10 / 61
一
九
しおりを挟む
「今日はここに泊まるといい」と、言われた客間は無駄に広くて一人で寝るにしても物悲しい部屋だった。
まるで大宴会場に布団を一枚引かれた状態。
布団の上で圏外と表示されたスマホを弄りながら結は今日の出来事を思い返していた。
「長が人喰い?あ~····意味合いが違うよ。そもそも長は大天狗だから人食べないよ」
ムギに言われた言葉。
妖怪でも人を食べたり襲ってくる妖怪も中にはいるが、繋が物理的に人を食べるだなんて話は聞いた事がない。
「長の結に対する【美味しそう】は結が可愛いから異性として【喰べたい】って意味だよ」
目の前の猫さんは何をいってらしゃるのですか?と、その時の結は理解が追いつかなかった。
縁に似たその顔で
縁よりも大人っぽい顔立ちの大天狗が
こんな小娘を性的に【美味しそう】だなんてきっと何かの冗談に決まっている。
「·····はァ···」
寂しいこの客間で一人寂しくとりあえず眠るしか他なかった。
今頃、両親が探しているかもしれない。
明日になれば友人が連絡してきて····けれど圏外になってるから連絡が通じない事で心配してくるだろう。
縁の事があったから結ももしかしたら·····
だなんて思われそう。
死んで縁に会えるのならそうしてるかもしれない。
死んで
生まれ変わって
また出逢って
恋をして····
そんな夢物語を信じてる。
「······ぇにし····」
気がつけば結は布団の温かさに包まれて眠りについていた。
「···············」
そこに黒い翼を持った天狗が見ていた事なんて知らずに······。
-------
今は何時だろう。
日は少し昇りつつあるが
まだ、外は少し薄暗い
ボーッとしたままの瞳で冷えきった部屋の中、無意識にその温もりに縋りついて再び目を瞑り睡眠を貪ろうとする。
「·····アレ?」
布団の中とは違うこの温もりはなんだろうか。
寂しくて冷えた心をまるで大きな何かで包み込まれているように身体も包まれているような·····
「··········」
きっと今までのは何か悪い夢だったのだろう。
目の前にいる彼が抱き締めているのだから。
悪い夢から覚めたんだ。
今日も縁の家に泊まっていたんだ。
縁はここにいる。
病気で亡くなったなんて嘘。
ボーッとしたままの結は目の前に寝ている彼の髪の毛をさらりと撫でる。
「················」
縁ってこんなに髪の毛長かっただろうか?
こんなに筋肉質だっただろうか?
こんなに眼光が鋭く金色の瞳をしていただろうか?
少しずつ覚醒する頭で結はここは自分のいた世界では無い事を思い出した。
まるで大宴会場に布団を一枚引かれた状態。
布団の上で圏外と表示されたスマホを弄りながら結は今日の出来事を思い返していた。
「長が人喰い?あ~····意味合いが違うよ。そもそも長は大天狗だから人食べないよ」
ムギに言われた言葉。
妖怪でも人を食べたり襲ってくる妖怪も中にはいるが、繋が物理的に人を食べるだなんて話は聞いた事がない。
「長の結に対する【美味しそう】は結が可愛いから異性として【喰べたい】って意味だよ」
目の前の猫さんは何をいってらしゃるのですか?と、その時の結は理解が追いつかなかった。
縁に似たその顔で
縁よりも大人っぽい顔立ちの大天狗が
こんな小娘を性的に【美味しそう】だなんてきっと何かの冗談に決まっている。
「·····はァ···」
寂しいこの客間で一人寂しくとりあえず眠るしか他なかった。
今頃、両親が探しているかもしれない。
明日になれば友人が連絡してきて····けれど圏外になってるから連絡が通じない事で心配してくるだろう。
縁の事があったから結ももしかしたら·····
だなんて思われそう。
死んで縁に会えるのならそうしてるかもしれない。
死んで
生まれ変わって
また出逢って
恋をして····
そんな夢物語を信じてる。
「······ぇにし····」
気がつけば結は布団の温かさに包まれて眠りについていた。
「···············」
そこに黒い翼を持った天狗が見ていた事なんて知らずに······。
-------
今は何時だろう。
日は少し昇りつつあるが
まだ、外は少し薄暗い
ボーッとしたままの瞳で冷えきった部屋の中、無意識にその温もりに縋りついて再び目を瞑り睡眠を貪ろうとする。
「·····アレ?」
布団の中とは違うこの温もりはなんだろうか。
寂しくて冷えた心をまるで大きな何かで包み込まれているように身体も包まれているような·····
「··········」
きっと今までのは何か悪い夢だったのだろう。
目の前にいる彼が抱き締めているのだから。
悪い夢から覚めたんだ。
今日も縁の家に泊まっていたんだ。
縁はここにいる。
病気で亡くなったなんて嘘。
ボーッとしたままの結は目の前に寝ている彼の髪の毛をさらりと撫でる。
「················」
縁ってこんなに髪の毛長かっただろうか?
こんなに筋肉質だっただろうか?
こんなに眼光が鋭く金色の瞳をしていただろうか?
少しずつ覚醒する頭で結はここは自分のいた世界では無い事を思い出した。
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる