冤罪夫人は二度目で真実を知る

おりのめぐむ

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改稿前によりぐちゃぐちゃですいません。

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「まずはローザ様に関わる用度について今後は申請不要で認められる権限になりましたことをご報告申し上げます」

「え、ヒュード。それってお義姉さまがもう申請しなくても新調できるようになったってことなの?」

「はい。これからは望まれる時に入手が可能となりました」

 突然の宣言に意表を突かれ、信じられない気持ちが沸き上がる。

「ヒュード、それは本当なの?」

「はい。こちらがその証明の証でございます」

 ヒュードが手にしているのは権限の一部を譲渡した書類。
 今まではお父さまを通してでないと許可をもらえなかった権利の証だった。
 あれだけ申請し続けても変わらず、あの妨害でほとんど諦めるしかなかった。
 間を通さず、私だけの権限でドレスが新調できる?

「本当に、そんなことが……」

「まあ、じゃあこれからはあたしもお義母さまからのドレスを押し付けられずにお義姉さまと一緒に仕立てられるってことね!」

 アラベルが嬉しそうに私の手を握る。

「だったらお義姉さま、すぐにでもお揃いのドレスを新調しましょう♡」

 乗り気のアラベルを他所に不安が過ぎる。
 そういえばハンスが暇を出されたと聞いた。グランシア伯爵家の執事に抜擢されたヒュード。
 避けられていたからこそ、利用され、何か良くないことに巻き込まれているのでは?

「ねえ、ヒュード。もしかして何か負担をかけてないかしら? 今回の件がその要因だとしたら……」

「いえ、ローザ様。地道に交渉した結果ですので気になさることは何もございません」

「そうよ、お義姉さま。ただヒュードがお義父さまに実力を認められただけなの。もっと素直に喜んでお礼を言えばいいだけよ」

「けれども……」

 あの妨害があってからもヒュードは一任するよう私から許可を得た。
 本当にその努力が実ったのだとしたら心配はないのかもしれない。
 アラベルの言う通り、単純に喜べばいいのかもしれないけれど吹っ切れない何かがある。

「ご負担といえば確かにしばらくは旦那様のお手伝いも兼ねることになりましたのでローザ様方への配慮が至らなくなりうると考えられ、大変申し訳ございません。できる限り変わらないよう助力いたしますのでご納得いただければと思います」

 私の憂慮を察したのか、ヒュードは胸に手を当てて軽くお辞儀した。

「そんな、私のことは構わないわ。ヒュードの負担が増えなければいいの。お父さまの方を優先してちょうだい」

「ヒュード、あたしもお義姉さまと同じ思いよ。それにその分代わりにあたしがお相手できる時間が増えるわ、ね、いい考えでしょ、お義姉さま♡」

「ローザ様、アラベル様、ありがとうございます。これからも精進いたしますのでよろしくお願いいたします」

 ヒュードは顔を合わせてはっきりそう言うと部屋を後にした。

「ねえ、お義姉さま。ヒュードよりも頼りにならないけどあたしも協力するわ。ドレスも新調できるし、式の準備もあるし、これからは忙しくなりそうだわ。一緒にがんばりましょう♡」

 声を弾ませてアラベルはどのようなデザインのドレスにするか話し始めていた。


 
「まあ、お義兄さま。ようやくお花を贈られるのですね」

 アラベルと共に改装中の離れを確認しているとノック音が響く。

「申し訳ない。実は義姉に指摘されて気づいたということだ。ローザ嬢、許していただきたい」

 レイクラック侯爵子息さまが赤いバラの花束を私に差し出す。両腕で抱えれば重さに圧倒される。
 鮮やかな赤色に甘いような華やかな香り。花束そのものを受け取ったのが初めてだった。
 抱きかかえた存在でじんわりと心が温かくなっていく。

「いいえ、ありがとうございます」

 式の準備に際し、月に数回は侯爵子息さまが訪問している。
 王都とグランシア領地の行き来で休みなどないはずなのにそのそぶりを見せない。
 顔合わせから既に2か月が経過していた。

「お義姉さま、重いでしょう? あたしが飾ってあげるわ」

 アラベルは花束を抱えると部屋から出ていく。二人だけとなった。

「アラベル嬢が呆れるのも無理はない。私はどうもこういうことには疎くて。ローザ嬢も不満を募らせていただろうと。何度か訪問していたのにも関わらず、遅くなり申し訳なかった」

「侯爵子息さま、私はこうして忙しい最中を縫って訪問いただけるだけでも申し訳なく思っております。不満など何もありません」

「いや、本来なら手順というものがあるということだ。先日、侯爵家に立ち寄った際に義姉からいろいろ聞かれて怒られてしまった。通常は贈り物や外出など親交を深めるべき行動を婚姻前には行っておいた方がいいと助言があり、相手に対して失礼なことをしているとも。気づかずにいて今更だが挽回したいと思っている」

 少し照れた様子の侯爵子息さまは本当に誠実な方だ。助言を素直に受け取って果たそうとするのだから。

「私は侯爵子息さまのそう思われている気持ちだけでもとても嬉しいです。本当に不満などありません。ありがとうございます」

「……ローザ嬢は謙虚すぎる。私に対して何かあれば伝えてほしいと思っている」

「侯爵子息さま。私こそ至らないのではと常に思ってます。ですので何かあればお伝えください」

「……その、不満という訳ではないが、気になることがあって、その、そろそろ名前で呼んでいただけないだろうか?」

「……お名前、ですか……」

「ああ、ローザ」

「……ウォルター様」

 何だかくすぐったいような空気が流れ始めた気がしてならなかった。
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