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Chapter3 嫉妬の目
第35話 妬美草他
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妬美草他。
彼は――凡人である。
何をやらせても普通、それ以上でもなく、それ以下でもない。ただただ普通。それが妬美草他という男なのである。
しかしなにも、凡人であることが悪いということはない。
もとより、そこには善悪など存在していないのだ。
優秀であろうがそうでなかろうが、ただそれだけのことであって、どこに重きを置くかによっても違いが出てくるのだから、優劣などあって無いようなものなのである。
無いものに善悪などあろうはずもない。
だがしかし、それでも妬美は悪いと言わざるを得なかった。凡人である妬美は悪い、とそう言い切るしかなかった。
結果に善悪はなくとも、その結果の要因に善悪がある。
凡人であること。それ自体は悪くないが、己が凡人であると決めつけている妬美自身は悪いのだ。
妬美は幼少期から凡人だった。
そう自分で決めつけていた。
己自身を凡人であると、そう決めつけて己の持つ無限の可能性を押し潰していた。
何事もある程度。それ以上は望まない。望めない。だって、凡人なのだから。
ずっと、妬美はそう考えながら生きてきた。
見方を変えれば、何ごともある程度こなせるというのはある意味才能に溢れているようにも感じるのだけれど、既に決めつけている妬美には、そこに気付くことができなかった。
己を凡人であると決めてつけている者。その悪性。それは、凡人でない者を妬むところにある。
自分自身を凡人だと決めつけた者は、決めつけていない者に対して強くその感情を抱くのだ。
決めつけさえしなければ、その者と同じように才能に満ち溢れた存在でいられるというのに。
優れた者が妬ましい。周りから好かれる者が妬ましい。凡人でない者が妬ましい。
その者たちを見る目はやがて熱を帯び、視界に捉えたものを焼き尽くし溶かしていく。
消えることのない、嫉妬の視線。
妬美のそんな視線はいつからか、灰ヶ原黒時という男に対して向けられるようになっていた。
彼は――凡人である。
何をやらせても普通、それ以上でもなく、それ以下でもない。ただただ普通。それが妬美草他という男なのである。
しかしなにも、凡人であることが悪いということはない。
もとより、そこには善悪など存在していないのだ。
優秀であろうがそうでなかろうが、ただそれだけのことであって、どこに重きを置くかによっても違いが出てくるのだから、優劣などあって無いようなものなのである。
無いものに善悪などあろうはずもない。
だがしかし、それでも妬美は悪いと言わざるを得なかった。凡人である妬美は悪い、とそう言い切るしかなかった。
結果に善悪はなくとも、その結果の要因に善悪がある。
凡人であること。それ自体は悪くないが、己が凡人であると決めつけている妬美自身は悪いのだ。
妬美は幼少期から凡人だった。
そう自分で決めつけていた。
己自身を凡人であると、そう決めつけて己の持つ無限の可能性を押し潰していた。
何事もある程度。それ以上は望まない。望めない。だって、凡人なのだから。
ずっと、妬美はそう考えながら生きてきた。
見方を変えれば、何ごともある程度こなせるというのはある意味才能に溢れているようにも感じるのだけれど、既に決めつけている妬美には、そこに気付くことができなかった。
己を凡人であると決めてつけている者。その悪性。それは、凡人でない者を妬むところにある。
自分自身を凡人だと決めつけた者は、決めつけていない者に対して強くその感情を抱くのだ。
決めつけさえしなければ、その者と同じように才能に満ち溢れた存在でいられるというのに。
優れた者が妬ましい。周りから好かれる者が妬ましい。凡人でない者が妬ましい。
その者たちを見る目はやがて熱を帯び、視界に捉えたものを焼き尽くし溶かしていく。
消えることのない、嫉妬の視線。
妬美のそんな視線はいつからか、灰ヶ原黒時という男に対して向けられるようになっていた。
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