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浮気されたので婚約破棄したんだが、数カ月後に元婚約者から復縁の申し出があった。

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私の婚約者はバルタサールという伯爵令息である。

イケメンでモテそうな雰囲気があった。
実際にモテるようで、浮気をしていた。

浮気相手は私の友人であるダニエラ。

バルタサールの部屋にダニエラの指輪があったため、

「どうして、ここにダニエラの指輪があるの?」

って訊いてみると。

「ここに来てたから」

平坦な声で答えた。

「何でここに来てたの?」
「遊びに」
「友達として?」
「うーん、まあ」

歯切れが悪い。

「それって、浮気というわけじゃないよね」
「浮気と言えば浮気」
「めんどくさっ。浮気なんでしょ?」

しばしの沈黙の後、小さく頷くバルタサール。

「何で、浮気したわけ?」
「分からない」
「何らかの理由があったはずでしょ」
「あえて言うなら、相手が僕に好意を寄せてくれたから?」
「ああ、そう。私、浮気する人は嫌いなの。婚約破棄ね」
「え?それだけで?」
「それだけで?」

何を言っているんだ。こいつは。
浮気は私への裏切りなのに、反省なんてしていないのか。

「あ、いや。分かったよ」

私とバルタサールは婚約破棄となった。



それから数カ月後、たまたまバルタサールと街で会った。

「久しぶりだね。元気?」
「うん。まあまあ」
「僕は元気」

と笑いかけてくる。
あんたの体調なんてどうでもいい。

「私、用事があるの」
「こうやって、たまたま会ったのも何かの縁だよね」
「は?」
「またやり直さない?」

なんて言い出した。
復縁なんて無理だ。

「たまたま会った?それだけのことで?」
「それだけって……」
「無理だよ、無理。さようなら」

そう言って私は彼に背を向け、走り出した。
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