死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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「今日はここに泊まるといい」と、言われた客間は無駄に広くて一人で寝るにしても物悲しい部屋だった。

 まるで大宴会場に布団を一枚引かれた状態。


 布団の上で圏外と表示されたスマホを弄りながら結は今日の出来事を思い返していた。


「長が人喰い?あ~····意味合いが違うよ。そもそも長は大天狗だから人食べないよ」

 ムギに言われた言葉。
 妖怪でも人を食べたり襲ってくる妖怪も中にはいるが、繋が物理的に人を食べるだなんて話は聞いた事がない。


「長の結に対する【美味しそう】は結が可愛いから異性として【喰べたい】って意味だよ」


 目の前の猫さんは何をいってらしゃるのですか?と、その時の結は理解が追いつかなかった。


 縁に似たその顔で


 縁よりも大人っぽい顔立ちの大天狗が



 こんな小娘を性的に【美味しそう】だなんてきっと何かの冗談に決まっている。


「·····はァ···」


 寂しいこの客間で一人寂しくとりあえず眠るしか他なかった。



 今頃、両親が探しているかもしれない。
 明日になれば友人が連絡してきて····けれど圏外になってるから連絡が通じない事で心配してくるだろう。

 縁の事があったから結ももしかしたら·····


 だなんて思われそう。


 死んで縁に会えるのならそうしてるかもしれない。





 死んで



    
    

     生まれ変わって





          また出逢って



     恋をして····




 そんな夢物語を信じてる。




「······ぇにし····」




 気がつけば結は布団の温かさに包まれて眠りについていた。





「···············」



 そこに黒い翼を持った天狗が見ていた事なんて知らずに······。







 -------







 今は何時だろう。




 日は少し昇りつつあるが

 まだ、外は少し薄暗い




 ボーッとしたままの瞳で冷えきった部屋の中、無意識にその温もりに縋りついて再び目を瞑り睡眠を貪ろうとする。

「·····アレ?」


 布団の中とは違うこの温もりはなんだろうか。

 寂しくて冷えた心をまるで大きな何かで包み込まれているように身体も包まれているような·····


「··········」


 きっと今までのは何か悪い夢だったのだろう。

 目の前にいる彼が抱き締めているのだから。

 悪い夢から覚めたんだ。


 今日も縁の家に泊まっていたんだ。


 縁はここにいる。
 病気で亡くなったなんて嘘。


 ボーッとしたままの結は目の前に寝ている彼の髪の毛をさらりと撫でる。


「················」




 縁ってこんなに髪の毛長かっただろうか?



 こんなに筋肉質だっただろうか?





 こんなに眼光が鋭く金色の瞳をしていただろうか?




 少しずつ覚醒する頭で結はここは自分のいた世界では無い事を思い出した。
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