バンキシャ部!

マムシ

文字の大きさ
2 / 41

アニメ部

しおりを挟む
 アニメ部の部室とは憩いの場だった。
 それは人里離れた旧校舎一階の奥にある。
 クラスの中ではいつも端っこでボッチ飯をしていた三人「雷伝」「一風」「岩寺」にとってはこの空間こそが唯一の休息の地だったのだ。
 窓の外からは運動部の声が聞こえてくる。それを何となく眺めながら思った、この部活にはきつい練習も無ければ、うるさい小言を言う顧問もいない。ただ放課後集まり、だらだらとしていることだけが主な活動内容である。なんという桃源郷か。
 だがそんな場所が突如として危機に瀕する出来事が起こった。それはあの生徒総会の一週間前である。

「岩寺、ポテチをとってくれないか」

 机に足を掛け、少年漫画を読む雷伝がそう言った。

「はい、分かりました」

「おい……岩寺何やっているんだ」

 岩寺は雷伝の下で跪きポテチを献上している。

「部長に対して最大の敬意です」

「そ、そうか。君もやっと我の凄さに気が付いたか。なんたって我は銀河一の強さを誇っており、大銀河帝国皇帝にだって認めたられた身……」

 雷伝は高笑いをしながら、自分が考えたブレブレのキャラ設定を喋り出した。
 これは今日に始まったことではない、ここぞとあらばぶっこむだ。
 残念ながら、ボッチ飯をし続けた雷伝の脳内では防衛システムが働き、自分が大銀河帝国を救った英雄だと思い込んでいる。
 これも全て、最近観始めたロボットアニメの影響であるが、まさかアニメを作った制作人もここまで影響されるとは思っていなかっただろう。ある意味本望である。
 なんとも悲しい、そして痛々しい。だが皆が一度は感染するあの病。それを高校生で発症するという大人になったからおたふく風邪にかかるくらい大変な状況である。
 この変なキャラ設定がボッチ飯をさらに加速させたことは言うまでもない。

「お言葉ですが、部長殿。岩寺殿は下からのパンツを覗いているだけですぞ」

「な、なに!」

 岩寺の顔をよく見ると、鼻の下を伸ばしていた。

「貴様! ぬけぬけと!!」

 岩寺の脳天に向かって思いっきり拳骨を食らわす。

「おのれ!」

 雷伝が追撃を加えようとすると、一風が言った。

「いやぁ部長殿。それも意味ないかと」

 殴られた岩寺は依然として鼻の下を伸ばしたままだった
 そうである。この男はドが付くほどのMなのだ。
 岩寺は眼鏡を掛け直し、スタイリッシュに言い放つ。

「もっと殴っても文句は言いません! 僕は紳士ですから、女性に手を挙げるなんてもっての他! むしろ殴られてこそ紳士なのです!!」

 部内が凍った。二人は気色の悪い持論をつらつらと語る岩寺に向かって、軽蔑した目を向けるのだった。

「うん、そっか」

 雷伝は息をするように受け流す。

「ところでポテチはどこだ?」

 岩寺が持ってきたポテチが見当たない。さっきまで目の前にあったのに、机の上から消えている。周囲を見渡すとポテチが目に入った。
 そして封は開けられ、一風がむさぼっている。

「灯! それ、あたしが買ってきたやつ!」

 雷伝はキャラを忘れて叫んだ。大銀河帝国の英雄というキャラ設定を時々忘れる。というかあまり定まっていない。

「いいえ、これは毒見であります部長殿」

「市販のものに毒なんて入っているわけないでしょ!」

「いいえ、これは部長殿の安全を考慮した結果であります」

「では僕も……」

 そう言いながら手を伸ばす。すると先ほどまでおっとりとしていた一風の懐から拳銃が飛び出した。
 常に持ち歩いている愛銃のM1911だ。それを雷伝の額に押し当てると、低い声で呟いた。

「頭ぶち抜かれたいのか小僧……あん!」

「いやいや、それあたしのポテチ……」

「部長殿、略奪者が現れました。シベリア送りでよろしいですか」

 一風が敬礼をしながら言った。

「好きにしろ……ってもうないではいか!」

 ポテチの袋を奪い取って叫ぶ雷伝。

「ああ、毒が入ってましたゲプゥ」

「貴様……この我を怒らせたなぁ」

 雷伝が立ち上がり、大股で掃除用具入れに向かった。そして中から出したのは箒《ほうき》ではなく、おもちゃ屋にて二千八百円で購入した光る剣だった。
 この剣は雷伝が愛刀として大切に保管していたものだった。
 それを振り上げ、一風に斬りかかる。

「そ、それは名刀、和泉守兼定!」

 振り上げられた刃先を見つめた一風がそう叫んだ。

「食らえ! 我が名刀ライトニングソードの威力を!」

「名前ダサいですね」

 もうその刃は止まらない。額に向かって振り下ろされる。

「覚悟!」

「国の為 重き努を 果し得で 矢弾尽き果て 散るぞ悲しき」

 一風はそう言うと、目を瞑った。
 その時である。おもむろに部室の扉が開かれるのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...