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Chapter2 暴食の腹
第23話 望印蜀駄紋
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望印蜀駄紋。
彼は、食べることに快感を感じている。
ストレス解消のために過度な食事をする人は世の中にたくさんいるけれど、駄紋の場合は、そのレベルでの話ではない。彼は一種のエクスタシーにも似た快感を得ているのだ。
卑猥なことを承知の上で述べるとすれば、性的快感をも超える絶頂。
何故彼がそうなったのか。
それは、彼のこれまでの生い立ちが起因している。
幼少期時代の駄紋は、周りの同年代の子供たちと比べてたくさん食べる子供だった。出てきた食事をはいつも完食、おかわりなんて当たり前。そんな駄紋を見て両親も元気な子供だと、とても喜んでいた。
駄紋も愛する両親が喜ぶならばと、更に食べる。もっとたくさん食べようと、日に日に彼の食は太くなっていった。
小学校に入学した駄紋。
給食の時間になると、駄紋は当たり前のように何度もおかわりをした。クラスメイトたちは異様なまでに食べる駄紋の姿を見るのが楽しくて、毎日給食の時間には駄紋の大食いが披露されることとなった。
まるで見世物のような扱いを受けていた駄紋だったが、皆の喜ぶ顔と喝采に気分が高まり、また一層食べるようになっていった。
両親は元気よく食べる駄紋の姿を見て破願する。
中学校に入学した駄紋。
ここでも給食の時間は駄紋のオンステージだった。
他校からも駄紋の食べっぷりを見に来る生徒がいて、その光景はまるでアイドルのようだった。食べる量が多いというだけで、駄紋も歴とした人なものだから、もてはやされて気分が良くならないわけがなく、調子に乗って彼はもっと食べるようになった。
両親は、この頃からか我が子に対して疑問を感じ始めた。
食べて食べて食べて食べて。
そして駄紋は気付いた。
いつのまにか自分は、食べることに気持ちよさを感じていたことに。初めて精通したかのような快感。
以前ならばギャラリーがいたからこそ食べることが気持ちよかったわけで、つまり、心理学で言うところの報酬があったからこその快感であって、一人で食べていて感じるものなど何も無かった。
しかし高校へ進学した駄紋は、腹も減っていないのに、無我夢中で食べ続けている。食べることに気持ちよくなっている。
食べて食べて食べて食べて。
駄紋の止まらぬ食。
我が子を心配した両親は、駄紋を病院に連れて行こうとしたが、駄紋は「大丈夫、元気だよ!」と言って食べることを止めなかった。
力づくで連れて行こうした時、駄紋はかじった。
食物を食べるときと同じように、自分の身体を掴む父親の指をかじり取った。
たくさん食べる元気な子。それは両親にとって自慢の我が子の姿なのである。だから。悲しそうな顔を見せる両親の前ではもっと食べないと――いけなかった。
快感を求め狂い喰らい続ける食。
それはやがて一種の暴力性を帯びていき、暴れ狂う食となっていく。腹の中で暴れ、果てには己をも飲み込む暴食となっていく。
彼は、食べることに快感を感じている。
ストレス解消のために過度な食事をする人は世の中にたくさんいるけれど、駄紋の場合は、そのレベルでの話ではない。彼は一種のエクスタシーにも似た快感を得ているのだ。
卑猥なことを承知の上で述べるとすれば、性的快感をも超える絶頂。
何故彼がそうなったのか。
それは、彼のこれまでの生い立ちが起因している。
幼少期時代の駄紋は、周りの同年代の子供たちと比べてたくさん食べる子供だった。出てきた食事をはいつも完食、おかわりなんて当たり前。そんな駄紋を見て両親も元気な子供だと、とても喜んでいた。
駄紋も愛する両親が喜ぶならばと、更に食べる。もっとたくさん食べようと、日に日に彼の食は太くなっていった。
小学校に入学した駄紋。
給食の時間になると、駄紋は当たり前のように何度もおかわりをした。クラスメイトたちは異様なまでに食べる駄紋の姿を見るのが楽しくて、毎日給食の時間には駄紋の大食いが披露されることとなった。
まるで見世物のような扱いを受けていた駄紋だったが、皆の喜ぶ顔と喝采に気分が高まり、また一層食べるようになっていった。
両親は元気よく食べる駄紋の姿を見て破願する。
中学校に入学した駄紋。
ここでも給食の時間は駄紋のオンステージだった。
他校からも駄紋の食べっぷりを見に来る生徒がいて、その光景はまるでアイドルのようだった。食べる量が多いというだけで、駄紋も歴とした人なものだから、もてはやされて気分が良くならないわけがなく、調子に乗って彼はもっと食べるようになった。
両親は、この頃からか我が子に対して疑問を感じ始めた。
食べて食べて食べて食べて。
そして駄紋は気付いた。
いつのまにか自分は、食べることに気持ちよさを感じていたことに。初めて精通したかのような快感。
以前ならばギャラリーがいたからこそ食べることが気持ちよかったわけで、つまり、心理学で言うところの報酬があったからこその快感であって、一人で食べていて感じるものなど何も無かった。
しかし高校へ進学した駄紋は、腹も減っていないのに、無我夢中で食べ続けている。食べることに気持ちよくなっている。
食べて食べて食べて食べて。
駄紋の止まらぬ食。
我が子を心配した両親は、駄紋を病院に連れて行こうとしたが、駄紋は「大丈夫、元気だよ!」と言って食べることを止めなかった。
力づくで連れて行こうした時、駄紋はかじった。
食物を食べるときと同じように、自分の身体を掴む父親の指をかじり取った。
たくさん食べる元気な子。それは両親にとって自慢の我が子の姿なのである。だから。悲しそうな顔を見せる両親の前ではもっと食べないと――いけなかった。
快感を求め狂い喰らい続ける食。
それはやがて一種の暴力性を帯びていき、暴れ狂う食となっていく。腹の中で暴れ、果てには己をも飲み込む暴食となっていく。
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