冤罪夫人は二度目で真実を知る

おりのめぐむ

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「相変わらずわたくしたちを小バカにしてお出ましのようね。ローザ」

 ツンとすました顔でこちらをチラリと見た後、声をかけてきたのは義母。
 赤茶色の髪をアップし、深いエメラルドのような瞳を扇の隙間から射るように覗かせる。
 妖艶な顔立ちに合わせるように凹凸を誇張する派手なドレスに身を包み、長椅子のソファーに腰かけていた。
 その横には幼さと可憐さを持ち合わせた顔立ちの義妹の姿。流行りのドレスを纏い、一瞬驚いたように見開いた深い青緑色の瞳はすぐに様子を伺うような視線を投げかけた。
 中央のソファーには眉間にしわを寄せるいつも気難しい顔をした父。
 三人からの視線を一身に浴びている空気。知らぬ間に指先が冷たくなる。
 見慣れた光景がそこにあった。

「……遅れて申し訳ありません」

 咄嗟に口から飛び出した言葉が条件反射のように出ている。
 カーラが急がせたのにも拘らず、既に皆は揃っていた。
 指定された時間を適当に伝えられ、故意に失敗させられるのはよくあったと
 
「ルシードより尊大と思っているものね。あの侍女長と同じく」

 聞きなれた言葉。義母の発言はいつも嫌悪していると主張していた。
 初対面の時から顔を合わせようともせず、すぐに私を離れに追いやると自分の娘であるアラベルを優遇していた。
 その証として顔合わせの機会があれば見せつけるようにアラベルに真新しいドレスや宝飾品を宛がった。
 そして両親の間にアラベルが立ち並ぶ姿。それが当然のように繰り広げられる。
 私が受け入れてもらえなかった位置を何度も見せつけられていた。
 伯爵家の担い手は自分たちなのだと。
 父は義母が強請れば何事もないように受け入れた。特に義母が着飾ることには迷いがない。
 母には果たさなかったことに対して義母には尽くすばかりの状況。
 後継者としての私は役立たずで支えることすら出来ず、足手まとい。
 何も言えず、ただ見ていることしかできない。
 いくらカーラが主張しても血統だけではどうにもならなかった。

 このどうしようもない関係を改善したかった。私は明らかにグランシア家で爪弾きにされていた。
 もともと父から冷遇されていたせいもあるが再婚してからもっと酷くなったのも判らなかった。
 私が後継としての頼りなさを払拭して伯爵家に尽す成果を上げなければと思っていた。
 歩み寄ることにより、努力を怠って血統を主張しているという勘違いを解きたかった。
 ただ円満に伯爵家を一緒に支えていきたいと切望しただけ、と。
 そんな私の思いが通じない理由など考えもしなかった。

 義母であるマチルダ・グランシア伯爵夫人は元々は酒場で有名な給仕だったらしい。
 妖艶な美しさと魅惑的な体つきで一番の売り上げを誇り、評判高い魔性の美女。
 その美貌ゆえ、様々な男性を虜にし、子爵家の次男だった父もその一人だった。
 恋仲となった二人の間に突然、母からの縁談が持ち掛けられ、引き裂かれたらしい。
 義母はその後、老齢のシーカー男爵に見初められ後妻となり、義妹であるアラベルが産まれた。
 時を経て偶然パーティーで再会を果たし、互いが独り身となった後、再婚に至った。
 この事情は母を侮辱していたと憤慨したカーラから秘密裏に聞かされて知る。
 そんな関係性があったからか、母の血をひいた私を最初から嫌っていたと理解できた。
 けれどこのことが判ったのは、確か……。

 そう思考を巡らせた途端、こめかみ辺りに激痛が走った。
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