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第14話 神薙塔矢②-3
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「ほら、悠太君。自己紹介自己紹介」
「あ、そうですよね。すいません。二年三組遠藤悠太です。これからお世話になります」
お世話になるのはこっちの方だ。ふむ。臆病でなよなよした奴かと思ったが、礼節はわきまえているようだし、発言すべきタイミングでは先程みたいなおどおどした様子もなくしっかりと発音している。無駄に騒ぐようなタイプでもなさそうだし、断然橘よりも好感が持てるな。慣れない先輩たちの前で緊張しているというのもあるだろうが。
日渡や遠藤が橘によって半ば無理矢理俺の手伝いをさせられるていうのは分かったが、なおさら何故橘が手伝いを申し込んできたのかが分からない。何か理由があるのかもしれないし、ただの気まぐれなのかもしれない。橘なら全然後者の方がありそうな気もする。
ともあれ、橘のことは橘にしか分からないわけで、俺も別段そこを詮索しようとは思ってはいない。せっかく手伝ってくれると言っているのに、詮索したことで橘の気が変わってやっぱり止めるなんて言い出したら、俺の課題はどうなるというのだ。期限もあとわずかで、具体的な行動予定もたてられていないんだぞ。いやでも、止めてくれた方が日渡と関わる必要もなくなるわけだし、
そっちの方が精神的にいいのかもしれないな。うーん……。
「よーし、それじゃ悠太君のことも紹介できたことだし、案を詰めていこうか!」
「日渡はいないようだが、いいのか?」
……一応。一応、準備の一員に入っているわけなのだから、いない状況で話を進めていいものなのかを確認をしておく。日渡がどうだとかそんなことではなく、単純にメンバー内でハブにするのはよくないよね、という話だ。
「瑠璃は何か用事があるんだってさ。やること指示してくれたらやるから、自分抜きで色々決めていいよって言ってた」
そりゃあ気まずいよな……。本当に用事があって来ていない可能性も十分にあるだろうが、でもまあ、普通に考えて俺と一緒にいるのが苦痛なのだろう。俺だって、そうだし。日渡が側にいるだけでずっとそわそわしてしまう。心が全く落ち着かない。別に橘でもうるさくて落ち着かないのだが。
「……じゃあ、日渡抜きで進めるか」
胸中にもやもやとした何かが浮かんでいるのが分かったが、それが何なのかまでは分からなかった。まさか、日渡がいないことを残念がっているわけでもないだろうし。…………。
ああ、もう。いない奴のことをあれこれ考えても意味がないだろ。むしろ、いた方が体調に悪影響なのだから、いない方が良いに決まっている。日渡がこの場にいないことを、喜ぶべきだ。
――と。内側のもやもやを払いのけるためにか、様々な思案を繰り広げていると、廊下側から屋上へと続く扉が開いた。位置的には、橘たちの背後になる。
扉を押してその奥から現れたのは、背が高く艶やかな黒髪をした、目つきの鋭い女子だった。走って来たのだろうか、息が切れて額から汗が流れている。
「はあはあ、ごめん。やっぱり、私も混ぜて」
橘は当然のように「もちろん」と言って日渡を俺たちの輪の中に招き入れた。その口振りは、用事があったはずの友人に向けたにしては、戸惑いもなく、もとよりここに来るのを知っていたかのようだった。
「あ、そうですよね。すいません。二年三組遠藤悠太です。これからお世話になります」
お世話になるのはこっちの方だ。ふむ。臆病でなよなよした奴かと思ったが、礼節はわきまえているようだし、発言すべきタイミングでは先程みたいなおどおどした様子もなくしっかりと発音している。無駄に騒ぐようなタイプでもなさそうだし、断然橘よりも好感が持てるな。慣れない先輩たちの前で緊張しているというのもあるだろうが。
日渡や遠藤が橘によって半ば無理矢理俺の手伝いをさせられるていうのは分かったが、なおさら何故橘が手伝いを申し込んできたのかが分からない。何か理由があるのかもしれないし、ただの気まぐれなのかもしれない。橘なら全然後者の方がありそうな気もする。
ともあれ、橘のことは橘にしか分からないわけで、俺も別段そこを詮索しようとは思ってはいない。せっかく手伝ってくれると言っているのに、詮索したことで橘の気が変わってやっぱり止めるなんて言い出したら、俺の課題はどうなるというのだ。期限もあとわずかで、具体的な行動予定もたてられていないんだぞ。いやでも、止めてくれた方が日渡と関わる必要もなくなるわけだし、
そっちの方が精神的にいいのかもしれないな。うーん……。
「よーし、それじゃ悠太君のことも紹介できたことだし、案を詰めていこうか!」
「日渡はいないようだが、いいのか?」
……一応。一応、準備の一員に入っているわけなのだから、いない状況で話を進めていいものなのかを確認をしておく。日渡がどうだとかそんなことではなく、単純にメンバー内でハブにするのはよくないよね、という話だ。
「瑠璃は何か用事があるんだってさ。やること指示してくれたらやるから、自分抜きで色々決めていいよって言ってた」
そりゃあ気まずいよな……。本当に用事があって来ていない可能性も十分にあるだろうが、でもまあ、普通に考えて俺と一緒にいるのが苦痛なのだろう。俺だって、そうだし。日渡が側にいるだけでずっとそわそわしてしまう。心が全く落ち着かない。別に橘でもうるさくて落ち着かないのだが。
「……じゃあ、日渡抜きで進めるか」
胸中にもやもやとした何かが浮かんでいるのが分かったが、それが何なのかまでは分からなかった。まさか、日渡がいないことを残念がっているわけでもないだろうし。…………。
ああ、もう。いない奴のことをあれこれ考えても意味がないだろ。むしろ、いた方が体調に悪影響なのだから、いない方が良いに決まっている。日渡がこの場にいないことを、喜ぶべきだ。
――と。内側のもやもやを払いのけるためにか、様々な思案を繰り広げていると、廊下側から屋上へと続く扉が開いた。位置的には、橘たちの背後になる。
扉を押してその奥から現れたのは、背が高く艶やかな黒髪をした、目つきの鋭い女子だった。走って来たのだろうか、息が切れて額から汗が流れている。
「はあはあ、ごめん。やっぱり、私も混ぜて」
橘は当然のように「もちろん」と言って日渡を俺たちの輪の中に招き入れた。その口振りは、用事があったはずの友人に向けたにしては、戸惑いもなく、もとよりここに来るのを知っていたかのようだった。
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