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荒廃浸食都市からの帰還

出動開始

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 エマージェンシー! エマージェンシー!
 緊急事態発生!
 直チニ出動セヨ!

 赤い光の点滅とサイレン。
 イヤホンから聞こえる出動要請を伝える機械音。

「了解」

 ピラミッド型のシャトルが飛び立ち、現場へと直行する。
 殺風景な地表へと降り立ち、直ちに調査開始。

ーーータモツ、気ヲツケロ

 人工知能Dr.ドクターの音声が耳元に響く。
 透過式メガネ型デバイスのスクリーンに表示されたレベルMAX。
 帯グラフが最上位を示す。
 白い地は固く、地表は干上がり、表面の土が剥がれたように浮き上がっていた。

ーーー地中内二 ”キューティバクテリウム” ヲ検知

 スクリーンにはフレームがピントを合わせながら分析している。
 歩けば歩くほど荒廃した光景が目に入る。

「最悪だな」

 悪態をついたその時、足元が揺れた。

「うわぁ」

 いきなり、地面から盛り上がるように隆起物が現れる。

ーーーホワイト、発生! ホワイト、発生!

 スクリーンには隆起物先端に膜で覆われた白い物質が映し出されていた。

「くそっ!」

 突然の出来事に焦り、その場から離れようと反射的に駆け出していた。
 どれくらい走っただろうか?
 気が付けばシャトルから随分と離れてしまったようだ。
 呼吸を整えつつ、後ずさっていると背後に何かが触れる気配がした。

ーーーレッド、発見! レッド、発見! 直チニ退避セヨ!

 耳元で激しくアラームが鳴り響く。
 振り返れば大きく膨らんだ赤い隆起物があった。

ーーー危険、爆発の危険アリ、タモツ、直グニ退避セヨ!

 不意に足元が激しく揺れだす。
 地響きが起こり、どうにか立っているが時間の問題といえる。
 だが、この状況だ。できるだけから離れなければ!
 その時、地表がうねりを上げ、振動がもっと大きくなる。
 警告むなしく、それははじけ飛んでしまった。

「うわああああああ」

 衝撃で宙を舞う。固い大地に叩きつけられ、意識が飛んだ。
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