに行く?』

と由美。

『うん、行こう行こう!』

と祥子。

「ありがとう。ごめんね、急に」

2人には、本当、申し訳ないのとありがたいのとで、話す前から既に、私は泣きそうだった。

『いいよ!それより、まずは午後の講義を乗り切らなきゃ!午後の方が長いんだからね!ほら、食べよ食べよ!』

本当、ありがとね。

何も話していないのに察してくれた2人のおかげで、私はいくらか気が楽になって、午後の講義にも集中できた。









『で、どうしたの?』

と由美。らしいなって思った。話が早い。

集中講義を終えた私たちは、駅前にあるグローバルっていう個室のダイニングに来ている。

「うん、あのね。」

もう、洗いざらい全部話した。恒星とのことも、詩乃とのことも、私のダメっぷりも全部。
後、夏織に怒られたことも。

祥子は、気の毒そうな顔で、由美は、ほとんど無表情のまま視線を逸らして、でも、2人ともちゃんと最後まで聞いてくれた。

『なるほどね。まぁ、話はわかったよ。これは、関係した人全員が悪いね』

え?由美?

「なんで…?」

そうなるの?

『元カレは、ちゃんとさぎりと向き合えてなかったみたいだし、でもそれはさぎりにも原因がある。その上で横から首を突っ込んだ彼氏も良くないし、忘れられてないのをわかっていながら告白したのも良くない、それに、OKしたさぎりも悪い。』

そっか…そうかも。

『ちょ、ちょっと由美!何もそこまで言わなくても…』

「祥子、いいの。その通りだし…」

『でも…』

由美は、大きく息を吸って続けた。

『はっきり言わないとダメなんだよ。今回のことで反省して、ちゃんとしないと。まぁでも…。』

一旦区切る。なんだろ?

『彼氏が、いい男でよかったね。』

「え?」

『だってそうでしょ?普通、彼女が元カレを忘れられてないなんてわかったら、真っ先に別れるんじゃない?まぁ、そもそもが彼氏が蒔いた種みたいなとこも大いにあるけど、でも、ちゃんと時間をくれたんでしょ?それは、彼氏なりに自分が間違ってたことを認めて、反省したってことじゃないの?私はそう思うけど』

「由美…」

詩乃の優しい笑顔が脳裏に浮かんで涙が出た。

『元カレと別れて今の彼氏と付き合うまでは、皆間違えて、皆悪かったんだよ。元カレだってそう言ってたんでしょ?だけど、そこで止まっちゃっていいの?やり直す為に時間をもらったんじゃないの?』

由美はさらに続ける。

『多分、その高校の時の友達だって、さぎりのことを思って怒ってくれたんだと思うよ?それは私も同じ。せっかく時間もらったんだから、いつまでもウジウジしててもしょうがないよ。彼氏のこと、好きなんでしょ?きっと辛かったと思うよ。だから、ちゃんとケリ付けて、迎えに行ってあげなよ。』

「うん、ありがと…。」

祥子もほっとした顔で見守ってくれていた。

『後さ、余計なことかもしれないけど。』

「ん?」

なんだろ…?

『怒ってくれた友達にも、ちゃんと結果を知らせた方がいいよ。多分心配してると思うよ。』

そう…かな?

『さぎりさ、きついこと言われた方だけが傷ついてると思ってない?』

「え?」

『言うのだって勇気がいるし、言われたらきついだろうなって思いながらも相手のことを思って言うんだよ?多分、その友達も、そうなんじゃないかと思うよ?』

夏織…。

「そっか…。由美も、そうだったんだよね?ありがとね」

『い、いや、私はいいよ、別に』

由美は、気まずそうに目を逸らした。

…照れてる?

『で、さぎりの気持ちはどうなの?しばらく1人で考える時間はあったんでしょう?』

そう聞いたのは祥子だった。

「うん、大分、落ち着いた。今日は、2人がちゃんと話してくれるか心配だったけど…本当、詩乃と付き合い始めてからはずっと2人から離れてたから…。」

『それは全然大丈夫だよ。彼氏ができたのは、すぐわかったし、気になることはあったけどさ』

「ごめんね。」

今度は由美が答えた。

『そりゃ、あれだけ暗い顔されちゃね』

言いながら笑ってる。酷いなぁ、もう。でも、ありがとう。

「ありがとね。」

『もういいって!ちゃんと反省したんでしょ?』

これは祥子。

「うん。反省して、気持ちの整理もできた。」

『じゃ、私達からは何も言うことないよ。彼氏と、今度は幸せにね!後、私たちのことも忘れないでね!ね?由美?』

祥子、相変わらず優しいな。

由美も、頷いている。

「うん、忘れない。」

こんなにいい友達に恵まれて、私はなんて幸せなんだろう。

普通、女同士だとこうは行かないと思う…。




その後は、2人とも遅くまで付き合ってくれた。

集中講義期間の真っ最中なのに、本当、2人には感謝してもしきれない。

詩乃、夏織、恒星、祥子、由美。

皆、ありがとね。

詩乃、もうすぐ、迎えに行くからね。










集中講義の最終日、詩乃にメールを送った。

【この間はごめんね。会って話がしたいんだけど、いいかな?】

その日に返信はなかったけど次の日の、なぜか明け方に返事が来ていた。

【いいよ。いつがいいんだ?】

起きてすぐにメールを呼んだ私は、すぐに返信した。

【なるべく早くがいい。今日でも。私が合わせるよ】

今度はすぐに返信。

【じゃぁ、今日にしよう。13時に、いつもの河川敷まで行く。】

ありがとう、詩乃。




















私が、着くと、詩乃はもう来ていた。

『よぉ、久しぶり。』

少し疲れたような顔をしていた。

「うん。久しぶり」

こんな風にしか答えられない自分が嫌だった。

『少し痩せたか?ちゃんと食べてるのか?』

え?痩せた?

「うん、食べてるよ。詩乃こそ、少し痩せたんじゃ…」

すると詩乃は、急にふっと笑った。

『それで、ゆっくり考えることはできたのか?』

そうだよね。その話をしに来たんだもんね。

「うん、私ね、あれからいっぱい考えて、気持ちの整理をして、過去のことを振り返ったの。ちゃんと、思い出にしたかったから。」

詩乃は黙って聞いていた。

「私は、バカだから、1人じゃどうしていいかわからなかったの。だから、何人かに相談して。やっと、ちゃんとできたかなって思うの。」

詩乃の表情が、少し曇った。多分、誰に会ったのか想像ついたんだと思う。ごめんね。

『うん。』

「私、自分なりに過去と向き合って考えてみたけど、やっぱり私は詩乃が好きだよ。困っていた私を助けてくれて、連れ出してくれて、1人じゃないって教えてくれた。自分が悪いんだからこんなこと言っちゃいけないのかもしれないけど、詩乃と距離をあけている間、ずっと寂しかった。だけど、詩乃とずっと一緒にいたいなら今頑張らなきゃって思ったの。付き合わせてごめんね。」

詩乃が、涙を浮かべながら聞いている。詩乃は、本当に優しいね。ありがとうね。

「たくさん待たせてしまったけど、私は、今やっと自分の気持ちに気がついたの。まだ、私のことを好きでいてくれてるなら、私と付き合ってください。」

涙が出そうになったけど、どうにか堪えて、もう一度言う。

「私、詩乃が大好き」

!!


次の瞬間、私は抱きしめられていた。

細いけど、しっかりとした腕。

詩乃の匂い。温度。肌の感覚…。

その全てが心から愛おしいと思った。




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