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第一章 入学を回避せよ
1 モブと言う名の美少女アイドル
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「ありがとう! 貴方は命の恩人だわ、ぜひお礼をさせて」
「うちの所属アイドルを救っていただきありがとうございます、しかるべきお礼は用意させていただきます」
「はあ……どうも……」
アイドル事務所の一室にて俺は二人の女性と相対していた。
「あの者は少し前から皇に付きまとっていた厄介なファンでして、まさかこんな強引な手に出てくるとは……本当に君が助けてくれなかったら、想像するのも怖いですね」
「何度だって言います! ほんとにありがとう!! お名前を聞いてもいいかしら?」
「――豚次、丸井豚次です」
一瞬前世の本名を言いそうになったが、この世界の俺は丸井豚次と言う。
俺の手を両手で握りしめブンブン降る皇と呼ばれた彼女、どこかで見覚えがあった。もちろんこの世界で生きてきた記憶から彼女がとあるアイドルグループの一人であるのは知っているのだが。それとは別に彼女に対して既視感なるものが起きる。
あのギャルゲーに皇なんて名前のキャラは登場してなかったよな?
どうして俺がアイドル事務所でその所属のアイドルとマネージャーに感謝されているのかと言うと、助けてしまったのだ。本当にただの偶然だが。
俺はこのギャルゲーの世界の思い通りになって堪るかと見知らぬ老人にドロップキックをかました。その瞬間に割り込んできたのが皇のストーカーだった。ストーカーは正にその瞬間に皇にナイフを刺そうとしていたそうだ、そこに俺がドロップキックをかまし助けた。そう言うことらしい。
なんだか人ならざる者の介入を感じる。だってそんな偶然ある?
まさかこれが世界の強制力と修正力ってやつか。どうしたって俺をギャルゲーの世界に関わらせようとしているのか?
「どうかしましたか?」
考え事をしていると、皇は手を握りしめ顔を覗き込みながら首を傾げた。凄く綺麗な顔だ、流石アイドル。
ギャルゲー特有のカラフルな髪。彼女は水色の長い髪で先に行くにつれ緩やかにウェーブ掛かっている。蒼い瞳は吸い込まれそうな程深く大きい。身長もそこそこ大きく、胸や尻も大きく腰は細い。屈託なく笑う顔は眩く輝き、人懐っこそうな性格を如実に表している。ん?
「少しお聞きしますが……皇さんってあの神崎さんと同じグループですよね?」
「へ? ええそうですよ。あ、もしかして朱里ちゃんのファンでしたか!? む~嬉しいやら悔しいやらですよ」
(や、やっぱりあの神崎朱里と同じグループの一人だったか)
神崎朱里――このギャルゲーのヒロインの一人にしてナンバーワンの人気を誇るキャラだ。金髪をツーサイドアップにし、ツリ目にぷっくり唇でやや気の強さうな顔立ち、大きい胸を腕組してよく乗せている、ウエストはヒロインの中で最も細く、身長は上から三番目の大きさ、正統派ツンデレ。
思い出した。神崎のルートに入り、なんやかんやあった後の彼女のライブイベントがある。そこに一枚のイベントCGが有り、そこに彼女の両隣に居る同じグループの仲間。その片割れだ。
このギャルゲーの最大のバグとまで言われた存在……攻略できないモブキャラじゃねーか!?
ファンディスクにすら攻略ルートが用意されなかったにも関わらず、なぜかサイトの中央にイラストが付けられてる存在。名前すら明かされないモブ。
(まさかの彼女は皇って名前だったか……)
「朱里ちゃんのサインも一緒に送りたいので連絡先を教えてもらっていいですか?」
「え、ああいいですよ。じゃあマネージャーさんに――」
「ダメ! 私と連絡先を交換しましょう」
タイトなスーツの眼鏡を掛けた有能そうなマネージャーに渡そうとしたら腕を皇さんに掴まれた。
「――ではここで、本当にありがとうございます」
「はい」
マネージャーさんに車で家まで送ってもらった。家に着いた頃には夜中になっていた。
オンボロアパートの自室に入り、荷物を下ろし横になった。
「なんか、疲れたな……」
色々あり過ぎた。それと同時に後悔の波が押し寄せてくる。今までの豚次としての行いがどんどん頭に流れてきて、顔を覆い悶えてしまう。いっそ豚次のまま生きられたら幸せだったのでは? と思いたくなる。いや、そうしたらどの道死ぬんだ。前世を思い出せたのは僥倖と思っておこう。
ヴヴヴヴ――とバイブレーションが鳴り、スマホを手に取る。画面には皇と書いてある。
(メールか……この世界にはラ〇ンとか無いからな)
『今日は本当にありがとうございました! いきなりのメールごめんなさい! 豚次さん――あ、豚次さんって名前で呼ぶのを許してくださいね♡ 豚次さんは制服を見るに〇〇中ですよね? 学年はなんですか、あと進学は何処にするか教えてください!』
(進学ね……進学?)
