君との恋の物語-mutual affection-

日月香葉

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進言

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年明け早々に結と留学の話をした。

答えはあまりにも簡単に出た「一緒に行こう」

まさかこういう答えが返ってくるとは思っていなかった。

正直、半分は勢いだっただろうなとは思う。

けど結は、本気だとも思う。

実際、結はすぐに両親に話をして、了承を得ている。

そこまでやってくれたんだ。後は、俺がしっかりしないと。

覚悟は決まった。次は、しかるべきところに覚悟を示す時だ。



俺は、家でくつろいでいる親父に話しかけた。

まずはアポとりだ。

『親父』

読んでいた新聞から目線をあげ、俺の顔を見る。無言で。

『話がしたい。今週、時間が取れそうな日はある?』

思案顔の親父。短い沈黙の後、返事が返ってきた。

「今日では?」

『もちろん』

親であっても、その辺りには少々うるさいので一応アポを取っただけだ。

早ければ早いだけ都合がいい。と言うより、あまり時間がない。

「座りなさい」

俺は遠慮なく親父の正面に座った。

誤解のないように言っておくが、俺と親父の仲は決して険悪ではない。

極端に言葉数が少ないのだ。この親父は。それだけである。

「どうした」

『単刀直入に言うと、留学をしたいと思っています。』

真っ直ぐに相手の目を見て言った。誠意を伝えるためだ。

「なぜだ?今の大学では不満か?」

『不満ではありません。でも、より深く、より高度な教育を受けたい』

「留学先は?」

『ドイツか、アメリカ』

「正反対だな。なぜその二箇所なんだ?」

『クラシックならドイツ、ドラムならアメリカ。と思っているからです。』

「なるほど。」

思案する親父。こう言う時は、なるべく邪魔をしないほうがいい。

かなり長く感じる沈黙。実際は1分くらいだったと思うが。

「Aブラス、と言ったか?昨年最後の本番は」

?Aブラス?

『ん?うん。』

「俺は素人だ。音楽のことは詳しくない。が」

が?

「確かにお前の演奏は頭一つ抜けているように感じた。」

そうなのか。そんなふうに思っていてくれたのか。

「中には、お前以上にいい演奏をしている人もいたようだが」

…本当に素人なのか?かなり細かいところまで聴いているみたいだけど…

「それでも、留学したいのか?」

『はい。その、俺以上に上手く、才能のある先輩からの薦めでもある』

「なるほど。」

もう一度沈黙、思案。

「お前は、どちらが好きなんだ?」

『どちらも。でも、今楽しいのは、ドラム。でもこれは、本格的に始めたのが最近だからかもしれない。』

「留学すると、どうなる?」

『まず、どこに留学するかを決めるため、1度は行ってみたい。それから、6月、7月の間に試験があって、入学は9月なので、実はあまり時間がないです。』

「その後は?」

その後?

「何年向こうにいるつもりなんだ?」

『1年と思ってます。今のところは。』

「2年いくつもりは?」

そりゃ、いきたいけど

『経済的なこともあるから、相談したい。』

「お前の意思を聞いている。」

『2年、行きたいです。』

「わかった。まずは希望する国と学校を絞って、春休みにいってきなさい」

え?

『え?いいんですか?』

「2度は言わん。その代わり、事前にしっかりと調査をして、できる限り絞りなさい。」

『はい。』

「それから、母さんにもちゃんと話をしなさい。」

『はい。』

すぐに立ち上がって出て行こうするので、引き留めた。

『親父』

向き直った親父は、少し嬉しそうだった。

なんでだろうか?

『ありがとう』

「お前が一見無茶とも思えることを言い出したんだ。俺は少し嬉しい。その意思と覚悟をしっかり示してみろ。」

『はい』

そう言って頭を下げた。

ありがとう。


その後、台所で話を聞いていた母さんとも話をした。

そこで俺は、母さんから衝撃の事実を聞かされた。

どうやら、親父は昔、音楽大学に行きたかったらしい。

しかしながら、家族や周囲に応援してくれる人がいなかったため、進学することができなかったんだとか。

しかも、なんと入試には受かっていたんだそうだ。

「だから、あなたが音楽の勉強をしたいと言ったときにはすごく喜んでたのよ。」

そうなのか、そんなこと俺には一言も言わなかったのに。

「希望するなら音大に行かせてもいいって言ってたのよ。もちろん、留学も。」

なんと…親父は俺よりもずっと先に覚悟をしてたってことか。

そうか。あの親父が…。ありがとう。

こうして俺は、本格的に留学の準備を始めた。
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