俺は肝心なことを見落としていたようだ。そうだよ、よく考えればあのギャルゲーの舞台となる学園に進学しなければいいのだ。なんて頭が良い! と思ったが無理だった。
記憶を辿ればもう進路調査も終わり、願書も出した後だった。あとは二か月後の試験を受けるだけだ。
(まあ、そこで名前でも書き忘れればいいんだ)
胸を撫で下ろし、俺はメールの返事をするのだった。
この時、この返事が神崎にも見られているとは思いもしなかった。あと試験日にあんな事件に巻き込まれることも。
「うちの所属アイドルを救っていただきありがとうございます、しかるべきお礼は用意させていただきます」
「はあ……どうも……」
アイドル事務所の一室にて俺は二人の女性と相対していた。
「あの者は少し前から皇に付きまとっていた厄介なファンでして、まさかこんな強引な手に出てくるとは……本当に君が助けてくれなかったら、想像するのも怖いですね」
「何度だって言います! ほんとにありがとう!! お名前を聞いてもいいかしら?」
「――豚次、丸井豚次です」
一瞬前世の本名を言いそうになったが、この世界の俺は丸井豚次と言う。
俺の手を両手で握りしめブンブン降る皇と呼ばれた彼女、どこかで見覚えがあった。もちろんこの世界で生きてきた記憶から彼女がとあるアイドルグループの一人であるのは知っているのだが。それとは別に彼女に対して既視感なるものが起きる。
あのギャルゲーに皇なんて名前のキャラは登場してなかったよな?
どうして俺がアイドル事務所でその所属のアイドルとマネージャーに感謝されているのかと言うと、助けてしまったのだ。本当にただの偶然だが。
俺はこのギャルゲーの世界の思い通りになって堪るかと見知らぬ老人にドロップキックをかました。その瞬間に割り込んできたのが皇のストーカーだった。ストーカーは正にその瞬間に皇にナイフを刺そうとしていたそうだ、そこに俺がドロップキックをかまし助けた。そう言うことらしい。
なんだか人ならざる者の介入を感じる。だってそんな偶然ある?
まさかこれが世界の強制力と修正力ってやつか。どうしたって俺をギャルゲーの世界に関わらせようとしているのか?
「どうかしましたか?」
考え事をしていると、皇は手を握りしめ顔を覗き込みながら首を傾げた。凄く綺麗な顔だ、流石アイドル。
ギャルゲー特有のカラフルな髪。彼女は水色の長い髪で先に行くにつれ緩やかにウェーブ掛かっている。蒼い瞳は吸い込まれそうな程深く大きい。身長もそこそこ大きく、胸や尻も大きく腰は細い。屈託なく笑う顔は眩く輝き、人懐っこそうな性格を如実に表している。ん?
「少しお聞きしますが……皇さんってあの神崎さんと同じグループですよね?」
「へ? ええそうですよ。あ、もしかして朱里ちゃんのファンでしたか!? む~嬉しいやら悔しいやらですよ」
(や、やっぱりあの神崎朱里と同じグループの一人だったか)
神崎朱里――このギャルゲーのヒロインの一人にしてナンバーワンの人気を誇るキャラだ。金髪をツーサイドアップにし、ツリ目にぷっくり唇でやや気の強さうな顔立ち、大きい胸を腕組してよく乗せている、ウエストはヒロインの中で最も細く、身長は上から三番目の大きさ、正統派ツンデレ。
思い出した。神崎のルートに入り、なんやかんやあった後の彼女のライブイベントがある。そこに一枚のイベントCGが有り、そこに彼女の両隣に居る同じグループの仲間。その片割れだ。
このギャルゲーの最大のバグとまで言われた存在……攻略できないモブキャラじゃねーか!?
ファンディスクにすら攻略ルートが用意されなかったにも関わらず、なぜかサイトの中央にイラストが付けられてる存在。名前すら明かされないモブ。
(まさかの彼女は皇って名前だったか……)
「朱里ちゃんのサインも一緒に送りたいので連絡先を教えてもらっていいですか?」
「え、ああいいですよ。じゃあマネージャーさんに――」
「ダメ! 私と連絡先を交換しましょう」
タイトなスーツの眼鏡を掛けた有能そうなマネージャーに渡そうとしたら腕を皇さんに掴まれた。
「――ではここで、本当にありがとうございます」
「はい」
マネージャーさんに車で家まで送ってもらった。家に着いた頃には夜中になっていた。
オンボロアパートの自室に入り、荷物を下ろし横になった。
「なんか、疲れたな……」
色々あり過ぎた。それと同時に後悔の波が押し寄せてくる。今までの豚次としての行いがどんどん頭に流れてきて、顔を覆い悶えてしまう。いっそ豚次のまま生きられたら幸せだったのでは? と思いたくなる。いや、そうしたらどの道死ぬんだ。前世を思い出せたのは僥倖と思っておこう。
ヴヴヴヴ――とバイブレーションが鳴り、スマホを手に取る。画面には皇と書いてある。
(メールか……この世界にはラ〇ンとか無いからな)
『今日は本当にありがとうございました! いきなりのメールごめんなさい! 豚次さん――あ、豚次さんって名前で呼ぶのを許してくださいね♡ 豚次さんは制服を見るに〇〇中ですよね? 学年はなんですか、あと進学は何処にするか教えてください!』
(進学ね……進学?)
俺は肝心なことを見落としていたようだ。そうだよ、よく考えればあのギャルゲーの舞台となる学園に進学しなければいいのだ。なんて頭が良い! と思ったが無理だった。
記憶を辿ればもう進路調査も終わり、願書も出した後だった。あとは二か月後の試験を受けるだけだ。
(まあ、そこで名前でも書き忘れればいいんだ)
胸を撫で下ろし、俺はメールの返事をするのだった。
この時、この返事が神崎にも見られているとは思いもしなかった。あと試験日にあんな事件に巻き込まれることも。
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